アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

やがて産廃が宝の山に。共感を呼ぶブランドはこう創る。

石坂産業株式会社、代表取締役の石坂典子氏が書いた「絶体絶命でも世界一愛される会社に変える!~2代目女性社長の号泣戦記」を読んだ。



今、大企業をはじめ、政府首脳、中南米・カリブ10カ国の大使など、見学に訪れる人が後を絶たないという産廃会社、石坂産業。その2代目社長が本書の著者、石坂典子氏である。

今でこそ、産業廃棄物処理という職業が社会的に認知されるようになったが、石坂氏が社長を実父から引き継いだ12年前は、地元ではダイオキシン騒ぎの真っ最中で「石坂は出ていけ!」のオンパレードという、まさに逆風吹き荒れる中での継承だった。

社長就任後、どん底から脱出したいという一心で取った方策についていけず、社員の4割が去ったという時期もあったらしい。

それでもめげず、今日まで努力を続けてこれたのは、ひとえに「永続企業」になるという強い想い。ぶれない心が、関わる人々の心を動かし、今では日本を代表する産廃処理の会社としてゆるぎない地位を築いたのだ。

本書を読んであらためて感心するのは、この12年に起こった出来事は、どれも社運を左右するような難題ばかり。よくもまぁ、克服できたものだ。

しかも、その難題を前にうろたえるわけではなく、また取った手段は奇をてらうわけでもなく、あくまで王道を行くものだった。以下にその取り組みをざっと紹介してみよう。

【12年間の取り組み】

・15億円の焼却炉を廃炉に。燃やさない産廃会社をめざす。
・ISO3統合を1年で取得。
・巡回指導を徹底し巡回指導報告書を12年間欠かさず。
・「新・里山資本主義」の導入。工場周辺の里山を宝の山に。
・地域の人が集まる夏祭りを主催。
・「価格評価」から「価値評価」の企業風土へ。

いかがだろうか。

その中でも石坂社長が大切にしているのが、地域との関わりかた。

「新・里山資本主義」の取り組みに見られるように、工場の敷地面積の8割を事業と関係ない環境保全やコミュニケーションスペースとして地域に開放している。しかも管理のために専任の人間を何人も抱えているという。

経営だけを考えれば、それはコストであり、利益確保のためにはまったく意味をなさないと言っても良い。しかしながら、石坂社長にとっては、それこそ経営の根幹をなすものであり、そのかかわりが、地域の共感を呼び、業界のレベルを上げ、最終的に自分たちの利益として還ってくると頑なに信じている。

儲けることを目的とした企業が多い中で、あえて儲けない道を選択した石坂氏。いや選択したという言葉は不適切かもしれない、なぜならその選択こそ、石坂氏の人生観であり、仕事観であるからだ。

石坂氏を動かすのは、強い想い。その想いが社員を動かし、顧客を動かし、やがて世の中を動かすことになる。
こんな企業なら、諸手を挙げて応援したくなる、そう考えるのは私だけだろうか。


ユニクロ1億人の顧客を魅了する服のデザインとは。

ファッションデザイナー、滝沢直己氏の書いた「一億人の服のデザイン」を読んだ。



イッセイミヤケのデザイナーを経て2006年に独立、以降フランクフルトバレエ団のコスチュームデザインやユニクロのファッションディレクションなど、従来の枠を超えた幅広いステージで活躍し中である。

本書は滝沢氏がこれまでに経験したさまざまな体験をもとにまとめられていて、興味深いエピソードが心をときめかせる。

たとえば、イッセイミヤケ時代にアップルのスティーブ・ジョブズからTシャツの大量発注を受けた時のジョブズ氏のこだわり、クリエイティブディレクター佐藤可士和氏とプロジェクトを組んだ時のに経験した佐藤氏の緻密さ、今や世界的なアーティストとなった村上隆氏とのツールづくりにおける激しいバトルなどなど…ページを送るのが楽しい1冊となった。

しかしながら全体を通して伝わってくるのは、ファッションデザイナーという仕事がクリエイティブなだけでなく非常に厳しい仕事であること。
それだけに当然ながら誰にでもできる仕事ではないということだ。

特に一流といわれるステージに立つ人は、対峙する人も一流の感性を持っている。

それだけに、時に感性がぶつかりあう激しい現場に出くわすことになる。

先に書いたジョブスのエピソードはその典型だ。

イッセイミヤケのTシャツが大のお気に入りであるジョブズ氏から数百枚のオーダーをもらい、採寸後に納めたのだが、色がオーダーしたものと微妙に違うということで全数返品されてきた。確かに確認してみると指摘は正しい。あらためて作り直し納め直したとのこと。普通の人なら気付きもしないようなほんの些細な違い。
このこだわりこそ、アップルの製品づくりの原点に通ずると、このエピソードを読んで“なるほど”とあらためて感心した次第。

三宅一生氏をはじめ、ファーストリテイリングの柳井社長、その他多くの経営者と直接対話し、そのつど最適な解を探してきた滝沢氏。それだけに経営者のデザインに対する価値観に対しても、一家言持っている。 

それを象徴するのが本書に登場する以下のくだり。

「いわばデザイナーには、自分の美学に沿う創造的視点と、経済的視点の両方が必要だ。ならば同様に消費者の満足を追究する以上、経営者にだってデザイナー的な発想が必要なのではないか。」

滝沢氏は経営において、デザイナーを育成するデザイナーマネジメントが必要と繰り返し強調しており、これからの日本企業の重要な課題とも言っている。

本書の最後を滝沢氏はこう締めくくる。

「美しいか美しくないか。売れるか売れないか。経営者もクリエイターも、この二つの視点を持ち合わせなければならないと思うのです。」

1億人の顧客を持つユニクロでファッションディレクターを務めた滝沢氏だけに、この言葉の意味は深い。

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CS(顧客満足)は女子力で決まる。

法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科、小川孔輔教授が書いた「CSは女子力で決まる!」を読んだ。



安倍政権の成長戦略における重要なピースの一つが、女子社員の幹部・取締役への登用。
近い将来、上場企業での義務化も視野に入れているようだ。

しかしながら、その機運が高まるずっと前から、すでに女子社員の働きやすさ、従業員満足を追求して、着実に成長している企業もある。

本書で紹介されているのは、そんな、従業員満足と顧客満足の両立を計っている最先端企業7社の事例。

従業員満足=顧客満足。

お客さまと直接接触する機会が多い小売業では当然のことだと思うが、しかしながら、意外と従業員への対応を疎かにして顧客満足だけを追求している企業がまだまだ多いような気がしている。

従業員満足というと思いだされるのは、ちょっと前に話題になったワタミやゼンショー。
業績的には急成長を実現しながらも、従業員やアルバイトからそっぽをむかれて窮地に追い込まれた。
それだけに従業員満足はますます経営の重要な要素になってきているのは間違いないだろう。

本書で紹介されている企業は次の7社。

クロスカンパニー、ヤオコー、シンガポール航空、オルビス、ロック・フィールド、呉ベタニアホーム、劇団四季。

いずれも女性が働く場所として魅力がある、今人気の企業だ。

本書によれば、7社に共通するのは次の4つの領域での積極的な取組み。

(1)経営理念の浸透とリーダーシップの発揮
(2)従業員のモチベーションづくりと教育研修制度の充実
(3)顧客サービス対応の仕組みづくり
(4)科学的なサービス管理手法の導入

私が特に感心するのは、いずれの企業も徹底的に従業員視点、顧客視点であることだ。

たとえば女性社員の出産前後での雇用の考え方。

子育てに集中できるように休業制度や短時間労働制度を柔軟に取り入れている。しかも、きちんと成果につながるように仕組みから考え尽くされているから尊敬に値する。
モチベーション高く長く勤めてもらうことが会社にとっても利益につながると考えてのことだ。

冒頭のアベノミクスの話に戻るが、女子社員の取締役を増やすという発想そのものが女性差別と思えなくもないが、とにもかくにも女性が企業の中での発言権、決定権を高めることは、幸せな社会を作る意味でも大いに賛成である。

大切なのは、経営者の気付きだろう。その意味で本書はまさにタイムリーな1冊と言えるのではないだろうか。

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