アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

読了「体験デザインブランディング〜コトの時代の、モノの価値の作り方」

「デザイナーと芸術家の違いは?」そう尋ねられて、明確に答えらえる人はどれくらいいるでしょうか。

どちらもクリエイティブなポジションにあることは間違いありませんが、いちばんの違いは、目指すゴール。

その違いを、本書「体験デザインブランディング」で、著者の室井さんはこんなたとえで説明しています。

体験デザインブランディング

「平たく言えば、芸術家の夢は美術館にたどり着くことであるが、デザイナーの夢は市内のスーパーにたどり着くことである」
芸術家は芸術家として尊敬されるべき存在ですが、デザイナーは戦略家として、表現の世界を泳ぎ続けてはならないのです。

うまいこと言いますね(笑)。

デザイナー=戦略家

今やデザイナーのポジションは、チラシや雑誌の文字や写真を上手にレイアウトする表現の世界の人ではないのです。むしろ、経営者のパートナーとして、そのような見える価値ではなく、「見えない価値」を創造することこそ、デザイナーの重要な役割であると。

企業ブランディングを手がける、クリエイティブディレクター佐藤可士和さんや水野学さんをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。決してかっこいいツールを作ることを目的としていないのです。むしろデザインが目立たないことの方が重要なのかもしれません。


デザイナーが行うべきデザインをそのように規定して、本書で室井さんが展開するのが、「体験デザインブランディング」。

顧客の心をつかんで離さないブランドには、ある共通する要素があると室井さんは言います。

それがコトのデザイン「ブランドエクスペリエンス(ブランド体験)」

すぐれたブランドは、商品やサービスを「顧客体験=コト」という視点で編集し直し、新たな視覚的デザインを加える事で、どこにもないブランドを創造し続けている。特に重要なのは“クリエイティブな視点を持ちながら”だと。

この代表例が、言わずもがなですが、アップルではないでしょうか。


それでは、従来にないこうした新しい価値や視点というのは、いったいどこから生まれてくるのでしょうか?
室井さん曰く、それこそが本書のテーマでもある「デザイン発想」なのです。

本書では事業戦略にデザイン発想を加えることで、魅力的なブランドを生み出している企業の事例を紹介することで、体験デザインと視覚的デザインの重要性や作り方を解き明かしています。

どちらかというと、現代はWebやバーチャルな体験が優先される時代背景にありますが、室井さんが重視するのは、あくまでリアルなブランド体験
ブランディングを体験デザインの観点からとらえた書籍は稀有で、そういう意味では貴重な1冊です。

室井さんは、ブランド体験の構成要素として次の3つを挙げています。

Operation(人)、Product(モノ)、design(空間)。

「人」は、接客。どんなスタッフが、どんな格好で、どんな接客を行うか。
「モノ」は、主には商品。店内でどのように扱われるか、見せるか。
「空間」は空間デザイン、サインやインテリアはどのようなものか。などです。

加えて重要なのは、3つをつなぐ「体験シナリオ」であると。

来店者がどのような順番でブランド空間を体験していくかを具体的に作成することで、
より体験の精度が上がると室井さんはいいます。

本書の最後で、室井さんが取締役として経営に参画している「表参道布団店。」の事例が紹介されますが、まさに自身の考え方の実践例として、非常に興味深く読むことができました。

モノ自体での差別化が難しくなり、モノが売れない時代に、経営戦略がどのようにあるべきか?
その答えの一つがデザイナーの経営への参画であり、体験デザインによるブランディングなのではないでしょうか。

私自身がめざすところであり、それゆえに手に取った書籍ではありますが、経営の先行きに悩む経営者の方々にとっても一つの突破口となる戦略、それが「体験デザインブランディング」であることは間違いありません。

そして、広告の衰退で燻っていたデザイナー、クリエイティブディレクターの存在、ふたたび表舞台で脚光を浴びる時がきました。

〜もと博報堂、アーキセプトシティ代表/クリエイティブディレクター/一級建築士の室井淳司さんが書いた「体験デザインブランディング」。

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