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電通コンサルティング著「しくみづくりイノベーション」を読んだ。
すでにご承知のとおり、この時代、商品のコモディティ化が急速に進み商品自体では差別化が難しくなっている。
にもかかわらず、日本企業は商品の自社生産にこだわりすぎて「生活者の心を動かすような提供価値を持った商品を生みにくい体質になっている」。そしてそれが日本の企業の危機につながり、ひいては国内消費の成長の停滞の大きな原因になっている。というのが、本書における電通コンサルティングの変わらぬスタンスだ。
そして、その対極にあるのが株の時価総額世界一となったご存じアップルの成功。
アップルと日本企業の大きな違いは、日本企業が「ものづくり」にこだわったのに対し、アップルは徹底して「しくみづくり」を追求したことにある。
アイポッドの爆発的なヒットは、製品そのものの魅力以上にアイチューンストアの存在によるところが大きい。
音楽をダウンロードして聞く新しい価値、新しい文化を創造したことが最大の成功要因なのだ。
そしてこのアイポッドの成功は、早い時点で「ものづくりだけでは生き残れない」ことを日本企業に教えていた。にもかかわらず、柔軟に対応できなかった結果が今日の国内メーカーの慢性的な不振につながっている。この事実を良い教訓とすべきだろう。
さて、それでは「ものづくり」から離れてどうしたらアップルのように「しくみづくり」で優位性を創ることができるかが本書の最大のテーマ。
「しくみづくり」というと難しく感じるが、しくみづくりのポイントを、エジソンを例に挙げてわかりやすく教えてくれている。
電球を発明したことで有名なエジソンだが、彼の最大の功績は電球を使って多くの都市に電灯を灯すという環境の整備を行ったことにあるのだそうだ。つまり電力の供給システムという「しくみ」を世の中に構築したその功績こそエジソンが後世に名を残すことになった最大の理由であり、「しくみづくり」の成果に他ならない。
さらに電通コンサルティングは本書で、マーケティング・ドリブン・ビジネス・デザインという「しくみ」をデザインする具体的な方法論を提示する。
詳しい手法は本書を読んでほしいが、すべての起点は「顧客を理解する」ことから始まるというのが電通コンサルティングの主張。つまり、これからの企業は製品技術を磨くのと同様に「顧客を理解」する技術を磨かなければ生き残れないのだ。言いかえればアップルと日本企業の最大の差は、「顧客の理解」の差と言っても過言ではないように思う。
さらにここでは、論理よりひらめきを重視するクリエイティブな発想も合わせて必要になってくるに違いない。
商品もサービスも「しくみづくり」から考え直してみる、視点を変えればまだまだ未開拓な市場が見えてくるのではないだろうか。
ともすれば企業の生き残りという重いテーマではあるが、「しくみづくり」でその苦境を脱するためのポイントをわかりやすく噛み砕いて教えてくれている。「しくみづくり」を学ぶには貴重な1冊である。
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