アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

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美濃焼の町で感じた、愛されるお店のつくり方。

その店、「だいどこ やぶれ傘」に着いたのは、開店時間5時の5分くらい前。

路地入口

店は路地を少し入ったところ。路地には明かりもなく薄暗く、店の前には猫が数匹、なんとものんびりとした風情に包まれていた。反対方面から来たのでよくわからなかったが、気づけばJR多治見駅からほぼ2分という至近距離。名古屋から快速に乗れば30分ちょっとで駅まで着くわけだから、大都市ではありえないこのロケーションも魅力である。

なぜこの店なのかというと、ナガオカケンメイさんのd&dプロジェクトのひとつ「d&d Travel GIFU」で紹介されたこと。懇意にしている岡田さんが、それを読んでさっそくアクションを起こしてくれた。あいかわらず反応が早くてすばらしい、まさに神対応(笑)

「だいどこ やぶれ傘」は、地元で評判の居酒屋。外の静けさが嘘のようで、開店間際というのに店内は活気に包まれていた。

食材と店内

とはいえ、基本的に地元の常連客を大切にしているお店。当日も予約で一杯とのことだったが、開店後もコの字型のカウンター周りはしばらく私たち二人だけ。聞くところによれば、予約は常連客メインの2階から埋まり、ついで囲炉裡まわり、最後にカウンター周りとなるらしい。そのカウンター周りも予約は入っているものの常連のお客さんが来る時間はアバウトらしく、帰る頃にようやく埋まるようなゆるさ。そんな中で、途中フリーのお客は、予約でいっぱいと断られていた。無理にお客を増やさず、あくまで地元の人を大切にする、そんな考え方を大事にしているお店だということがあらためてわかった。

さて。肝心な料理である。この店にはお品書きも料金表も一切ない。1月に行った伊勢の一月家もそうだったが、愛される店はお客様と距離が近く、お客様との信頼関係の上に成り立っているのだ。ゆえに決め事も少ない。そもそも何がいくら、高いか安いか、この店はどうのこうのという話は存在しないのだろう。お店の価値観に納得できる人が常連になり、納得できない人は再びやってはこない。こうしてお客様の質とお店との相性レベルが上がっていく。それが店を磨いていくのだ。

注文は、目の前に並んだ食材、オススメの食材をお店の人と会話しながら決めるスタイル。お酒も同様である。この会話がまた、なかなか楽しい。注文のついでに食材の調理方法を聞いたり、食べ方のアドバイスをもらったり。お店の人の気さくな人柄が、食べる前の期待感をさらに盛りたててくれる。こうしたちょっとしたやりとりが、チェーン店では体験できない楽しみのひとつなのだとあらためて思った。

食材


目の前にならぶ食材は今採れる地の野菜が中心。焼鳥やメンチカツ、クリームコロッケも頼んだが、新玉ねぎ、セリ、巨大なナメコ、こしあぶら(隣のお客さんから頂いた)、手作りの朴葉ずしなど、どれも絶妙の味。そしてお酒も当然、地元の酒「三千盛」がメイン。そして、意外なヒットが隣町、八百津の酒「富」。濃醇で、米の旨みが感じられる美味しいお酒だった。

新たまねぎ

なめこの生姜醤油焼

こしあぶら

揚げ物

片口に八百津の酒

いわずもがな、この店のもうひとつの楽しみは、器として使っている地元の美濃焼。そもそも開店当時から美濃焼を使っていたようだが、今では美濃焼の作家さんたちが、自身の焼いた器を使って欲しいと持参してくるようになったらしい。味わいのある美濃焼が素材を活かした料理と相まってなんとも言えない世界を醸し出している。お店の人は「割ってはいけないので食器洗いが大変」とこぼしていたが…(笑)そんなこんなで、予約の制限時間はあっという間に終わってしまった。

美濃焼の器

特別なものは何もない。季節を感じられる、のびのびと育った地元の食材と地元で焼かれた器。そして、お店を支える地元の人たち。お客たちもその一員だ。そんな当たり前の要素が互いに響き合って、ここでしか味わえない独特の空気感を作り出している。どんな料理よりそれが最高のご馳走なのかもしれない。時折、そっと目の前に様子を見にあらわれる女将さん。居酒屋を開くために多治見に移り住み、思いを実現させたという彼女の人柄によるところも大きいのだろう。

良い店とは求めて作るものではなく、時間の経過の中で自然と作り上げられていくものなのだ。だからこそ、経営者は何を考えるべきか、何を大切にすべきか。小さなお店のブランディング(ブランディングという言葉を使うかどうかも微妙であるが)はかくあるべき。そんなことを考えつつ存分に楽しんだ一夜だった。岡田さん、今日もありがとう。


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