アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

「空に牡丹」。打ち上げ花火に魅せられた男の物語。

愛知県出身の女流作家、大島真寿美さんが書いた「空に牡丹」の読後録です。

空に牡丹

実のところ、小説と呼べるものを読んだのは、何年ぶりでしょうか。
唯一の例外が村上春樹さんの長編小説。それを除けば、少なくとも2年くらいは読んでいないかもしれません。

そんな状況で手に取ったのが本書。花火に取り憑かれ全財産を花火に注ぎ込んだ男の物語です。

読むきっかけとなったのは、友人である、日本でも有数の花火師、磯谷さんの会社のホームページを作らせていただいたこと。

「花火師」という職業への理解を深めたく探した結果、行き着いた1冊。
仕事を終えた今、あらためて読み返し、感想をまとめてみました。

物語の舞台は、明治維新直後の、おそらくは山梨あたりの村(本の中では、丹賀字多村)。
主人公は、大きな地主の家に生まれた静助さん。

子供時代に、たまたま所有地に移り住んできた花火職人に感化され、いつしか花火に魅せられ、花火の打ち上げに持てる全ての財産を捧げてしまう。ある意味、穀つぶしの典型のような人物ですが、それがなんとも憎めない存在なのです。

大島さん自身、書くにあたっては、おそらくかなりの量の取材をされたのではないでしょうか(愛知県出身だけにひょっとしてと思い、磯谷さんにも聞いてみましたが、彼への取材はなかったとのこと)。
その描写の繊細さ、磯谷さんから聞いた話も合わさって、物語の世界にどんどん引きこまれていく自分がいました。

今と違い(もっとも、本質においては似たところもたくさんあると思ってますが)、技術も確立されておらず、まだまだ花火の打ち上げが理屈抜きの楽しみであり、ひとことで言えば「道楽」であった時代です。

そんな時代ですので、ただただ村人たちが喜ぶことを糧に、あるだけの田圃を売って注ぎ込んだ結果、残ったのは食い扶持を賄うだけの小さな土地のみ。その背景には、維新後の武家の没落、下克上をめざす新たな商人の誕生など、激動とも言える変化が…。
それでも静助が誰よりも幸せに映るのは、現代に失われてしまった人としての純粋さ、一途さなど、大切なものを持っているからではないでしょうか。

時代は違い、今はビジネスとして確立されている打ち上げ花火ですが、磯谷さんと話をすると、花火にかける想いには同じようなピュアさを感じます。
一瞬の煌めきにかける溢れんばかりの熱量が多くの人の心を捉えて離さない、あらためて、花火師とはなんともうらやましい職業であると思いました。

今年もまもなく、全国さまざまな町々で花火が打ち上げられるシーズンがやってきます。

この小説を読んだことで、はたして花火の見方が変わるのでしょうか。その瞬間が今から待ち遠しい、そんな想いです。



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