アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

3000億円の事業創造、基点は社会課題の解決。

ドリームインキュベーターの三宅孝之氏と島崎崇氏が書いた「300億円の事業を生み出すビジネスプロデュース戦略」を読んだ。



ドリームインキュベーターは、創業以来15年に渡り、大掛かりな事業創造である「ビジネスプロデュース」を多数手がけてきた会社。

そのドリームインキュベーターの「ビジネスプロデュース」の定義は、ズバリ3,000億円の事業創造だそうだ。
事業といっても自分が関わってきた事業とは桁が違うだけに正直想像がつかない。ここまでの規模になると、個人のアイデアレベルでは実現不可能な領域である。

著者いわく、それを実現するためには「社会的課題への着目」と「業界の枠組みを超えた発想」が不可欠だと。

本書ではドリームインキュベーターがそんな事業創造を多数手掛けてきた中で見えてきた方法論が紹介されている。

第1章は、日本企業が今置かれている時代背景を分析。
第2章は実際にプロデュースをした事例の紹介。
第3章は、ビジネスプロデュースの進め方、注意点を5つのステップに分けて解説。
第4章は、より自分事として理解してもらうためにビジネスプロデュースの架空ストーリーとして疑似体験。
最後、第5章ではビジネスプロデューサーになるための要諦と活躍のための要件のまとめ。

以上であるが、私が特に興味を覚えたのは、本書において何度も繰り返し登場する「つながる」ことの重要性。

「つながる」といえば、ITの活用が頭に浮かぶが、本書でいう「つながり」とは単にそれだけでなく、自社の壁を越えた競合との連携や、場合によっては業界の垣根を越えた、まったくの異業種との連携を指す。

結局のところ、日本企業特有の自前主義や過去のしがらみに縛られた業界意識を払拭できなければ、規模の大きい事業創造などは実現できないということだろう。

それは個人にもあてはまる。これからのビジネスマンにとっても内向きで常識的な発想は淘汰され、その価値観を変え積極的に未知なる世界とつながっていかない限り、企業の中で生き残っていくことはより難しくなるのではないか。

3000億円の事業創造。
それ自体はほとんどの人にとって蚊帳の外の話かもそれないが、とはいえビジネスプロデュースの視点は、すべてのビジネスマンに求められる能力であることは間違いない。

そういう意味では、ビジネスプロデュースを体系的に、しかも俯瞰的に学ぶことのできる稀有な1冊の登場と言える。


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自社が何のために存在するのか。常に問い質すことこそ、理念経営の真髄。

株式会社エフシーエス社長、藤本繁夫氏が書いた「オーナー社長のための理念経営 4つの戦略」を読んだ。



かつて、労働集約型で典型的な下請け企業だった著者自身の会社。
短納期、低価格、そしてお客様からの際限ない要求…利益が上がらない構造にあった状況から、どうしたら脱することができるか。

その課題に藤本氏が真っ正面から取り組んだ結果、わかったことは、組織内の「ダブルスタンダード」の横行。

役員や中間管理職からは、ルールをきっちり遵守しており何ら問題ない、の報告。しかし実態は、現場だけが知っている「裏ルール」の蔓延だったそうだ。
この悪しき習慣が、お客様とのトラブルを引き起こし、仕事の効率を低下させ、結果的に利益率の低下を招いていた…

どこにもある話と片付けてしまえばそれまでだ。
より監視を厳しくし裏ルールが蔓延らないようルールを徹底させる、当然ではあるが、しかしそれでは根本的な問題解決には繋がらない。

そんな状況で、藤本氏が選択した起死回生の策が、「理念経営」への転換である。

結果から言うと、社員数が減少したものの、翌年には早くも売り上げは126%UPし、会社再建に成功したという。

苦境にあり、理念経営を取りれようとする企業は少なくない。
しかしながら、大半は長続きせず、いつの間にか以前のマネジメントに戻ってしまうのが現実のようだ。

成功と失敗を分かつものは?成功に導く、本当に大切なことは?

理念経営は、取り組むだけで答えがすぐ出るものではない。事業は人が行うものだから、業務を遂行する人に、理念が浸透する(させる)ことが何より重要なのである。

本書で藤本氏は、理念経営を成功に導くための4つの戦略を紹介している。

中でも中核的な戦略が、「経営計画書」の作成と、徹底的な社員間での共有。

経営計画書は、ビジョンから具体的な行動計画など、経営に必要な事項を網羅した、いわばバイブルとも言える存在だ。
中でも藤本氏が強調するのが、ビジョンにおける社会貢献の視点。

大切なのは、自分たちの会社が何のために存在するのか。どのような世の中の課題を解決できるのか。そこを考え直すだけでも、結果は違ってくる。業務に追われているととかく忘れがちなことであるが、それだからこそ社会性を持った理念の共有が重要になるのだ。

個人的に本書で心残りだったのは、経営計画書の記述の掘り下げ。もう少し具体的に記して欲しかったが、そのあたりは自作に期待したい。

理念経営。
そんなきれいごとで会社の業績は回復するのか?

その答えはイエスでもありノーでもあるだろう。
最終的には、経営者の価値観、それに尽きると思う。愚直に継続的に社員の幸せを心底求めれば、顧客が見放さない。

企業の価値とは、顧客が認めてはじめて価値となるのだから。

お客様をつなぎ社内をつなぐ。大西改革の要はスタイリスト。

三越伊勢丹ホールディングス社長、大西洋氏が書いた『三越伊勢丹ブランド力の神髄 創造と破壊はすべて「現場」から始まる』を読んだ。



大西社長の尊敬に値するところ、それは何より企業の顔として積極的にマスコミなど表舞台に登場しているところだろう。

なにはともあれ三越伊勢丹という老舗の企業体に変革をもたらすという、強い意志の表れであると評価したい。

さて三越伊勢丹にいちばん欠けているもの、それは取りも直さず「現場力」と大西社長はいう。

ご承知のところかと思うが、以前より伊勢丹では、「売場」ではなく「買場」と位置づけ、現場主義を貫いてきた。それが三越との統合を経て、いつの間にか顧客視点を忘れ、大西氏が社長に就任した時には売上は悲惨な状況に陥っていた。そこで指名されたのが大西氏であり、与えられた命題はずばり「改革」である。

本書によれば、大西氏の強みは現場での体験が圧倒的に豊富なこと。

その現場体験を活かし、大西氏が改革の中心に据えたのが、スタイリスト(販売員)の待遇改善だ。

これまでの百貨店でいうと、脚光を浴びるのは得てしてバイヤーで、スタイリストの存在は冷遇されていたような気がしないでもない。

しかしながら顧客との接点はスタイリストが担うわけで、大西氏の考え方は至極当然な考え方といってもいいだろう。

こうしたスタイリストの待遇改善を手始めに、大西改革はすべて現場最優先。
そしてその改革は、未来すら的確に見据えている気がする。

そんな中で唯一大西氏の迷いを感じたのは、ネットについて語った箇所。

すでに大きな売上は作っているものの、いまだリアルな店頭とのカニバリを気にしているところは、少し時代錯誤ではないか、ネットの位置づけはもっと先に行っているのに、と残念に思った次第。

GMSが大きな転換点を迎えている今、百貨店の存在は再び脚光を浴びつつあると感じている。
しかしそれがかつての場所貸し的な意識に支えられるものであれば、再び凋落の道を歩むのは必然だ。

どこまで自己を否定し百貨店そのものの存在意義から見直すことができるか・・・

本書を読む限り大西改革のスタートは快調のようだ。あとは今後どこまで創造と破壊が進められるかであるが、いずれにせよ、大西改革の今後に期待したい。

あなたの会社の「らしさ」は明確か。

株式会社フリーセル社長、木村裕紀氏が書いた「ブランドファースト」を読んだ。



フリーセルは、Webマーケティングを皮切りに現在は企業ブランディングに注力する会社。本書はその根幹となる考え方、自社が実践する手法についてまとめられた、木村氏はじめての著書となる。

本書で展開されるメッセージはシンプルだ。
ブランドとは企業の「らしさ」である、と木村氏。

「らしさ」とは独自性であり、他社との違いだ。「らしさ」を見直して、適切なコーポレートメッセージに変えて、社員間で共有、さらに顧客、見込み客へ発信していく。その結果として、売上、利益が付いてくるというのが木村氏の主張。

ともすると売上、利益を求めるあまり、売ることがすべてに優先され、売上のためなら手段を選ばず、企業のらしさなど一切関係なしという企業も時折見受ける。

そこまで行かないとしても、広告とホームページがまったく別に企業に見えてしまうケースなどは、まさに「らしさ」が明確になっておらず、表現がぶれてしまう、ブランディングをなおざりにした悪い見本と木村氏は指摘する。

本書において私が注目したのは、ブランディングの考え方をボウリングのピンに見立ててわかりやすく解説している点。

センターピンがCI(コーポレートアイデンティティ)=らしさ。このピンの後ろにインナーブランディングとアウターブランディングの2本のピンが並ぶ。そしてその後ろに…

「らしさ」が明確になれば企業ブランディングは雪崩式に円滑に進む。あくまで出発点は「らしさ」というわけだ。

中小企業にとっては厳しい状況が続く昨今であり、目の前の売上が優先されることは間違いないが、肝心なのは、あくまで売上はお客様次第だということ。

かのコトラーの名言に『今日の売上と引き換えに明日の顧客を失うことがよくある』というものがあるが、今こそ「らしさ」を見直して地に足のついた持続的成長を考えてみる、そんなタイミングなのではないだろうか。

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