アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

そうだ、星を売ろう。売れない時代のビジネスモデルとは。

マーケティング戦略アドバイザー永井孝尚さんが書いた最新刊、「そうだ、星を売ろう」です。

そうだ星を売ろう

永井さんを一躍有名にしたのが大ベストセラー「100円のコーラを1000円で売る方法」、読まれた方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな永井さんがまたまた新境地を拓いた1冊。長野県下伊那郡阿智村で取材したエピソードをもとに書き起こした、限りなく真実に近いフィクションです。

心温まる感動の物語ですが、それだけでなく巧みに作られたビジネスストーリーでもあります。読み進めるうちに、自然とビジネス戦略が学べるという優れもの。このあたりは永井さんの筆力の真骨頂です。

さて、本書の舞台、長野県下伊那郡阿智村といえば、先日もテレビで取り上げられていたように、いまでは「日本一美しい星空の村」として全国的に名をはせる人気観光地。

とはいえ、少し前までは温泉客依存でジリ貧となっていた課題いっぱいの村だったのです。

それがどのようにして蘇ることができたのか。その起爆剤となった商品がずばり「星空」というわけです。

物語の中心となっているのは、星空が商品として認知され衰退の一途にあった村を救うそのプロセス。
ふたりの人物の価値観の相違が対比的に描かれていきます。
大量生産大量消費の象徴としての老経営コンサルタント。新しい時代の象徴としての若手社員。
それはそのまま「モノ」の時代と「コト」の時代の象徴でもあります。

二人の価値観が対立する展開はまさに今の地域創生現場の縮図。こんなことが今も全国至るところで起こっているのでしょう。

読んでいても思わずクスっとさせられ、気づいたら若手社員、諸星にエールを送っているという始末。わかっていても永井さんの狙いにまんまとはまってしまう、そのストーリーの展開力には脱帽でした。

そして、その物語にさりげなく散りばめられている、ジョン・コッターやダニエル・ピンクなど数々のビジネス理論も、堅い本をは苦手という人でも、おそらくすんなりと理解できるのでは。

阿智村の「星を売る」物語。
ご本人があえてフィクションと名打つとおり少し美化されすぎているきらいはありますが、地域再生を学ぶ人、地域再生をビジネスとする人にとっても、おすすめの1冊です。

永井さんの著書は、以前にも紹介させていただいています。「戦略力」が身につく方法。


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「今、企業がブランド力を上げる理由」 美濃焼ブランディングプロジェクトに想う。

企業ブランディングに取り組む株式会社イマジナ、代表取締役の関野吉記さんが書いた最新刊が「今、企業がブランド力を上げる理由」。副題に「想いを伝える企業ブランディング」とあります。

イマジナ書籍

3作目か4作目になるのでしょうか、関野さんが書いた本はすべて読んでいますが、本書は、考え方は変わらないものの、これまで紹介されていない彼らの最新事例が、より具体的に紹介されています。

ニトリやにんべん、タカギなど全部で8つの事例、中でも私がより興味深く読んだのが、STORY6「美濃焼ブランディングプロジェクト」の章。

なぜかといえば、先日岡田さんに案内されて訪れた多治見の「ギャラリーヴォイス」で偶然、本書と本書に関するイマジナから関係者に向けて書かれた案内書を見つけたからでした。

普段なら見ることもないであろうギャラリーの本棚のところにたまたま見えるように置かれて、あぁこれも何かの縁かと、あらためて本書を手に取った次第。

(ちなみにギャラリーボイスで開かれていた日本全国の作家による陶磁器展もなかなか見ごたえがありました)

そんな縁もあって、この章は普段以上に感情移入して読んだというわけです。

その章のさわりを少し。

おそらくどこも共通の課題を抱えているのではと推測しますが、美濃焼の産地であるここ、多治見、土岐、瑞浪も、海外からの低価格品の輸入と国内市場自体の縮小により大きな打撃を受けています。

そんな中で、二つの方向性がより重視されるようになったといいます。その二つとは「高付加価値化」と「グローバル化」。その戦略を具体的に進めるため、3市の市長が手に手を取って取り組んだのがこのプロジェクトです。

中心になって取り組む古川多治見市長は、「中国産の低価格品と競争しても勝てません。それよりも、本物の良さをきちんと消費者に評価してもらうことを考えるべきではないでしょうか」と。

とはいえ歴史が長い分課題も多く、たとえば美濃焼といえば織部、志野、黄瀬戸など多様性が売りなのですが、その分具体的なイメージが希薄になるという問題が付いて回ります。さらに、長年OEMや分業制に甘んじてきたつけも回ってきているという厳しい状況。

そんな中でイマジナが依頼を受け取り組み出したのが「美濃焼ブランディングプロジェクト」なのです。

美濃焼ブランディングプロジェクト自体まだ端緒に就いたばかりで、進行状況については細かく記載がありませんが、今後注目してみていきたいプロジェクトのひとつです。

さて肝心のイマジナのブランディングコンサルティングですが、顧客の企業カルチャーを見出して、誰もが価値と感じる“ブランド”まで高める、カルチャーブランディングというスタイル。

特に他のブランディング会社と異なるのは、他が商品・サービスのブランド化や広告宣伝を積極的に使うアウターブランディングに重きを置いているのに対して、彼らが手がける企業ブランディングは企業の理念やビジョンなど、“想い”の社内共有を重視するインナーブランディングを中心に置いていること。

これは私自身も大いに賛同するところで、社員満足なくして顧客満足なし、そのためにはブランディングの核となる経営理念の共有が必要不可欠なのだと。

「自社が働く企業が何のために存在するのか」「社会にどんな価値を提供しているのか」「何をめざしているのか」といった企業理念の共有が、社員だけでなく世の中に与えるインパクトを十分に理解していることが、ここ最近の“心の時代”への移行と相まって、このところの高い評価につながっているのではと推測します。

ちなみに彼らの会社が掲げるキャッチフレーズはこうです。

「伸びる会社は、月曜日の朝がいちばん楽しい」

日曜日の午後くらいから月曜日のことを憂鬱に思い始める会社員が多いと聞きます(私自身も前職ではそんな感じでした)が、こんな考え方の会社だったら、社員のモチベーションも上がり生産性も高まるのではないでしょうか。ひいては業績にも好影響が。

さて、皆さんの会社はいかがでしょうか。

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企業の活動は「目的」と「大義」からはじまる。 水野学的ブランディング思考 その②

前回に続き、グッドデザインカンパニー、クリエイティブディレクター水野学さんの近著『「売る」から「売れる」へ 水野学のブランディングデザイン講義』から。

ブランディングデザイン講義風景

タイトルに掲げたのは、本書の中で私が大いに共感した一節。

水野さんは新たにブランディングの依頼を受けた時、まっさきに行うのは経営者との徹底した対話だそう。

その理由を「めざしているところがきちんと共有できないと、ブランディングの方向が間違ってしまうから」と水野さんはいいます。

ここがブランディングと単なる広告やツール制作とのいちばんの違いなのではないでしょうか。

単なる一手段であれば、経営者でなくても一担当者で済む話かもしれません。けれどブランディングとなると、経営戦略とも大いに関連してくるので経営者マターとなるのです。

経営者をすっとばしたブランディングなど片手落ちだし、上手くいくはずがありません。

逆にいえば、高いお金を払うのだからこそ、ブランディングの本質を発注者側も十分心得ておく必要があります。

時に激論をかわしながらも、こうしてお互いの相性も確かめつつ進んでいくからこそ、相性が合う相手ととことん付き合うことができるし、必然的にブランディングの精度が上がっていくのかなと思います。

最初のハードルは高くなるかもしれませんが、ブランディングを生業とするのなら、意を決して我々もぜひ見習いたいものですね。


目的=何のために?と大義=なぜ?

もちろん経営を続けていくためには売上・利益を上げることが必要不可欠ですが、それはそもそも大前提であるわけで、売上・利益を度外視した経営なんて経営と呼べません。そういう意味で、経営のエンジンとなる、お金儲け以外の目的や大義が重要になってくるのです。

そんなきれいごとで。と否定的な経営者もいまだ存在しますが、時代錯誤も甚だしいと。

そんなわけで。本書にも登場する中川政七商店や茅乃舎のブランディング事例は、水野さんが経営者と費やした対話時間の賜物であることが想像できるのではないでしょうか。

いささか余談になりますが、前職で銀行系のアナリストと話した時、10年前と今で、上場会社の経営者に求める素養として何が重要かという話になり、彼が即答したのが「経営者の哲学」という答えでした。

哲学と大義、似て非なるものではありますが、どちらも時代が「こころの時代」に入ってきていることを如実に物語っています。

そして、ブランディングデザインと大義。一見、関係がないようなものがつながることで、現代の経営における課題が見えてくるのではないでしょうか。

あらためて考えてみれば、論理より感性、まさに右脳の時代なのです。

世の中をあっと驚かせてはいけない。水野学的ブランディング思考 その①

世の中をあっと驚かせてはいけない。水野学的ブランディング思考 その①

「えー、なんで?」と広告系のクリエイターの声が聞こえてきそう。もし該当者なら要注意です。本書を読んでみる価値があるかもしれません。



本書とは、グッドデザインカンパニー、クリエイティブディレクター水野学さんが書いた『「売る」から「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』。

ブランディングデザイン講義

タイトルに書いた言葉は、水野さんがブランディングデザインに必要な3つのポイントとして掲げたひとつです。

ちなみにあと2つは、
「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力のことである」
「ブランドは細部に宿る」。

3つともうなづける点が多くなるほどと思わせる言葉ですが、冒頭の言葉は、ほかのブランディングに関する著書では、意外と語れられていない重要なポイント。

長年、広告をやっているとわかりますが、ひとつ間違うと「どうやって世の中を驚かせてやろうか、イヒヒ」と、クリエイターがほくそ笑み肩に力が入るところですが、それこそブランディングにとっては大きなマイナスを生む理由にもなるのです。

なぜならブランディングは長期的視点、長い時間軸で持続性をベースに考えるものだから。あっと驚かせた結果、瞬間的に認知が上がって売上が増えても、それが長く続かなければ意味がありません。それどころか逆効果になった例を、私自身たくさん見てきました。

水野さんは、こんなたとえ話で、この言葉の意味をわかりやすく伝えています。

これは差別化というものへの誤解です。〜中略〜
イスの差別化をはからなくちゃいけないからといって、座れないイスを作っても意味がないでしょう。そんなことは冷静に考えればわかるのだけど、差別化を考え始めると、それに近いことをやってしまうんですよ。
的を得ているなら、本当はもっと小さな差をつくるだけでいいんです。そういう意味で「世の中をあっと驚かせてはいけない」

どうですか。もちろんブランディングではなく販売促進が目的なら瞬間風速も重要です。
けれど…今目の前の提案が、座れないイスになっていないか、大いに考えさせられるところですね。

今回の著作は、これまでの水野さんの著作とダブるところも多いですが、学生に向けての講義をもとに書かれていることで、わかりやすさがさらに増しています。

また代表事例として中川正七商店、茅乃舎へ実際のプレゼンテーションした企画書が掲載されていること。普段どのようにクライアントへ提案しているか、その裏側をちょっとだけ覗くことができたこと、そして、そのトーンに水野さんの人柄が垣間見えてとても共感できました。

水野さんいわく、日本には企業の社長の片腕になれるクリエイティブデイレクターが決定的に不足しているそうです。確かに私もそう思いますし、経営コンサルタントでは対応しきれない経営課題もたくさん出てきているようで、時代の転換点を感じています。そういう意味ではとても勇気づけられる1冊でもありました。

●本書、なかなか奥が深いので、次回はその②として、もうひとつ気になった名言。企業の活動は「目的」と「大義」からはじまる。について書きたいと思います。

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売れる広告の肝は、いつの時代も「ロジック」と「マジック」。

ロジック=戦略的考察。マジック=創造的跳躍。

このふたつが、ブランドが目指すコミュニケーションの実現には、いつの時代にも欠かせないものであり、その両者の間で思考を往復させながら解決方法を見出していく。それこそがもっとも重要なプロセス。広告づくりは、まさに左脳と右脳のぶつかり合いなのだ。

そんなテーマで展開されるのが本書。フリーのクリエイティブディレクター、伊東紅一さんとビーコンコミュニケーションズ、プランニングディレクターの前田環さんの共著、「売れる広告」である。

売れる広告

「売る広告」といえば、かのデイヴィッド・オグルヴィが書いた名著であるが、こちらはそれに対抗してというわけではないだろうが「売れる広告」。「売る」と「売れる」。なんとなく時代の移ろい・広告を取り巻く環境の違いを考えさせられるタイトルで、まずは興味を引かれた。

とはいえ、内容はいたってオーソドックスだ。昔から変わらない広告の基本中の基本を押さえた方法論、ある意味、これから広告に携わる人にとっての入門書としても十分に役立てられる。

具体的に紹介すると、

1部が【ロジックパート】

・プランニングの基本戦略立案
・ターゲットの設定
・インサイトの見つけ方
・購入決定プロセス
・ブランドの使命
・クライアント・ブリーフから戦略構築

2部が【マジックパート】

・クリエイティブアイデアの開発1〜3

3部が【ネット化とグローバル化の時代に向き合う】

・広告コミュニケーションの今
・変わるものと変わらないもの

その中でも、特にいつの時代にも変わらないものと言えるのは、「インサイト」の存在だろう。彼らも最後は「インサイト」に行き着くと言っている。

ただし、商品やサービスの「インサイト」自体は、時代時代で微妙に変わってくる。というか機微がわからなければ、ターゲットの心を捉えることはできない。

インサイトとは、ひと言で言えば「行動を起こす心のツボ。」

「確かにそう言われれば、そうだよね。気づいてなかったけど、わかるわかる!」そんな感じだろうか。

適切なインサイトを見つけられたら、クリエイティブ作業の大半は終わったっと言ってもよい。
それほど重要な存在であるし、そんなインサイトを見つけるために、アドマンは心血を注ぐ。
これはというインサイトを見つけられた時、まさにアドマンはアドマン冥利に尽きるということではないだろうか。

デジタルの時代になって、特にインターネットの進化によりさまざまな手段が登場している昨今。だからこそ、見失ってはいけない本質が重要になってくる。

「売れる広告」。広告の是非は別としても、コミュニケーションの本質を見極めることの重要性を、あらためて教えてくれる1冊である。


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企業価値を考える ②必要なのは「つかみ」より「深み」。村尾俊介さんの著書より

事あるごとに読み返す、私にとってはバイブルともいえる1冊。それが本書「安売りしない会社はどこで努力をしているか?」です。

本書のテーマは、値段を下げる前に、できることはたくさんある。

そのとおり。というわけで小さな会社でもお金をかけなくてもできるアイデアが、たくさん紹介されています。

「会社全体のファンを増やす」について書かれた章で、私のお気に入りはタイトルにも掲げたこのページ。(以下、引用)


必要なのは「つかみ」ではなく「深み」


経営者とコーヒーを飲みながらリラックスした雰囲気で話しをすると、誰が聞いても「心からの言葉だな」とわかる、すてきなストーリーがいっぱい出てきます。

「私は自分の事業が本気で、MADE IN JAPANの復活につながると思っています。だから・・・」

「僕は、人生をかけて、この業界に従事する人たちの社会的地位を上げてあげたいんです。だから・・・」

「だから・・・」の先は、どうやってそれに貢献するかにつながります。大それた事?そんなことはまったくありません。これで、いいのです。

こういうストーリーがあって、はじめて人は、その会社を「応援しよう」と心に決めるのです。

会議室では、インパクトやアイキャッチャーが必要ということで、よく「つかみ」という言葉が出てきます。でも、会社自体を、その地域・業界にファンがいっぱいのブランドにしていきたかったら、同時に「深み」も必要です。

「どうして私たちの会社は存在しているのか?」そんな想いを、ショートストーリーにして、チラシや封筒、名刺など、会社の印刷物に必ず印字していく。

それだけでも、小さな会社のブランド化に向けての、大きな一歩になります。

〜村尾隆介「安売りしない会社はどこで努力をしているか?」

安売りしない会社は

どうでしょう。経営とは続かなければ意味がありません。ハデな分どうしても「つかみ」に目が行きがちですが、本当に大切なことは、地道にあきらめず「深み」を作っていくこと。

それが他社が真似のできない独自価値になるのです。

老舗と言われる会社はすべてこれにあてはまるのではないでしょうか。

つかみといえば広告ですが、広告が効かなくなった、広告のニーズが減ってきた、その理由がわかるような気がします。


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企業価値を考える ①発想を縮小均衡から「成長志向」に変える。岩田松雄さんの著書より

岩田さんがザ・ボディショップの社長に就任した時、会社の方針のひとつが、「売り上げが2割減っても利益が出せる体質にしよう」だったそうです。


当時1店舗の売り上げが平均7000万円。5600万円になっても利益が出るようにする。

そのためには経費を削ることが必要で、社員を減らしアルバイトを増やす。トレーニングのコストがもったいないから減らす。出張には行くな。接客は「いらっしゃいませ」のレベルでかまわない。…厳しいコストカットこそすべてに優先する。などなど……

しかし、岩田さんの意見は違いました。


もとよりザ・ボディショップはブランドビジネスを展開している。言ってみれば価値で勝負をしているんです。したがってコストを下げて勝負するのではなく、いかに価値ある商品を満足して買ってもらえるかこそ本質であると。

そして岩田さんは、7000万円の売り上げを1億円にするにはどうすればよいか、という「発想の転換(Pradigm shift)を呼びかけました。

これにより、長年売り上げが低迷していたザ・ボディショップが見事な復活を遂げたそうです。

もちろんこれがすべてではありませんし、無駄なコストを削減すべきは当然ですが、肝心なのは無駄か無駄でないかの判断。価値を見失えば熾烈な価格競争が待っています。

本質を見極めて価値を上げることこそ、お客様に選ばれる企業の条件のひとつではないでしょうか。

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〜岩田松雄「スターバックスCEOだった私が伝えたい、これからの経営に必要な41のこと」

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創作和菓子ユニット wagashi asobiが書いた「わがしごと」。小ささを武器にできる時代。

創作和菓子ユニット wagashi asobi(わがし あそび)が書いた「わがしごと」を読んだ。

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私がはじめて彼らの存在を知ったのは、少し前に観たBSテレビでの特集だった。

そして、常識を覆すような斬新な発想とその独創性が心に深く刻みこまれた矢先、千種の正文館書店でたまたま見つけたのが彼ら初の単行本となる本書「わがしごと」である。

それにしても、創作和菓子ユニット「wagashi asobi(わがし あそび)」って何?
それが初見の人の素朴な疑問ではないだろうか。

「wagashi asobi(わがし あそび)」とは、二人の和菓子職人、稲葉基大と浅野理生からなるユニット名。
なおかつ会社名でもあるし、お店の名前でもある。さらにはブランド名でもある。

名前の由来は、二人が会社勤め時代、オフタイムに始めた活動にまで遡る。
当時、企業ではできない和菓子の創作活動を自由に楽しんでいた時のプロジェクト名が「wagashi asobi(わがし あそび)」だった。その活動の延長線上で起業したこともあり、自然とその名前になったそうだ。

彼らのお店の最大の売りは、たった2品の和菓子で勝負していること。
浅野の発想による「羊羹」と稲葉の発想による「らくがん」。
開店以来、後にも先にもお店で販売しているのはこの2品だけ。

その思い切った商品の絞込みでもわかるように、彼らの凄いところは、単に和菓子づくりに賭ける職人で終わっていないところにある。
ともすると、物作りは熱心でも金勘定には弱いという職人気質で失敗するケースもある中で、マーケティングという観点から冷静沈着な戦略をもとに経営を考えている点が、他との大きな差別化につながっている。

そして、もうひとつ特筆すべきなのが「理念」の存在。

彼らの理念、それは「一瞬一粒(ひとつひとつ)に想いを込めてつくる」。

この理念をすべての判断基準として、やらざるべきことを決めている。商品の絞込み、地域密着という価値観もすべての原点がここにあった。

さらに、理念を補完するように、お店についての自らの価値観をこんな風にも綴っている。

「老舗を始める」

お手本は老舗、として

地元地域のお祭りや歳時記など、暮らしのなかに和菓子と和菓子屋が寄り添い密接に関わり合っていること。

必要以上に多店舗化や量産化を求めず「目の届く」「手の届く」「心の届く」お店のサイズを保っていること。

屋号と同じくらい有名な代表銘菓があり、葛切りならこのお店、松風ならこのお店といった具合に。お店の大小にかかわらず昔から銘菓で専門化していること。

どうだろう。

あらためて考えてみると、彼らが今日高い評価を受けている理由は、決して偶然の産物ではなく、実は綿密な計算に基づいた「戦略」ありきなのである。そしてその裏にある明確な「理念」の存在も大きいのではないだろうか。

小さいことはデメリットばかりではない。それどころか、小さいことがメリットとなる時代になってきた。そこでますます大切になるのが、どのように世の中の役に立ちたいかという「理念」。理念への共感が熱狂的なファンをつくり、口コミで新たな顧客へと拡散されていく。

そんなノウハウが凝縮されたのが本書である。小さな会社やお店のブランディングを考えるのに大いに参考にできる1冊である。

※本書は、コトノハのとっても初めての著作。今後の展開にも期待したい。

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美濃焼の町で感じた、愛されるお店のつくり方。

その店、「だいどこ やぶれ傘」に着いたのは、開店時間5時の5分くらい前。

路地入口

店は路地を少し入ったところ。路地には明かりもなく薄暗く、店の前には猫が数匹、なんとものんびりとした風情に包まれていた。反対方面から来たのでよくわからなかったが、気づけばJR多治見駅からほぼ2分という至近距離。名古屋から快速に乗れば30分ちょっとで駅まで着くわけだから、大都市ではありえないこのロケーションも魅力である。

なぜこの店なのかというと、ナガオカケンメイさんのd&dプロジェクトのひとつ「d&d Travel GIFU」で紹介されたこと。懇意にしている岡田さんが、それを読んでさっそくアクションを起こしてくれた。あいかわらず反応が早くてすばらしい、まさに神対応(笑)

「だいどこ やぶれ傘」は、地元で評判の居酒屋。外の静けさが嘘のようで、開店間際というのに店内は活気に包まれていた。

食材と店内

とはいえ、基本的に地元の常連客を大切にしているお店。当日も予約で一杯とのことだったが、開店後もコの字型のカウンター周りはしばらく私たち二人だけ。聞くところによれば、予約は常連客メインの2階から埋まり、ついで囲炉裡まわり、最後にカウンター周りとなるらしい。そのカウンター周りも予約は入っているものの常連のお客さんが来る時間はアバウトらしく、帰る頃にようやく埋まるようなゆるさ。そんな中で、途中フリーのお客は、予約でいっぱいと断られていた。無理にお客を増やさず、あくまで地元の人を大切にする、そんな考え方を大事にしているお店だということがあらためてわかった。

さて。肝心な料理である。この店にはお品書きも料金表も一切ない。1月に行った伊勢の一月家もそうだったが、愛される店はお客様と距離が近く、お客様との信頼関係の上に成り立っているのだ。ゆえに決め事も少ない。そもそも何がいくら、高いか安いか、この店はどうのこうのという話は存在しないのだろう。お店の価値観に納得できる人が常連になり、納得できない人は再びやってはこない。こうしてお客様の質とお店との相性レベルが上がっていく。それが店を磨いていくのだ。

注文は、目の前に並んだ食材、オススメの食材をお店の人と会話しながら決めるスタイル。お酒も同様である。この会話がまた、なかなか楽しい。注文のついでに食材の調理方法を聞いたり、食べ方のアドバイスをもらったり。お店の人の気さくな人柄が、食べる前の期待感をさらに盛りたててくれる。こうしたちょっとしたやりとりが、チェーン店では体験できない楽しみのひとつなのだとあらためて思った。

食材


目の前にならぶ食材は今採れる地の野菜が中心。焼鳥やメンチカツ、クリームコロッケも頼んだが、新玉ねぎ、セリ、巨大なナメコ、こしあぶら(隣のお客さんから頂いた)、手作りの朴葉ずしなど、どれも絶妙の味。そしてお酒も当然、地元の酒「三千盛」がメイン。そして、意外なヒットが隣町、八百津の酒「富」。濃醇で、米の旨みが感じられる美味しいお酒だった。

新たまねぎ

なめこの生姜醤油焼

こしあぶら

揚げ物

片口に八百津の酒

いわずもがな、この店のもうひとつの楽しみは、器として使っている地元の美濃焼。そもそも開店当時から美濃焼を使っていたようだが、今では美濃焼の作家さんたちが、自身の焼いた器を使って欲しいと持参してくるようになったらしい。味わいのある美濃焼が素材を活かした料理と相まってなんとも言えない世界を醸し出している。お店の人は「割ってはいけないので食器洗いが大変」とこぼしていたが…(笑)そんなこんなで、予約の制限時間はあっという間に終わってしまった。

美濃焼の器

特別なものは何もない。季節を感じられる、のびのびと育った地元の食材と地元で焼かれた器。そして、お店を支える地元の人たち。お客たちもその一員だ。そんな当たり前の要素が互いに響き合って、ここでしか味わえない独特の空気感を作り出している。どんな料理よりそれが最高のご馳走なのかもしれない。時折、そっと目の前に様子を見にあらわれる女将さん。居酒屋を開くために多治見に移り住み、思いを実現させたという彼女の人柄によるところも大きいのだろう。

良い店とは求めて作るものではなく、時間の経過の中で自然と作り上げられていくものなのだ。だからこそ、経営者は何を考えるべきか、何を大切にすべきか。小さなお店のブランディング(ブランディングという言葉を使うかどうかも微妙であるが)はかくあるべき。そんなことを考えつつ存分に楽しんだ一夜だった。岡田さん、今日もありがとう。


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2024年までに「会社」は一度死ぬ。そんな時代の企業の在り方、働き方とは?

経営コンサルタント、神田昌典さんが書いた「未来から選ばれる働き方〜会社がなくなる時代のキャリア革命」を読んだ。
(正しくは、後述するようにUTグループ社長、若山陽一さんとの共著)

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2012年に出した著書「2022ーーーこれから10年、活躍できる人の条件」で、2024年には「会社」がなくなる。と予測した神田さん。

あれから4年、間違いなく時代はその方向で進んでいる、しかも加速度を増して。その確信が、神田さんに本書を書かせる大きな動機のひとつとなったようだ。

確かに、東芝の巨額赤字やシャープへの鴻海精密工業の支援、またつい最近では三菱自動車の燃費改ざん問題など、大企業が地に堕ちるような出来事が相次ぎ、かつての栄光は見る影もない。ある意味、資本主義社会における「会社」の限界を感じざるを得ない状況にあるのだ。神田さんの予測はまんざらでもないと、多くの人が感じられるのではないだろうか。

本書の冒頭で神田さんは、前書からの4年間で会社をめぐる「環境」の変化について、次の3つを挙げている。

(1)社内で価値を創る時代から、社外で価値が創られる時代へ
(2)社内で予算を獲得する時代から、社外で資金を調達する時代へ
(3)人を育てる時代から、ロボットを創る時代へ

中でも、私が特に見逃してはならないと思ったのが、(1)の「社外で価値が創られる」の意味だ。

神田さんはその典型例として、Airbnb(エアビーアンドビー)、Uber(ウーバー)のビジネスモデルに着目する。

前者は部屋を貸す人と宿泊先を探している人を結びつけるマッチングビジネス。後者は、自分の車に人を乗せる「運転手」と乗せてもらう「ユーザー」を結びつけるマッチングビジネス。

さまざまなメディアで取り上げているので今では知らない人は少ないと思うが、実はこれらの会社、アメリカで誕生してからまだ数年しか経っていない。以前では考えられなかったその急成長の理由のひとつが、社内のリソースをほとんど持たない、使わないということだ。

たとえばAirbnb(エアビーアンドビー)の競合となるのはホテルであるが、ホテルの場合は自前で建物を作る、従業員を教育する、お客様をもてなすサービスを考えるなど、資金と労力をかけて自社内で価値を創らなければならない。

対してAirbnb(エアビーアンドビー)はといえば、部屋を提供する人と借りたい人を結びつけるプラットフォームを用意することがすべてといっても良い。価値そのものはそこに参加する提供者と利用者が作ってしまうのだ。
問題は安心・安全を誰が担保するのかという点だが、その心配もいらない。進化したITが解決してくれる。
Uber(ウーバー)のビジネスモデルも同様である。

こうしたプラットフォームをベースとした新たなビジネスが続々と生まれてくる時代に、多くの社員や不動産を抱える旧来のビジネスが今のままで生き残れるわけがない。神田さんが2024年に「会社は一度死ぬ」という意味は、こういうことなのである。

さて。本書はそんな時代を予測して、いち早く「正社員を派遣する派遣会社」として急成長を遂げているUTグループ社長、若山陽一さんとの共著となっている。神田さんの時代分析に対して、その実践例として若山さんが自社の価値観を話す。それにより、読者はこれからの時代の働き方を自分ごととして考えることができるというわけだ。

若山さんの話はまた別の機会に書くとして、神田さんの話に戻すと、
第5章で神田さんは「コネクティング・インテリジェンス」という本書の核となっている重要キーワードを掲げる。

コネクティング・インテリジェンス。
具体的にいうと、「内面と外面のズレをなくし、常に、それらを一致(コネクト)させていく知性」という意味。

これからの時代は、日常のすべてが情報化され、内と外を隔てていた壁が透明になっていく。ゆえに、これからの時代には、ズレをなくす能力を持つ人や組織が、驚くほどの影響力を放てるようになると。

その背景にあるのは、インターネット、中でもSNSなどの進化による情報のフラット化と個人のメディア化だろう。

企業が自社で情報を囲い込むことや情報を隠蔽することがまず無理になった今、「透明性」という価値観をいち早く受け入れることで、企業も個人もイニシアティブをとることができるようになる。それこそが神田さんのいう、これからの「企業の在り方」であり個人の「働き方」なのではないだろうか。

2024年より早いか遅いかは別として、この先、仕事人生を一社で勤め上げるなどということが成立しないのは間違いない。だからこそ、自らの意思でキャリアを設計することが重要になってきているのだ。

このタイミングで、この本と出会えた人は運が良いのかもしれない。それだけでなく、この本を読んで行動に移せた人は必ずあの時この本に出会えてよかったと言える時がくるはずだ。

神田さんの時代を見透す力、相変わらず衰えを知らない。

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