アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

平田オリザ「下り坂をそろそろと下る」。あたらしい「この国のかたち」を考える。

平田オリザさんが書いた「下り坂をそろそろと下る」を読了。

下り坂をそろそろ下る

平田さんといえば劇作家、演出家として有名ですが、一方で、大学でコミュニケーション教育や文化政策の講義を受け持ち、ここ最近では地方創生や少子化問題についての講演依頼もひっきりなしとマルチに活躍されています。

そんな平田さんの最新刊が本書、「下り坂をそろそろと下る」。
成長ありきの世の中に警鐘を鳴らし、これからの日本人のあり方を考察する1冊です。


そもそも日本人は「なぜ下り坂をそろそろと下る」必要があるのか。

平田さんがこう考える背景には、いまの日本における3つの「ない」があります。

1.もはや日本は、工業立国ではない。
2.もはや日本は、成長社会ではない。
3.もはやこの国は、アジア唯一の先進国ではない。

つまり、3つの「ない」を受け入れ価値観を転換することが重要で、それができれば、たとえ下り坂にあっても、幸せを感じられる世の中にできると。
安倍政権に言わせれば、まさに全否定ともなりそうな話ですが、確かにいまの社会を冷静に眺めてみれば、平田さんの考えの方が妥当なのではないでしょうか。

平田さんの「下り坂」という考え方。5年ほど前に五木寛之さんが書いた「下山の思想」を読んだ時と同じような、肩の力がすっと抜ける清々しさを伴った読後感でした。


本書では、国の重要な社会問題のひとつである少子化について、平田さんの考え方を象徴する一文が度々登場します。

「子育て中のお母さんが、昼間に、子供を保育園に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指を指されない社会を作ること」


この視点がいまの少子化対策にいちばん欠けている部分だと平田さんはいいます。

続けると、平田さんの主張はこうです。

「政府は賃金を上げることを重要施策としており、確かに収入が少なければ高額なお金を払って芝居を楽しむことができないのは事実だが。問題は日本の異様に高いチケット代にあるのであり、さらにいえば、本当に大切なことは平日の昼間にどうしても観たい芝居やライブがあれば、職場に申し出て、いつでも気軽に休みを取れるようにすることではないか。」

私自身も全面的に賛同、まさにいまの世の中の問題を象徴する主張。芸術や文化に対して、考え方が貧困な政治家が国の進路を握っていることを憂うのは平田さんだけではありません。おそらくは庶民的感覚を持った人であれば、素直に受け入れられる考え方なのではないでしょうか。

子育て中のお母さんも失業者も同様。なぜなら、同じ人間なのですから。

昼間に映画を観る、芝居を観る、ライブに行く。
「あいつ、サボりやがって」と後ろ指を指されることなく、「どうぞ楽しんで来なさい」と言える会社がたくさん存在する世の中をつくること。これが私が考えるコミュニケーションデザインであり、コミュニティデザイン。そのためのコミュニケーション教育なのだと平田さんはいいます。

旧来の政治家にはこれ以上期待できないのではないか。少なくとも、あたらしい「この国のかたち」は彼らにまかせておけない。参議院選挙も近いいまだからこそ、私たちもあらためて考える必要があるのではないでしょうか。

文化の力、もっともっと活用すべきです。本書を読んで、そんな思いを新たにしました。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://adrunner.blog38.fc2.com/tb.php/1482-e7d6ddfd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad