アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

原始時代2.0。ハイテク・バーバリアンだけが生き残る?!

もと日本版ワイアードの立上げ人、現インフォバーン社長の小林弘人氏と日経ビジネスのプロデューサー柳瀬博一氏の対談による「インターネットが普及したらぼくたちが原始人になったわけ」を読んだ。


本書のテーマはこうだ。

原始時代から時代を経て変わったのは「人間」ではなく、人間が積み上げてきた「文明」である。

原始時代、人間は数十人からせいぜい百人単位の小集団で暮らし、動物を刈ったり、魚を採ったりしていた。
時代は変わって現代、インターネットの時代になり、ブログやSNSのおかげで再び原始時代に立ち返ったかのような「小さな村」をいくつも作り始めている。村の数は無数に増えたけど、本質は「原始時代」と変わっていない。

それでは「小さな村」が無数に誕生する時代に、メディアや広告やコミュニケーションは一体どのようになるのだろうか?

そんなテーマをもとに二人のクエスチョン&アンサーが展開される。

かたやコンテンツマーケティングを推進するIT系企業の経営者。かたや日本を代表するビジネス情報誌のプロデューサー。
ふたりの相性もよく、ジェットコースター的に、「今」という時代、そして来るべき「未来」が次々と解剖されていく。オーバーにいえば瞬きする時間も惜しいくらい、私にとっては読み応えたっぷりの1冊であった。

読み終えた今、私の中で、くっきり浮かび上がってきたキーワードは、ずばり「個人」が主導権を握る時代。

つまり、これからの企業も、そしてメディアもビジネスも、すべては「個人」が中心となって展開されるというのが、ふたりの論調である。

たとえば本書で、会社の「属人化」という言葉が登場する。

これからの企業は、顔の見えない大企業の時代は終わり、個人の顔が見える企業が生き残っていく。そのためには、企業側にも「個人」の力を尊重する新しい価値観が求められるはずだ。ある意味、先日、企業人を経てノーベル賞を取った青色LEDの中村氏の例はその先駆けと言っても良いだろう。
企業というよりはさまざまな個性がある共通の目的のために集まった「小さな村」、そんなイメージを抱いている。

もちろん当然、個人側にも変革が求められる。

今までのように大企業におんぶにだっこの生き方はもう成立しないのだ。個人はスキルを含めた自身のパーソナリティを磨き続けなければならない。

本書では、そんなこれからの「個人」のあるべき姿に対して「ハイテク・バーバリアン」というキーワードを呈示している。

メールやブログ、SNSを自在に操りながら、原始人的感性を持った人。21世紀のスーパーゼネラリストと言っても良いかもしれない。これまでのような分業的な役割から複数のスキルを組み合わせて、「小さな村」を渡り歩き、新たな価値を創造できる能力が、より求められるようになると思う。

ウエブとSNSの発展により、原始時代に回帰して世界が「150人の村」になっていく。
その時、自分自身はどう考え、どう行動すべきか。そろそろ準備を始めておくべきタイミングなのかもしれない。

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近大マグロだけじゃない、「近大」の大躍進は続く。

作家・コラムニストの山下柚実氏が書いた『なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか』を読んだ。



少子化の進行による影響が、少しづつ顕在化してきている。
たとえば大学がそうだ。受験者が激減、立ち行かなくなっている大学も増えてきているという。
さらに2018年には、いよいよ18歳人口が本格的に減少に転じる。
そうなった時、はたして大学経営はどうなるのだろうか。

そんなタイミングで、学校関係者にとって今後のヒントのひとつとなりそうな1冊が本書である。

私の印象で恐縮であるが、古くは朝潮、赤井秀和、最近でこそ水泳の寺川綾の存在が有名であるが、もっぱら汗臭い運動選手の多い大学、正直この本を読むまでそんな見方をしていた。

ところが、である。
本書によれば、その近畿大学が最近は女子高生に大人気の大学となり、ついに2014年度の入学試験においては志願者数が明治大学を抜いて「全国1位」になったそうだ。

変われば変わるもの…

「あの大学」がどのようにして、今のポジションを獲得できたのか、それが本書のテーマ。

結論から言うと、当然ながら突然そうなったわけではなく、そこには周到な計画と長年に渡る徹底した取り組みがあった。

遡ること、20年。
近畿大学は560億もの多額の借金を抱え息絶え絶えであったが、その時に財務改革に乗り出したことがその後の大躍進のきっかけになったというから皮肉なものである。

借金を返済するまでは学部開設は行わず、収入と支出の管理を徹底した。その結果、2010年には見事完済できた。

しかもその間、財政面だけでなくあらゆる面での見直しを怠らなかった。

その取り組みの中で私が特に注目するのは、情報発信による差別化。
その経緯は第4章に詳しいが、そのきっかけとなったのも財政難にあったというから驚きだ。

財政難により広告費を大幅に削らなければならなくなった。

どうしたら広告費が削減できるか、苦悩の末、辿りついたのが自前主義によるPR。さまざまな学内のリソースを活用して、特に記者発表を充実させた。
PRは記事として取り上げられなけば意味がないだけに、取り上げられるためにアイデアを存分にひねり出した。それが結果として当たったのだそうだ。
その究極の形が、知らない人がいない「近大マグロ」のブランド化として、花開いたのではないだろうか。

本書は、大学改革についてまとめられた1冊であるが、実はすぐれたビジネス書でもある。
いかに顧客視点で考えることが重要か、自社のマーケティングに応用できるヒントが満載だ。

ちょっとしたことに、気付けるか気付けないか。その積み重ねが長い年月においては、大きな差になってくる。
日々の意識、行動の大切さを、あらためて考えさせられた。

「社長、そのデザインでは売れません!」本書でも川島節、絶好調。

ifs未来研究所所長、川島蓉子氏が書いた「社長、そのデザインでは売れません!」を読んだ。



「ビームス戦略」「ユナイテッドアローズ」「伊勢丹な人々」などなど、ファッションブランド系の取材モノを書かせたらこの人の右に出るものはいないと、私がかねてより大ファンである著者の最新刊。

本書のもとになったのは、日経ビジネスオンラインの連載「ダサい社長が日本をつぶす!」。
このところの日本のデザインがダサくなっているように感じた著者が、その原因がどうも「ダサい社長」にあるらしいと推測、それではその張本人の社長に直接話を聞いてみようと始めたそうだ。

とはいえ、ダサい社長に話を聞いても始まらないし、笑い話にもならない。

それではということで、対極にある「かっこいい社長」にインタビュー、選ばれた面々が以下の6人である。

カルチャーコンビニエンスクラブの増田宗昭社長、
三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長、
伊藤忠商事の岡藤正広社長、
クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏、
カー&プロダクトデザイナーの和田智氏、
NTTメディアラボ副所長の石井裕氏。

企業側のデザイン決定権者と外部からデザインを提供するクリエイター、あらためて説明するまでまでもなく一家言を持つひとばかり。

川島氏の絶妙な取材力も手伝って、ここでしか聞くことができない大変興味深い話が引き出されているように思う。

さて読み終わってあらためて思うこと。

それは、語り口は違えど、デザインに対する卓越した考えを持っているということ。そして、それが流行に惑わされることのない不変的な考え方であることだ。さらに実行レベルにおいては一貫して迷いがない。そのあたりが6人に共通している。

ともすると、デザインはわからない、苦手のひと言で話を避けようとする経営者も多い。それに反して、前述の経営者3人は、デザインを自社の経営戦略の最上位に置いていると言っても過言ではない。しかも感心するのは、デザインベースのマネジメントを実践して着実に成果を上げていることだ。

商品がコモディティ化して、ただでさえ他者との違いが打ち出しにくい時代。だからと言って手をこまねくだけではますます窮地に陥るだけ。さらに問題なのは、売りたい一心で価格競争に足を突っ込んでしまうことではないだろうか。
こうなると待っているのは破綻への道、なんとしても避けなければならない。

社長自身が今さらデザインセンスを磨くと言っても現実的ではない。となれば大切なのはデザインの価値を認めることではないか。そして、外部に信頼できるデザインブレーンを持つことをおすすめしたい。

デザインの力を過小に評価している経営者が多い中、今取り組めば大きなイニシアティブを握れるはずだ。
そのきっかけを気付かせてくれる1冊として本書の持つ意味は大きいと考える。


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