アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

一品で会社を変える。中小企業の特効薬になりうる1冊。

経営コンサルタントの岡村衞一郎氏が書いた「一品で会社を変える」を読んだ。

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イノベーションの手掛かりとしての「一品」開発が本書のテーマである。

会社を変えること。

時代そのものが大きく転換していこうとしている今、中小企業はもちろん、大企業でさえ、今までどおりでは生き残っていけない。ある意味意図的に会社を変えていかなければ、社会からの退場を余儀なくされるだろう。

そんな状況で岡村氏が重視するのが「一品」の力だ。

一品とは、足元にある強みを熟成させ、違いをつくること。新たにつくった価値が誇りに変わり、誇りの連鎖が価値創造の原動力になると森村氏。

自社の「一品」にとことんこだわり、進化させ深化させることが重要である。

ではどうすれば「一品」を持つことができるようになるのか、本書ではその具体的なメソッドが紹介されている。

たとえば、第5章:「一品」で会社を変える5つのステップ。

「一品」を探す、から「一品」に込める、「一品」を伸ばす、「一品」で発見する、「一品」で広げる、と続く。

さらに第6章では、「一品」で会社を変える6つの道具として、道具として実践的に使える6つのフォーマットが提示される。

さらにその後の第7章では、上記を実践した結果として9社の「一品」の具体例も。

ここまで読み進めれば、自社の「一品」が通用するものか考え直すべきか、判断できるだろう。

一品は、言葉を変えれば「自社だけの強み」。ブランディングで言えば「自社らしさ」。

それを「一品」に集約させて、岡村氏は見事に1冊にまとめあげた。

選ばれるための「一品」磨き。本気で取り組めば、まだ間に合う。
人材確保や販路開拓で悩む中小企業にこそ、特効薬となりうる1冊なのではないだろうか。

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すべての仕事はクリエイティブディレクションである。まさに。

電通CDC局長、エグゼクティブクリエイティブディレクターの古川裕也氏が書いた「すべての仕事はクリエイティブディレクションである。」を読んだ。



実は読み終えたのは出版直後、今から4、5ヶ月も前か。なかなか優れた内容の本ですぐにでも皆さんにお知らせしたいという思いでいたのだが、今日までブログに書くことはなかった。

実は私自身、広告会社時代の後半は、クリエイティブディレクターの立場にあった。といいつつ、その名称を名乗ることは最後までなかった。クリエイティブディレクターというポジションはそれほど価値の高い、選ばれた人のものなのだ。私など語るもおこがましい、それが偽らざる気持ちである。

それがなぜ今?というと、一緒にプロジェクトの立ち上げを進めている池上さんが本書を手にしていたからだ。そして、彼も私の抱いていた感想と同様、後半が読むべきところだと、ひと言。


クリエイティブディレクターの仕事は、広告にとどまらず、社会の課題解決につなげることができる仕事。それが本書のテーマ。

確かに、課題を見つけて、そのソリューションを考えて、実行する。その一連の実戦経験は、広告だけにとどめておくのはもったいない、かねてより私もそんなふうに考えていたから、本書における古川氏の論調には大いに賛同した。

さて。池上氏も推奨する肝心の後半部分、それこそがクリエイティブディレクションの今後の可能性を示唆している章、「これからのクリイティブディレクション」。

中でも、クリエイティブディレクションの新たな方向性として真っ先に提示された、①for Good は、まさに私自身が「ソーシャルバリュー協会」でめざしている方向にかぎりなく近い、今最も大切にすべき価値観のひとつだ。

古川氏はこう書いている。長くなるが以下に引用する。

振り返ってみると、世の中は“Strong”に価値がある時代と、“Good”に価値がある時代が存在する。
リーマンショックまでは、新自由主義が持て囃され、明らかに、Strong優勢であった。
世界を動かしているいちばんキーになる原理が、競争原理なのであって、強い人はますますとんでいくというトレンドがむしろ当然かつフェアであると考えられていた。
しかし、リーマンショック以降、雰囲気が一変した。日本では3.11以降と言ったほうがよいかもしれない。
人間の根源的な価値とは、莫大な利益を得ることではなく、何らかの“Good”を成すために生きているのであり、そこにこそ究極の価値がある。企業も団体も政府もひとりひとりの人間も、それぞれの本質から帰結するなんらかのfor Good を志向すべきだ、という価値観である。
街中でも、「世界をもっと良くしたい」「みんなの役に立ちたい」というようなコトバを、多くの人が普通に語るようになっている。特に若い人たちはごく自然に。

いやぁ、おっしゃるとおり。

つまり、 for Good を創造する仕事こそ、これからのクリエイティブディレクターの仕事であると。

そして、その考え方は広告にとどまることなく、世の中自体を変えていく影響力を秘めているのだ。

電通のような大企業をのぞけば、まだまだクリエイティブディレクターの役割を広告の範囲でしか見ていない会社が多いように感じる。そして何よりクリエイティブディレクター自身が自分を過小評価しているような気がしてならない。

広告の枠から飛び出せば、新たな世界が広がっている。そしてクリエイティブディレクターの能力を企業が経営に活用することができる、そんな時代がやってきたのだ。

クリエイティブディレクターにとってはまさに千載一遇のチャンスの時なのである。そんな思いを新たにした、古川氏の渾身の1冊であった。

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なぜ売ってはいけないのかがわかる。高級ブランドに学ぶ「売らずに売る技術」。

ライター・編集者の小山田裕哉さんが書いた「売らずに売る技術」を読んだ。



久々に文句なく人にすすめたくなる1冊。「売り込んだら売れない」を信条に、ここ10年ほどビジネスのあり方を研究してきた私にとって、あらためて「売る」ことの奥深さを教えてもらう1冊に出会った。


本書の前提となっているのが、今が企業にとって「売ろうとして売ることが難しい」時代にあることだ。
いささか逆説的であるが、そんな時代にどうしたら「売れる」のか、そしてそのために企業が何を考え、どのように振る舞うべきかが本書での小山田さんの一貫したテーマになっている。

本書が他のブランディング本と決定的に違うのは「ラグジュアリーブランド」を題材に選んでいる点。

なぜ小山田さんがラグジュアリーブランドを選んだのか?
理由は、ラグジュアリーブランドは、ブランディングの本質である「安売りせずにどうやって売るか」を追求しているからだそう。
確かに安易に価格競争に走らないからこそ、他者との違いを作る独自の物語や世界観がより重要になってくるに違いない。そしてそれこそがブランドを決定づける重要な要素なのだ。


さて。今ラグジュアリーブランドの世界では、大きな地殻変動が起きている。
その最大の原因は、デジタル化の進展、そしてスマートフォンとソーシャルメディアの台頭。
小山田さんは、ここ10年ほどの間に、そのパラダイムシフトを取り込めたブランドと取り込めなかったブランドの2極化が起きていると指摘する。

中でも象徴的に紹介されているのがバーバリーの再生。デジタルの価値観をどのように受け入れるべきか頭を悩ませている経営者、幹部には実に参考になる話である。


本書の中で、特に私が興味を覚えたのは、第4章。人々がブランドに求めるのは「お買い得」か「信頼」か。

「ソーシャルグッド」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
「ソーシャルグッド」を直訳すると「社会に善い行い」、ラグジュアリーブランドがまさに今競い合っているのは、「ソーシャルグッド」によるブランディング。そしてそのブランディングこそ、今消費者を動かす最大のプロモーション、まさに著者が言う「攻めのブランディング」なのである。

それが可能になったのは、先にも書いたソーシャルメディアの影響力。ソーシャルメディアの上では偉い経営者も昨日入ったばかりの社員も対等の関係、肩書きではなく共感できるかどうかで評価が決まる。共感の積み重ねで「信頼」を得ることもできれば、ちょっとした不遜な振る舞いで「信頼」は一瞬にして「不信」になってしまう。

ゆえに、今の時代の「ソーシャルグッド」とは、企業の価値観そのものといってもいいだろう。対して、「信頼」がいかに重要か、まだまだわかっていない経営者が多いと感じるのは私だけだろうか。

世の中が「価格」から「価値」の時代に転換しつつある今、その最前線にあるラグジュアリーブランドが今どんなことを考えていてどこに向かおうとしているのかを知ることは、まさにこの先やってくるであろう時代の新たな潮流を知ることにつながる。そういう意味では、経営者にとってもいわば「道しるべ」となるような1冊になるのではないだろうか。読んで損はない1冊である。

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