アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

日本の製造業が再び世界の先頭に立つ。吉村氏が説く「日本流イノベーション」

株式会社ワークハピネス代表取締役、吉村慎吾氏が書いた「日本流イノベーション〜日本企業の特性を活かす成功方程式」を読んだ。

日本流イノベーション

吉村氏は、公認会計士として活躍したのち、JASDAQの上場審査官を経て起業、現在はイノベーション創出コンサルティングファーム、ワークハピネスを経営する異色のキャリアの持ち主。

本書は「イノベーターズ」に次ぐ、吉村氏の2冊目の著書になる。
(イノベーターズについて書いた以前の投稿)

本書のテーマはタイトルにもある通り、日本が再び世界をリードする役割を担うために必要なイノベーションについて書かれている。

ご承知の通り、日本の製造業は「失われた20年」とも称されるように、21世紀に入りアメリカを中心としたITを活用した企業の隆盛により大きく遅れをとった。その大きな理由のひとつが、ものづくりにこだわるあまり、過剰な品質や機能の追求に走り、顧客が求める製品を提供できなかったことにある。

しかしその20年に及ぶ停滞した状態を脱し、再び今上昇に転じる大きなチャンスを迎えているというのが吉村氏の主張。

そのチャンスを現実なものにするのが、AI、IoT、ロボット、3Dプリンターといった急速に進化しつつあるIT技術。そしてその技術が製造業のリアルな現場を劇的に変えるということだ。

特に大きく期待されているのが、

・AIとロボットによるさまざまなサービスの無人化
・IoTによるあらゆるオペーレーションの最適化

以上のふたつだ。
課題先進国と言われる日本の、特に「人手不足」「生産性向上」という重要課題を解決するためのソリューションがビジネスの命運を分ける。

そのソリューションに対して、本書での吉村氏の提言のひとつを紹介する。


「製造業は工場の「完全無人化」と「クラウド化」へのロードマップを描け

第四次産業革命の中、日本の製造業がやらなければならないのはAI、IoT、ロボット、3Dプリンターといった汎用技術を駆使した「生産性イノベーション」だ。マーケティング、研究開発、購買、生産、販売、アフターサービスといったビジネスのバリューチェーンの全領域にAIやロボットをフル活用して労働生産性に革命をもたらすことだ。これは日本の製造業がサバイバルするための規定演技だといえる。効率の良い会社が生き残り、不効率な会社は消滅する。企業の効率を高められるチャンスが全企業に平等に到来しているのだ。先んじてAIやロボットを活用する企業がこのチャンスをものにして飛躍するだろう。

以上。


生産人口が減少に転じた今、製造現場での人手不足はこの先も好転することはないだろう。となればロボットの導入はもはや必然。
それによりロボットが人の仕事を奪うことは間違いないが、前向きに考えれば、人への負荷が大きい単純労働、肉体労働をロボットが代替してくれるともいえる。人はより創造性の高い仕事に打ち込むことができるのだ。人とロボットの協働、それこそがこれからの時代のキーワードになる。

その際に重要になるのが経営者の価値観であるが、“人の幸せのためにこそ、AIやロボットを活用する”そういったビジネスの価値観がより問われるようになるのではないだろうか。言葉は適切ではないかもしれないが、人件費を削減するためにロボットを導入すればもっと利益が上がる。そんな儲け至上主義の経営者は早晩市場からの退場を命じられることは間違いない。

上記を含め、本書は「どのようにすれば日本の市場でイノベーションが生み出せるか」、考え方から具体的な方法論まで、吉村氏の知見がフルに発揮された見事な提言書となっている。

いずれにせよ出発点となるのは、企業の使命。具体的に言えば、「どのようにして世の中のためになることができるか」、そしてそれを実現する「組織体としてのミッション」である。

つまり、AIやロボット、IoTはあくまで手段であって、「何のために」という目的が明確であることがそれ以上に重要であるという認識。そこを間違えると宝の持ち腐れにもなりかねない。

時代は大きな転換点にある。経営者に限らず、一個人としても、まずはその認識を自分ごとにすることからはじめなければならない。そういった意味での価値観の入れ替えができるかに成否がかかっている。そのために非常に役に立つ1冊だと思う。

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「誰かの犠牲で成り立つ経済を、終わらせよう」持続可能な資本主義。

鎌倉投信の取締役、新井和宏氏が書いた「持続可能な資本主義」を読んだ。

持続可能な資本主義

本の帯、しおりに記された言葉、「誰かの犠牲で成り立つ経済を、終わらせよう」。

確かにそうだ。心からそう思う。
けれど、世の中はなかなか変わっていかない。
それどころか、悪くなっているのではないか。
そう思わざるを得ないニュースが連日、目から耳から飛び込んでくる。

その原因の根源のひとつが、資本主義の限界。
誰かが勝てば誰かが負ける。資本主義の本質でもある。

しかしながら、そんな中にも、新しい芽が少しずつだけれど芽生え始めているのも確かだ。

たとえば、本書「持続可能な資本主義」に登場するいくつかの企業もそうである。
もっと言えば、鎌倉投信の存在そのものが何よりの証なのかもしれない。

著者である新井氏は、外資系の投資運用会社で莫大なお金を扱っていたもののストレスから大病を患い退職。
たまたま出会った1冊の本「日本でいちばん大切にしたい会社」の考え方に賛同し、「いい会社」の持つ信頼性をベースにした、これまでにない投資信託会社を立ち上げる。それが鎌倉投信である。

何より驚かされること。
フローよりストックを大切にする。
短期利益より長期の持続可能性を重視する。
何より社員の、関わる人の幸せをいちばんに考える。
そんな視点を持った企業にのみ投資をしてきた結果、
立ち上げから今日まで驚くほどの投資利益を上げしまったのだ。
その事実こそが、世の中からそれらの企業が大きな共感と高い評価を受けていることを物語る。

鎌倉投信の投資先選定基準は独特だ。
財務諸表や損益計算書は見ないわけではないが、それよりも重視するのは、実際に企業に訪問し、経営者に会い、話を聞いた直感。時にはその話が確かかどうか、アポなしで会社を見に行くこともあるそうだ。
そうしてこれは間違いないという会社をピックアップする。
そして新井氏はこう断言する。「いい会社は数値化できない」と。

厳しい眼で選ばれた企業の名前を並べてみる。
カゴメ、ヤマトグループ、サイボウズ、ツムラ、マザーハウス、ユーグレナ…

それぞれが「いい会社」である理由は本書をぜひ読んでもらいたいが、私がそれらの会社に共通して思うことは、いい会社には間違いなく「いい経営者」の「いい価値観」が存在することである。
そういう意味で、これからの時代は、儲けることに長けた経営者より、社会に対する優しい眼差しを持った経営者が求められるのではないだろうか。

持続可能性=サステナビリティ。ともするとバズワードとなりがちなワードではあるが、今一度、経営の中に、事業の中に据えることで、新たな成長のきっかけを創れるのかもしれない。

誰かの犠牲で成り立つ経済を、終わらせよう。そう考える経営者がひとりでも増え、そう考える会社が一社でも増えれば、今よりきっと幸せな世の中になるはずだ。そんな思いが確信に変わる、そんな1冊に出会った。


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人と人、心と心をつなぐビール。ベアレン醸造所。

ベアレン醸造所株式会社専務、嶌田洋一氏が書いた「つなぐビール〜地方の小さな会社が創るもの」を読んだ。

つなぐビール

ベアレン醸造所は盛岡にある、クラフトビール製造会社。2001年創業だ。

嶌田氏と共同経営者の木村氏の出会いは10年前にさかのぼる。
当時二人はそれぞれ、盛岡地区の協和発酵とキリンビールの営業担当。ライバル会社であったものの妙に気が合い、二人の環境が変わった後も情報交換を続けていたという。

そんなある日。木村から「一緒にビール会社を作らないか」と誘われる。安定した環境を捨てることに不安はあったものの木村の熱い想いに打たれ、新たな船を漕ぎだすことになった。

当時はちょうど地ビールブームが終わった後で、ブームに乗って雨後の筍のように誕生した各地の地ビール会社が、経営不振で続々と倒産、閉鎖されていた頃。地ビールでの起業のタイミングとしては最悪の状況だっただろう。しかし逆に言えば、厳しい環境だったからこそ、地に足のついた経営につながったのかもしれない。

とはいえ、今日までの道のりは平坦どころか、さしずめジェットコースターといった様相。

中でも最大の難関は、醸造所のタンクが爆発して醸造担当だった社員が命を落とした時だ。

不慮の事故だったとはいえ、当然経営陣には管理不行き届きとしてマスコミから非難が集中する。
それより何より、甚大だったのは、家族ともいえる社員を死なせてしまったという精神的苦痛だ。
当時を回想するシーンは、読んでいても心が痛くなるほどだった。

しかしそのどん底ともいえる状況をなんとか乗り越えたこと、
その教訓を忘れずその後さまざまな社内改革に取り組んだことで、
あらためてベアレン醸造所の快進撃がはじまる。

事故を契機に、何を最初に取り組んだか。
それは、職場の安全等を盛り込んだ「経営理念」の策定だった。
その経営理念を核としたことで、やるべきことが明確になり、ブランドが形作られていく。
そのあたりのくだりは、中小企業の経営者にとって参考にできるところが多い。

私は、21世紀に入って成長を遂げた企業に共通する成功法則があると考えている。
それはマスを相手にビジネスをするのではなく、コアなコミュニティを組織化することに長けている点だ。
アウトドア用品のスノーピークしかり、先日紹介した気仙沼ニッティングしかり。

ベアレン醸造所で、それに相当するのが〈よ市〉ジョッキクラブだった。

盛岡の材木町で、冬を除いた毎週土曜日に開催されるイベントでベアレン醸造所はビールを提供する。
その時に使用するジョッキを買ってもらい預かり制にしたことで、熱心なファンを一気に増やすことになった。
と同時にファン同士のコミュニケーションも活発になり、この日を楽しみにする人たちが、ベアレン醸造所の重要な営業マンの役割を果たしてくれるようになったのだ。

こういうことは意図してできることではない。
お客様とのコミュニケーションを大切にしたい、その強い想いが自然にその方向へ導いていったと言えるのではないか。

最後に。つなぐビールという本書のタイトルであるが、
人と人、100年前の伝統、地元への愛、亡くなった社員の思い、ビールがいろいろなものをつないでいる。
そんな思いが込められているのだそうだ。

つなぐ。まさに時代のキーワードである。

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気仙沼ニッティング物語。応援したくなる会社の作り方。

御手洗珠子さんが書いた「気仙沼ニッティング物語〜いいものを編む会社」を読んだ。

気仙沼ニッティング物語

震災地、気仙沼発のニットブランド「気仙沼ニッティング」。
メイン商品の手編みのアランカーディガンがなんと1着15万円!それでいて、注文待ちの人が現在200人以上いるという。

ちょうど昨夜、カンブリア宮殿で取り上げられ、ご覧になられた人も多いのではないか。今日あたりはサイトへの来訪者が一気に増えていることだと想像する。

その気仙沼ニッティングの社長が本書の著者、御手洗さんである。動いている御手洗さんをテレビではじめて観たが、その印象を一言で言うと「聡明な人」。

それもそのはず、最終学歴は東京大学。新卒でコンサルティング会社のマッキンゼーに入った、いわゆる超エリートだ。
しかし、その会社を2年少しで辞め、今度はブータン政府に雇われ初代首相フェローとして勤める。
そして任期切れを間近に控えた頃、東北の大震災が起こった。

被災地のために何かできることをしなければと帰国。
次の道を模索していた時、以前から知り合いだったという糸井重里さんに「編み物の会社を立ち上げたい、ついては社長をやってみないか?」と誘われ、引き受けることになったのだ。

御手洗さんは、まだ31歳。大企業でいえば、やっとビジネスのことがわかってきた程度の若輩であるが、本書を読んでもテレビを観ても、この人にとっては年齢はほとんど関係ない。
逆に言えば、若さが武器となって、回りが巻き込まれていく、そんな根っからの才能を持った女性という印象を抱いた。

もちろん、糸井さんのバックアップもあるし、年長者のサポーター、編み手に恵まれたこともあるだろう。しかし、それを差し引いても、彼女の事業を俯瞰して見る能力、実行力、そしてそのベースにある、ぶれない想いの強さは余人をもって替えがたいのだ。

御手洗さんは気仙沼で起業するメリット・デメリットを本書でこう記している。

メリット
1.周りの人に助けてもらえる
2.多くの人にとって未知な分、興味を持ってもらいやすい
3.賃料が安い
4.地域の街の中で存在感を持ちやすい

デメリット
1.大消費地から遠い
2.人が少ない?(働き手の確保が難しい)

メリットを活かし、デメリットを克服し、企業をどう軌道に乗せて行ったか。
時間的には短いが、かなり濃密な物語がそこにある。

彼女は自身の仕事を「種を蒔き、木を育て、森を作るような仕事」と話す。

立ち上がったばかりの企業としては、もちろん利益を上げて会社を存続させることが最重要課題だろうが、そのあたりは眼中にもないように思える。見据えているのは、もっと先、大きなビジョンが彼女を駆り立てているのだ。それがこの仕事観につながっているのではないだろうか。

極め付けは本書にも登場するこんなエピソード。

事業を急成長させた、とあるIT企業社長からこう言われたという。

「すでにそこそこ名前は知られているから、セーターやカーディガンにこだわらず、いろんなものにブランドをつければオンラインで売れる。それでSEO、 SEMをガンガンにやれば、一気にスケールアップできるよ!」

それに対して彼女はこう考えた。

「確かに1,2年は売上が急増するかもしれない。けれどそれでは100年続く事業には育てられないでしょう。それは、気仙沼ニッティングがこれまでお客さんから得てきた信頼を、短い時間で使い切るような話だからです。信頼は、築くのには時間がかかりますが、なくなる時はあっという間です。」

どうだろう、こう言い切れる経営者がどれほどいるだろう。

こんな彼女だから、気仙沼ニッティングの今日がある。
想いに、年齢も経験も関係ない。その想いへの共感が時代のキーワードとなりつつある今、今後の気仙沼ニッティングがますます楽しみになってきた。

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「ほとんどの会社が17時に帰る、売上10年連続右肩上がりの会社」の作り方

ランクアップ社長、岩崎裕美子さんが書いた「ほとんどの会社が17時に帰る、売上10年連続右肩上がりの会社」を読んだ。

ほとんどの社員が

社員のほとんどが終電帰り、長時間労働こそ、できる社員の証!

そんな広告代理店の取締役だった岩崎さん。自らが残業も臆せず社員の先頭に立って働く、企業戦士の代表のようなモーレツぶりだったと語る。そんな状況なので、社員の3年未満離職率はなんと100%。いやはや凄い会社である。

その彼女が自らの働き方に疑問を感じたのは、35歳を超えた頃。

このまま消耗して働き続けるのか?出産して子育ての喜びも体験したい…
迷った挙句、思い切って退職。新たに自身で立ち上げたのが化粧品会社「ランクアップ」だ。

しかもこの会社、社員が残業をほとんどしないにもかかわらず10年連続で売上が右肩上がりだと言う。

創業10年で95%ほどの会社が消えていくと言われている日本にあって、「なぜそのようなことが達成できたのか?」「広告代理店時代との違いはなんだろう?」それが本書のテーマであり、私自身が手に取った最大の関心事だった。

岩崎さんがその会社を立ち上げて達成したいと考えたのが、残業しなくても成り立つ会社。
そして彼女がたどり着いた答えは、次の3つの強みだった。

・差別化した製品づくり
・わかりやすい広告力
・親切で丁寧なサービス

特に徹底して考えたのが先のふたつ、「選ばれる製品とは?」とその「良さの伝わり方」だ。

そこには広告代理店時代の貴重な経験が活かされている。

当時の代理店は独自媒体がない弱みのため、どうしても価格競争に晒される毎日だった。
せっかく獲得したクライアントも、さらに下をいく価格で他者に取られてしまう。
とにかく量を獲得して薄い利益をカバーするしかない、そのため長時間労働が当たり前になってしまうのだ。

代理店を反面教師として立ち上げた会社、スタートは順調だったが、企業として成長し、創業当時のことを知らない社員も増え、経営者とのギャップが次第に拡大していく。順調な成長に反して、社内の雰囲気は最悪だったという。

「何とかしなければ将来がない…」

そんな思いから、社員のやる気を引き出すさまざまな手段を模索したものの、なかなかこれだというものに当たらない。それでもと探し続けた結果、ようやくたどり着いたのが、「会社としての価値観」を決めること。

社員の自主性を高めるためには、人事評価制度をつくることより、まずは自分たちの考え方を社員に伝えるべきだ!あるコンサルタントからの助言で目が覚めた。

そして、自分たちの原点を見つめ直し考え抜いた結果、導き出したのが「挑戦」という価値観。

この価値観を明確にし社員と共有できたことから、ふたたび経営者と社員がひとつになり、やるべきことやらざるべきことの判断基準が明確になり、社員の自主性も格段に高まったという。

それ以降、新たな成長軌道に乗り成長を遂げて行ったわけであるが、すべての原点は、この「挑戦」という価値観の賜物だったと岩崎さんは振り返る。

そんなきれいごとで飯が食えるか!そんな外野の声も聞こえてきそうだが、お金儲けに長けた経営者のその裏側が簡単に見抜かれてしまう時代、社員も顧客も同じ人間であるからこそ、ますますきれいごとが重要になってきている。

もちろんここに書かれている話は多少誇張して書かれていることもあるかと思うが、考えさせられること、明日からのヒントになること、そんな発見がいろいろとあった。「働き方改革」が国の重要戦略となった今、経営者にとって読んでおいて損のない1冊である。

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