アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」読後録

もと広告会社、I&Sのコピーライター、現在はフリーランスライターの境治氏が書いた「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」を読んだ。



現在の子育て環境が、いかに厳しいか。そして、その厳しさの原因はどこにあるのか。

そんなテーマで書かれた境氏の初出版本。しかも出版社の三輪舎自体が初の出版だという。
しかし、これが実におもしろかった。そして私自身、あらためて「子育て」という人生の一大作業について、あまりの無知さを知らされることになった。

本書が出版されるきっかけとなったのは、氏が書いたハフィントンポスト日本版での記事が17万いいね!を獲得したこと。そのタイトルが「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」

境氏はこの反響をきっかけに、本格的に「子育て」世代の現実に対して取材を開始する。

そこで見えてきたこと。

簡単にいうと、核家族化により会社というムラと子育てというムラが生み出され、かつてはそれぞれのコミュニティに男性、女性が居座りバランスが保たれていたが、女性の社会進出が進んだことにより、やがて会社ムラに入り込んだ女性が子どもを産むと、それぞれのムラで摩擦が生じることになり、子どもを持った女性はどちらのムラでもいづらくなる。その現実がわかる以上、積極的に子どもを持とうという夢を描けない…出産率が一向に上がっていかない大きな原因のひとつだ。

そしてその現実の背景にあるのが、いまだ会社ムラ中心の世の中であること。政府が出産率向上を掲げても、企業が変わらなければ、出産率は永遠に上がっていかない。夫の子育てへの理解と協力が必要不可欠であるからだ。これが本書での鏡氏の結論といってもいい。この鏡氏の結論に私自身も全面的に賛同する。大手中心に確かに夫の子育てへの参加は環境が整いつつある。しかし、業績が好調な大企業が多い今は良いものの、ひとたび業績が悪化したとしたなら、どうなることか…。
根本的な解決にそろそろ国自体が価値観を変えなければいけない時なのではないだろうか。

ここでは書かなかったが、本書では、そんな世の中にあって新たな取り組みを始めている人たちも多く紹介されていて、着実に世の中が変わり始めている予感もひしひしと伝わってくる。

このスピードがさらに加速するのか落ちるのか、そのためには一人でも多くの人に現実を知ってもらうことが必要不可欠だ。そういう意味では本書が出版された意義は大きい。


スポンサーサイト

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

ソーシャルバリュー(社会価値)で衰退産業に灯りをともす「ファクトリエ」

国内の工場と消費者をダイレクトに結ぶファクトリーブランド「ファクトリエ」を皆さんはご存知だろうか。
(海外には結構あるが、そもそも日本にはファクトリーブランド自体が少ない)

山田敏夫という若者が立ち上げたこのブランド、立ち上げてまだ数年にもかかわらずマスコミで何度も取り上げられ、私自身も以前から注目していた。

そんな彼の初の著書となるのが「メイドインジャパンをぼくらが世界へ」。



そして山田氏が本書で共著者(対談相手)に選んだのが、こちらも日本酒業界に旋風を巻き起こしている平和酒造の山本典正だ。

先日、太田治彦の番組でも取り上げられていた人気急上昇の日本酒「紀土(きっどと読む)」を作っている酒蔵である。

平和酒造についてはまた別の機会に記すとして、今回は「ファクトリエ」について話を進めたい。


さて。
なぜ「ファクトリエ」がそれほど話題になるのか?

サイトをみるとベーシックなシャツが1枚10,000円超。決して安くない、どころか最近の流れからすると結構な金額だ。

しかし山田氏に言わせると、高いどころか生地、仕立てから見ると驚くほど安いといってもよいと。
同品質の従来商品を探すと、おそらく3万円は下らないだろう、自信満々に話す。

その秘密は、ファクトリエが高い技術を持った国内の縫製工場と直接契約しているから。

基本的に、販売は店舗を持たないネット通販のみ。中間コストを極力排除してこそ実現した、この価格なのだ。

話題になっているのはそれだけではない。

実は今、日本の工場で生産されている衣料品はなんと3%程度だそうで、かつては50%を超えていた国内比率が現在はここまで下がっていることに驚かされる。

その結果が、そもそもメイドインジャパンにこだわりたかったというのがスタート時点の山田さんの考えに、衰退の一途にあった「日本の縫製工場を守る」という社会性を持たせることになったのだ。

ここにマスコミがニュース性を見出し、一気に知名度を上げた「ファクトリエ」という構図。

マスコミに取り上げられた反響は凄まじく、記事に取り上げられるたびに販売額を伸ばし、本書によれば毎年400%の成長を続けているらしい。

けれど国内か否かより、もっと驚かされることは、創業直後から100年企業になることを想定してビジネスを進めていること。
売上がやがて踊り場を迎えることも想定済みで、重要なのは安易な拡張を求めないことと言い切る。

縫製工場と日本酒の酒蔵。

どちらも衰退産業にあり廃業も相次ぐ分野だ。その中で生き残るということ自体、並大抵のことではないだろう。しかも、ただ生き残るだけでなく、社会への貢献をビジネスの中心に据えて挑戦を続けていることが素晴らしい。問題なのは、業種の成熟度ではなく、想いの強さがあるかないかなのだと気づかされる。

彼らのユーザーは間違いなく彼らの想いに共感して購買するファンともいうべき人。彼らの共感の輪がやがて波紋のごとく広がり次のファンを創る。

これぞ、私がこだわる「ソーシャルバリュー」の力、中小企業こそ「ソーシャルバリュー」で輝く、まさにその好例である。

タナベ経営発。食品ビジネスの「今」を俯瞰できる1冊。

タナベ経営の小山田眞哉氏が書いた「本当は〝おいしい〟フードビジネス」を読んだ。

タナベ経営といえば、先日のメッセナゴヤでもブースを出していて少しお話をさせて頂いたが、以前と比べればかなり企業規模のハードルを下げて当地区でも積極的に展開をしている、あらためてその思いを強くした。



タナベ経営のその取り組みを最初に知ったのは、2年ほど前に出版された「ファーストコールカンパニー宣言」だったように思う。

企業規模ではなく、ビジネスモデルや技術の独自性で100年先でもでいちばん最初に選ばれる会社をファーストコールカンパニーと呼び、その共通項と具体的な企業事例を紹介したものだ。

本書はその流れを汲み、食品業界に特化して書かれた新刊。

本書で特に興味深く読んだのは、第2章「ナンバーワンブランド事業の創造」、2.顧客価値のストーリー化だ。

ファーストコールカンパニーを目指すなら、ニッチトップを狙うべきと書かれた前段に対して、ではどうやってナンバーワンのブランドポジションを獲得するか?ブランディングについて書かれた章。

そのために重要となるのが、一人歩きしてくれるストーリーであると小山田氏はいう。

①自社の価値観や商品の世界観を物語として訴求する物語マーケティングの重要性、

②価値の裏付けを「五感」で訴求する五感マーケティングの重要性、

そして、
③ユーザーの利用場面に応じた価値を訴求するシーンマーケティングの重要性を説いている。

物語も五感もシーンも。ポイントは右脳的思考にある。

タナベ経営は歴史あるコンサルティングファームと認識しているが、それだけに右脳の重要性を説く本章は印象に残った。

ある意味、論理や分析を中心とした左脳的志向のコンサルティングの限界を示唆しているのではないだろうか。


さて本書には、タナベ経営が携わる食品関連会社10社も登場する。

その中の一社が柿安本店。

創業時から今のポジションに至るプロセスが紹介されており、成長初期にTVCMなどの広告に携わったものとしては感慨深い。

食とは人の生命を維持し、未来への成長を支えるもの、さらには人生を豊かにするもの。それだけに質の高い食品ビジネスを推進する企業の意義は大きいし、これからますますその重要性は高まるだろう。

私自身、現在は食品ビジネスに関する仕事はしていないが、もし携わるとしたら真っ先に読んでもいい、食品ビジネスの今を知ることができる、なかなかの一冊である、そんな感想を抱いた。


テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。