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アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

ファンベース。長く愛される企業のキーワード

コミュニケーションディレクター、佐藤尚之氏が書いた「ファンベース」を読んだ。

ファンベース


明日の広告明日のコミュニケーション明日のプランニングと、企業と消費者を取り巻く広告、コミュニケーションの考え方、あり方の変化を著してきた佐藤尚之氏。

本書「ファンベース」では、前著「明日のプランニング」の後半で提唱した考え方をさらに発展させた待望の1冊となった。

佐藤氏はもと電通のクリエイター。在社当時からネットの世界では「さとなお」さんとして有名だった。

振り返ってみて、最初に佐藤氏の「明日の広告」を読んでブログを書いたのは、2008年。

私自身も広告代理店のクリエイティブディレクターの立場にあって、広告の限界に直面して思い悩んでいる時だった。

当時、本書に出会って随分勇気をいただいたことを昨日のように思い出す。

もっとも、そのせいで自身の独立がさらに遅れてしまったことは否めないが(笑)


そこから10年である。

この10年の間に、広告をベースとしたコミュニケーション環境はがらりと、もっと言えば180度変わってしまったと言っても過言ではない。

そんな状況で、佐藤氏が満を持してタイトルに掲げたのが、ずばり「ファンベース」。

本書で佐藤氏が提唱する、これからの企業活動に最も重要な「ファンベース」という考え方と言ってもいい。

ファンを大切にし、ファンを大切にし、中長期の売上や価値を高めていく、それがファンベースという考え方だ。

ファンベースで特に重要なのが「中長期」というある意味、長い時間軸に視座を置いていること。

ゆえに、広告が最も得意とする短期的な売上志向をある意味、真っ向から否定している(言葉はそこまで直接的ではないが)。

もっと言えば、仮にそれで売上が上がったとしても、企業経営はそこで終わるわけではなく、必ずそのしっぺ返しと言ってもいい売上の落ち込みがこれまで以上にリスクとして企業に襲いかかることを指摘している。

すべからく、企業は正直で誠実でなければならない。企業内部を隠し立てなく、裏表なく見せる必要がある。そのためには、企業と生活者、企業と社会の壁を取り払い、心地よい空気で社内と社外をつなぐことだ。

こう考えた時、求められる経営者像も、おのずと変わってくるにちがいない。これまでよく見られた自身の価値観を押し付けるワンマン経営は影をひそめるだろう。

本書で佐藤氏はこれまで以上に、より現実的なデータ、より具体的な事例を掲げて、経営者がより自分事として取り組めるよう「ファンベース」マーケティングについて、熱く教えてくれている。

ここからは私の持論であるが、こういった考え方を取り入れるには、ほとんどの経営者は歳をとり過ぎている。大切なのは、まず自身の価値観を入れ替えることだ。そして、次の世代を担う若い幹部たちの意見を聞き、新しい企業像を模索すること。

一見遠回りのように見えるが、結局のところ、それが最善の道でもっとも近道となるはずだ。

明日の広告から10年、「ファンベース」は佐藤氏の考え方の集大成とも言えるが、もっと長いスパンで見れば単なる通過点となるのだろう。とにもかくにも今この時のコミュニケーションを俯瞰してみるには最適の一冊である。


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