アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

土から耕し、根っこから変えていく。

アートディレクター森本千絵さんの書いた「アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話」を読んだ。



森本さんといえば、オンワード組曲などブランドのアートディレクションで広告業界では知らない人はいない存在。そして企業の広告担当者から見れば、一度はお願いしたい、ある意味憧れの存在でもある。

ミスターチルドレンのアルバムジャケットの一連のアートワークを手がけた人といえば、あーあの人と手を打つ人も多いのではないか。

彼女のアートディレクションの特徴は、誰にも作れない独特の世界観にある。目にした時、どこか懐かしい、心の襞をそっと撫でられるような、かつて味わったことのないような感覚に包まれる。

その作風や感覚、一体どんな育ち方、考え方をすれば出来上がるのか?

かねてより気になっていたそのもやもやが、本書を読んで一気に晴れた。

彼女の才能は、天賦のものはもちろん、祖父からの幼少期の影響も大きいが、本書から伝わる私の印象は「努力の人」。

プロフェッショナルになるための条件としてよく言われる10,000時間の法則というものがあるが、彼女はまさに1日24時間を仕事のために捧げている、ここまでやれば、あとは一流になるしかない(笑)のだと納得させられる。

本書で明らかにされているのは、彼女のクリエイティブに対する方法論。

しかしそれは決して手順や段取りというものではなく、心の有り様や意識の持ち方、従ってコミュニケーションそのものに対する価値観といったほうが適当かもしれない。

たとえば彼女、大切なことはいつも色や歌に変えて伝える。その方が人の心に伝わるのだそうだ。

特にスタッフとの共通言語は「音楽」で作るとのこと。

たとえばキャンペーンを考えるときは、まずその「感じ」を音楽に置き換え、イメージに合った曲を選び1枚のCDにするのだそうだ。そしてそれを繰り返し聴き表現を固めていく。

逆に、本の装丁や写真集などでは作家に好きな音楽をCDに焼いてもらい、それを聴きながらイメージを作っていくと。

なるほど、出来上がった仕事を見ると、確かに鮮やかな色が目に焼きつき、そしてどこからか音楽が聞こえてくるようだ。

さて本書で彼女のいう〝だいじな話〟、最も心に刺さったのは第4章、本物の追求の中の、『土の中に未来がある』という言葉。

土をいかに耕して、どれだけしっかり根っこを広げて張れるか。

広告とは商品の魅力を伝える大切な手段であるが、もっと大切なのは、その商品を作る会社の姿勢そのものであり、関わる人たちのこだわりであると。ある意味広告の限界を誰より知っている人。そこまで徹底するからこそ、彼女の仕事が人の心を動かすことができるのではないか。

当たり前のことだが、本書を読んでも彼女のようなアートディレクターになれるわけではないし、地方のアドマンには、応用できることも少ないだろう。

けれどもあえて一読をおすすめしたい。なぜなら自身と一流との違いを知ることで、自分の至らなさが実感としてわかるからだ。賢明な人は学ぶことを知るだろう、それは決して無駄ではない。

それにしても森本千絵、凄い人である。


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://adrunner.blog38.fc2.com/tb.php/1437-2a373647
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。