アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

二つ三つの才能を並行して走らせる新しい働き方、モジュール型ワーキング。

多摩美術大学教授にしてクリエイティブディレクター、さらにはコミュニケーションコンサルタントと八面六臂の活躍を見せる佐藤達郎氏が書いた「社畜もフリーもイヤな僕たちが目指す第三の働き方」を読んだ。



時間、やりがい、収入を自由に組み合わせる、これからの働き方。それが佐藤氏が提唱する「モジュール型ワーキング」であり、その可能性を余すところなく紹介するのが本書だ。

私自身の感想としては、この先の働き方の主流になると兼ねがね思っていたところ。そんな折も折、佐藤氏がタイムリーにまとめてくれた、そんな思いを抱いている。

ある意味、モジュール型ワーキングを推進せざるを得ないと思う理由の一つがインターネットの進展だ。

インターネットが進化すれば、売り上げに占める人件費比率の大きい大企業は、今以上のイノベーションが実現できなければ、いずれ利益で人件費を吸収できなくなるのは必然だ。

当然、終身雇用は夢のまた夢で、働く人も新たな働き方、モジュール型ワーキングを模索せざるを得なくなるというわけだ。

さて、著者の佐藤氏、前身は広告代理店ADKのコピーライター、クリエイティブディレクターである。

広告業界では、とかくクリエイターの定年は40歳などと揶揄されるわけだが、案外的を得ているかもしれない。柔軟な思考がベースとなるわけで、長年の垢がたまってくると新鮮な発想自体が難しくなってくる。もちろん仕事の中には、経験が求められるものもあるが、企業内のクリエイターは、適度な新陳代謝がなければ利益が合わなくなってくるわけだ。働き方も変わらざるを得ないだろう。

本書では、具体的にモジュール型ワーキングを実践できるよう、タイプ別に豊富な事例、ワークシートが用意されている。

二つ三つの仕事を並行して動かして行くとなると、一見メインの仕事がなく、細切れ仕事の寄せ集め的な印象を持つかもしれないが、それこそ古い価値観にとらわれていると自身を戒めるべきだ。

時代は絶えず新陳代謝を繰り返している。昨日までの常識が明日からの常識として通用するとは限らない。

そういう意味では、一人一人の才能を花開かせるモジュール型ワーキングは大いなる可能性を秘めている。

スノーピーク、新潟の片田舎から世界に羽ばたくミッション経営の真髄。

アウトドアブランド、スノーピークの山本太社長が書いた『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』を読んだ。



新潟県の燕三条という田舎の中の田舎に本社がありながら、かのアップルも見学に来るという、今世界が注目するアウトドア用品の企業である。

本書は、その経営に携わる山本社長のミッション経営の真髄を紹介する、自身はじめての著書。

世界に通用するアウトドアブランドでミッション経営となれば、まず最初に名前が挙げられるのが、イヴォン・シュイナードが率いるパタゴニア。彼の著書『社員をサーフィンに行かせよう パタゴニア創業者の経営論』で彼の独特の経営哲学を知った人は多いのではないか。

そんなパタゴニアに負けずと劣らない独自の企業理念で、日本だけでなく今や世界に通用するアウトドアブランドに育ちつつあるのがスノーピークなのだ。

新潟県の片田舎ともいえる燕三条に本社があるのも特徴的であるが、通常はデメリットと思われるその立地を逆手に取り、本社の広大な土地にキャンプサイトをつくり、お客様を招いてのキャンプイベントを展開、独自のコミュニティブランドを創造している。

さらに社員はもちろん社長までも、気が向くままにそこにテントを張って寝泊まりし、アイデアを開発したり、商品テストを行ったりと…。

ここまで来ると仕事か遊びか、境目が微妙な感じがあるが、それこそ山井社長がめざす「好きなことだけ!」を仕事にする経営なのだ。

そんな山井社長が本書で一貫して重要視しているのが、社員満足。社員満足なくして顧客満足なし、まさに社員第一主義を実践している、言うは易し行うが難しというのがほとんどの企業の本音だと思うが、これぞミッション経営の真髄を知った気がしている。

さらに山井社長が就任して以来、徹底しているのが安売りをしないこと。それどころか、永久保証を前提に一般的な同等品の何倍もの価格の商品を当たり前のように開発する。安売りは利益を削ることにつながり社員も顧客も幸せにしない、そこにも山井社長の信念が貫かれており、ただただ頭が下がる思い。

こうしてみると、すべての面で一般的な企業の逆をいく発想をとって成長している稀有の企業ではないか。同様の会社と言うともうアップルくらいしか思い浮かばない、大げさではなく本書を読んでそんな気がした。

本当に自分が好きなことだけをできる会社。そんな会社が世の中にある、うらやましくもあり、ほっとする気持ちもあり…
スノーピーク、こんな会社が存在すること自体、私にとっては奇跡。成せばなるのだ。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

企業の時代の終わり、個人の時代の始まり。

「高城剛と考える 21世紀、10の転換点」を読んだ。



5年前、ここまでのスマートフォンの普及を誰が予想できただろうか。
5年後、どんな時代がやってきているのだろうか、もっともっと予測が不可能だ。
それほど、かつてないほど速いスピードで変化しているのが今と言う時代だと高城氏は言う。

そんな中、高城氏は本書で、今後特に大きな変化を見せるであろう10の分野を取り上げ、それぞれの現状や未来像を分析している。

10の分野とは、

仕事
お金
健康

住居
言語と国際感覚
移動
情報・通信
娯楽
国・都市

若い時から今日まで、30カ国以上に住んだという高城氏。
そのあたりの経験が活かされているが、特筆すべきはそこで得た知見の深さだ。

どの章も高城氏らしさがフルに発揮されていて興味深く読んだ。
中でも私が特に注目したのは、「仕事」について書かれた章。

仕事を取り巻く環境がこの先激変するという。その影響を与える要素の最たるものが、テクノロジーの進化。

これまで人が手を欠けていた仕事が、続々と機械に置き換えられ、そのスピードがさらに加速していると。
今一度、自身の仕事を見なおしてみる必要がありそうだ。
それではこの時代に生き残れる仕事とは何なのか?
それに対して高城氏は、2つ以上の仕事に取り組むことが必要不可欠と提言している。
ひとつでは競争相手が多くても、2つの仕事を掛け合わせた能力は、一気に競争相手を少なくし、自分を際立たせる。

高城氏の10の提言は、いずれも「個」の時代が大前提となっている。
大企業でさえ終身雇用は過去の遺物となりつつあるし、会社そのものがなくなることだって十分にあり得る。

生き残るためには、「個」を磨くしかないのだと、あらためて実感させられる、そんな内容の1冊だ。

前作同様、本書でも高城氏は次のような文章で締めている。

「世界を回ると、日本は本当にいい国だといつも気づかされます。それは、僕がいまの日本式システムから一度距離をとったから理解できた最高の発見だと思うのです。気がつかないうちにとらわれているシステムから一度脱却してみること。どんな時代も次の道は、そこからしか開かれないんだと思います。

それは私自身も痛切に感じたこと。私の場合は強制的にシステムの外に放り出されたわけであるが。
しかしながら今にして思えば、新しい道を拓くという意味では、それは大変貴重な体験となった。

同じ場所で働いて、同じ人と話して、同じ道を歩く毎日。
当たり前のように昨日と同じ今日が来るような生活は、ある日突然機能停止になってしまう、そんなリスクがどんどん大きくなってきている。

もしそんな不安にも似た感覚を持てるのであれば、まだ少しは大丈夫かもしれない。
しかし、頭の片隅をちらとでも横切らないのであれば・・・

まずは日常の行動を変えてみること。大きな流れを俯瞰してみることはもちろん大切であるが、それ以上に、身のまわりにある小さな気づきの大切さを本書は教えてくれている、そんな気がした。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

日本企業復活に果たす、広告会社の新しい役割。

電通マーケティングデザインセンター、コンサルティング室長、朝岡崇史氏が書いた「エクスペリエンス・ドリブン・マーケティング」を読んだ。



広告会社の役割が大きく変わってきている。その変化を、クライアント側で対応する人の違いにみてとれる。

以前は広告宣伝部や広報部など、主にマーケティングコミュニケーションを取り扱う部署が主だった。

旧来の広告会社ではマス媒体の取り扱いがメインであったためであるが、大手広告代理店は今はその領域を拡げ、コンサルティングを戦略的な武器として捉え始めている。

コンサルタントとして経営戦略まで踏み込むとなると、相手は当然社長・役員レベルとなる。そして、そうなると広告レベルでは解決できない課題も多くなるだろう。

そんな広告代理店の進化の、まさに最前線の役割を任されている朝岡氏が書いたのが、本書「エクスペリエンス・ドリブン・マーケティング」なのである。

エクスペリエンスドリブンマーケティング=顧客のブランド体験にフォーカスしたマーケティング戦略、と朝岡氏は解説。
特にソーシャルメディアがコミュニケーションの重要なポジションを占めるようになった今、その影響力を取り入れた基本モデルとして「ブランド価値のツインリンクモデル」を本書で提唱している。

ブランド価値には、ストック価値とフロー価値があるとのが朝岡氏の主張。

ストック価値は、広告やプロモーション説いた企業のマーケティング活動で顧客の頭の中で積み上げられ蓄積されていくもの。

対して、フロー価値は、顧客自身がブランドを体験する結果、自発的な行動としてSNSに投稿したり、投稿をシェアしたりする行動。フェイスブックで「いいね!」を押す行為もこれに該当する。

顧客のブランド体験価値が出入り口となり、このストック価値とフロー価値が相互に影響を与え合うように密接につながっていくのが「ブランド価値のツインリンクモデル」の肝なのだ。

朝岡氏の行うコンサルティングは、この「ブランド価値のツインリンク」を自社の商品やサービスを見直すためのツールとして活用することを中核に据えている。

こだわるべきはディテールではなく、SNSをコミュニケーションの重要な要素として組み込むこと。そして、SNSによって変化した顧客の価値観を捉えて事業のあり方自体を根本から見直すことにあると思う。

しかしながら過去の成功体験がじゃまをして、なかなか自社事業の見直しは進まないというのが企業の実情だろう。
だからこそ、この「ブランド価値のツインリンク」モデルは非常に参考にできるのだ。

その他にも現在主流となりつつある「サービスデザイン」の考え方にもいち早く言及しており、この先の広告会社のトレンドを捉えるにも最適な1冊という印象を持った。

広告の未来は決して明るいとはいえない。しかしながら、広告会社の未来は、また別問題だ。経営の中核で、間違いなく広告会社の役割は重要性を増してきている。決して規模ではない、すべては旧来の価値観からの転換ありきだ。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

100年先も愛される会社の条件。

タナベ経営の若松社長と長尾専務の共著による「ファーストコールカンパニー宣言~100年先も一番に選ばれる会社」を読んだ。



ファーストコールカンパニー。

コンサルティング同業の船井総研が提唱する「グレートカンパニー」にも通じるところがあるが、顧客から真っ先に想起される会社と言う意味では、より実務的な感じがしている。

そして何よりファーストコールカンパニーは、同じ会社は二社必要ないという強い意思が出発点になっているのだ。

本書で著者たちは、ファーストコールカンパニー宣言という旗印のもと、長年のコンサルティング経験から、ファーストコールカンパニーの5つの特性を上げている。

1.顧客価値のあくなき追求
2.ナンバーワンブランド事業の創造
3.強い企業体力の意志
4.自由闊達に開発する組織
5.事業承継の経営技術

以上、5つだ。

背景にあるのは、モノ余りでコト不足という時代感。

このような時代には多くの企業が成功体験の罠に陥り、強みが強みでなくなる時代でもあると2人は言う。

確かに日本が好景気に沸いたのは、製造業が花形だった高度成長期、作れば売れる、そんな時代の事業をリードした者たちが今経営者、役員で残っている。モノづくり神話とも言うべき思い込みが、このところの企業の成長を止める原因となっている気がしてならない。

そんな状況に対して、今一度、顧客を謙虚に見つめ、自社の強みを未来志向の新しい「成長エンジン」として磨き直すことを提唱するのが本書のメインテーマ。

著者たちに言わせれば、ファーストコールカンパニーとは「顧客価値を追求し、創造し続ける会社」なのだ。

さて、それでは本書で再三登場する「顧客価値」とは具体的にどのように考えれば良いのか?

著者たちは、ドラッカーの言葉「事業の目的とは顧客の創造である」を引き合いに出し、「事業戦略とは顧客価値の創造である」と再定義し、この考え方を全面的に展開している。

顧客価値とは時代とともに変化していくもの。それだけに、そこから目を背け、自らの変化を恐れると、独善的な経営に陥りやすい。

もしファーストコールカンパニーを目指すのであれば、常に変化する顧客価値を的確にとらえ、自ら変わらなければ始まらないのである。

10年以内に、創業した会社の9割が消えて行くという厳しい時代。
100年後にも選ばれる会社として残るためには、常識的に考えていては生き残ることさえ難しい。

回遊魚のマグロのごとく、しなやかにスピードを持って、ある意味非常識に世の中を泳ぐ、いっそのこと、そんな会社を目指して見てはいかがだろう。



ITが不可能を可能に変えていく。大切なのは「不」を解消したいという強い想い。

JBCCホールディングス株式会社編著、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」を読んだ。



2020年といえば、東京オリンピックの開催年。今から6年後だから、あっという間だろう。
本書のテーマは、その間にITで世の中がどのように変わっていくか?
その兆しとなるITの活用事例を5つの分野に分けて紹介している。

教育×IT
働き方×IT
地域×IT
医療×IT
文化×IT

以上、5分野である。
いずれの事例も知名度も低い中小企業の事例であることに価値がある。それほどまでIT活用のハードルが下がっていることの何よりの証だからだ。

そんな視点でそれぞれの事例をあらためて読んでみると、いずれの事例も、個人の小さな小さな気付き、そして「不」の解消という想いから、始まっているケースが多い。

たとえば、働き方×ITの「YouTuber葉一」事例。

親の収入格差が、子供の教育環境に反映され、受ける教育に差が生じてしまう。
たとえば塾へ行きたくてもお金がないために行けない家庭の子供。彼らの教育難民ともいえる不便を解消するために
生まれたのがYouTuber葉一氏が行っているYouTubeを活用した動画授業投稿だ。

以前の職場である塾の講師をしていた時から、温めてきたアイデアを独立してカタチにした。

それ以外にも、
学校、家庭以外での創造的な学びの場を提供する「CANVAS」の取り組み。
テレワークの普及により転勤族の奥様の働き場を提供する「ワイズスタッフ」の取り組み。
ジェネリック医薬品情報の提供により医療費の適正化をめざす「データヘルス」の取り組み。etc

いずれも、あれば良いだけではなく、将来的に“なくてはならない”そんな事業に育つであろうことを予感される。

「不」を解消して世の中のためになる。
かつて不可能だったことが可能になったのは、一にも二にもITが進化したことによるところが大きい。
個人の想いをITが後押ししてやがて世の中が変わっていく。
そう考えると、未来は決して捨てたものじゃない。

ITの秘めたパワーがより力を発揮してくるのは、まだまだこれからだ。
そういう意味では、2020年はほんの通過点だろう。
恩恵を受ける側に回るのもよし。自ら不の解消に取り組むのもよし。
ワクワクするような未来の到来を、本書は教えてくれている。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

FC2Ad