アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

成長から成熟へ。新しい世の中のために広告ができること。

もと広告批評の編集長、天野祐吉さんの書いた「成長から成熟へ~さよなら経済大国」を読んだ。



この10月に急逝した天野さん。あとがきを見ると、「2013年、体験したこともない豪雨と炎暑の歪んだ夏」とある。

つまり、ほんの2か月前。肉体的にもきつい状況でまさに最後のエネルギーを振り絞るようにして、1文字1文字を綴ったのだろう、想像するだけでも心が痛む。

しかもその状況でありながら、書かれた文章はいつもながらの飄々とした天野さんらしい書き口。最後まで自らの生き方を貫いた天野さんのメッセージに「ありがとう」という思いを噛みしめながら、1ページ1ページを大切に読ませて頂いた。

60年に渡り、日本の広告業界の最前線で広告の盛衰を見守り続けた天野さん。
広告を批評するという新たなジャンルを開拓したわけだが、彼が愛される理由は、厳しい批評の言葉の裏にいつもアドマン、クリエイター、そして広告業界に注がれる優しい眼差しがあったからだと思う。

本書は、そんな天野さん自身の回顧録でもあるわけだが、それは、そのまま日本の広告の歴史年表でもある。

DDBのワーゲンの広告、糸井重里さんがコピーを書いた西武百貨店の広告、小野田隆雄さんがコピーを書いた資生堂の広告…高度成長期、広告の絶頂期にやや遅れてコピーライターとして業界に入った私にとってはまさに憧れであり、目標であり、挫折と嫉妬の材料でもあり…
あぁそんな時代もあった、あんな時代もあったと走馬灯のように当時の懐かしい思い出が甦ってきた。

しかし、現実に戻れば、今この瞬間はそんな甘いものではない。天野さんいわく成長至上主義はもう終わったのである。いつまでも夢物語を語る広告では、反感は買っても好感を持って受け止められる機会は減っていくばかりだろう。

だからこそ、天野さんの「成長から成熟へ」という言葉になる。広告も成熟しなければならない時なのだ。

この本の最後に天野さんは、30年前に哲学者の久野収先生に聞いたという「別品」の話(昔、中国の皇帝では、画家や陶芸家の等号を、一品、ニ品と呼んで格付けしていたが、審査の物差しでは測れないが、個性的ですぐれているものは「絶品」「別品」として認めていたという)を引き合いに出してこう締めている。

経済力にせよ軍事力にせよ、日本は1位とか2位とかを争う野暮な国じゃなくていい。「別品」の国でありたいと思うのです。

「別品」の国。天野さんらしく飄々とした幸せな響きではないか。ありがとう、天野さん。

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