アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

ITの見えないフェンスが、人を売り場へ導く。バーチャルフェンスマーケティング。

フリージャーナリストの西田宗千佳氏が書いた「顧客を売り場に直送する~ビッグデータがお金に変わる仕組み」を読んだ。



巷では何かと騒がしいビッグデータであるが、実際にどのように活用されているかとなると、まだまだピンとこない人が多いのではないだろうか。

かく言う私も、ツタヤを運営するカルチャーコンビニエンスクラブとヤフーの提携などビッグデータの可能性をニュースでは見聞きしているものの、果たして効果はどれほどのものかとやや懐疑的である。

本書は、そんな状況でのまさにタイムリーな出版であり、ページを捲るに付け、ビッグデータが宝の山であること、そしてその解析技術の進化を、活字を通してでありながらも「目の当たり」にした感がある。

本書のテーマは、ITと製品をつなぐ世界で今どのようなことが起きているのか、その最前線、最先端の取り組みを具体的に紹介し、ひとりでも多くの人に理解してもらうこととある。

スマートフォン、スマートグラス、スマートウォッチ・・・いつでも、どこでもというユビキタスを実現するデバイスに、進化したITが掛け合わされる時、予想もできなかった体験が可能になる。わくわくするような世界の実例が、本書で展開されているのだ。

そんな中で私が特に注目したキーワードが「バーチャル・フェンス・マーケティング」だ。

豊富なビッグデータをもとに、人の行動を予測し、ある場所(=バーチャルフェンス)でその人が求めている情報を提供、売り場へ直送するというもの。

広告の永遠の課題とも言える「ラストワンマイル」がバーチャル・フェンスによって一気に縮められるという、広告関係者にとっては夢のような技術である。

筆者は、ネットの定番とも言えるロングテールの考え方にも一石を投じる。

購買を含めてネットでの行動は、実はマスの情報の影響がより極端な形で反映されるというのだ。
つまりネットが進めば進むほど、情報の選択肢が狭くなり、より商品・サービスへの人気が集中し、それ以外のものはほとんどが目に触れられることなく消えていくらしい。

すぐさま頷くというわけにはいかない考え方であるが、確かに思い当たる節もある。既成概念を疑ってかかる必要がある、その好例かもしれない。

知っているのと知っていないのでは天と地ほどの差がある「ビッグデータ」の世界。より早く気付けばビジネスの大きなイニシアティブを握れるかもしれない。

本書は、まさにそんなヒントが満載の1冊である。

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「武器としてのチーム」を自ら創り出せ。

京都大学准教授、瀧本哲史氏の書いた「君に友だちはいらない」を読んだ。

「僕は君たちに武器を配りたい」「武器としての決断思考」など、出す本出す本がベストセラーになり、一躍時の人となった感がある瀧本氏。最新刊も相変わらずの切れ味、まさに知性のかたまりのような瀧本氏の本領発揮と言った圧倒的な読みごたえだった。



さて肝腎の本書のテーマであるが、タイトルだけをみると孤独を楽しむ方法論を書いた本かと思われるかもしれない。が、実際の内容はその逆。グローバル資本主義の時代を“人として豊かで幸福に生き抜くにはどんな武器を手にすればよいか”、瀧本氏の答えはずばり「チーム=仲間づくり」だ。

「はじめに」で、瀧本氏はその趣旨をこうまとめられている。

・グローバル化した市場で、世界レベルの競争が行われている「グローバル資本主義」は「よりよいものを安く」手に入れたい人間の基本的な欲望に基づいている以上、逃れようがない。

・あらゆる商品、サービスのコモディティ化、そして、人材のコモディティ化がブラック企業が跋扈(ばっこ)する一番の原因である

・人材のコモディティ化を乗り越える方法は、「武器としてのチーム」を自ら創り出すことしかない。

武器としてのチームであるから、友達同士仲良し子良しの世界ではない。自らの役割を明確にし切磋琢磨できる関係、目標に向けて自責で臨める関係だ。参加する個性は多様であればある程、チームとしての可能性は大きくなるに違いない。

瀧本氏はこのチームのあり方の理想形として、冒頭に黒澤明監督の映画「七人の侍」を取り上げている。
瀧本氏が注目したのが、映画での多様な個性を持つ七人の侍の役割。それを仕立て上げたのが黒澤明、橋本忍、小国英男という3人の脚本執筆体制だ。

黒澤映画の特長は、複数の脚本家がそれぞれ同じシーンの脚本を書き合うというスタイル。書きあがった脚本を見比べて、誰が書いたものがいちばんおもしろいか徹底的に話し合い、いちばん良くできた原稿がそのシーンの決定稿になるのだそうである。

こうして、3人が骨身を削るようにして書いた脚本の「いいとこどり」の結晶ともいえるシナリオから世界的名画「七人の侍」が完成したのだ。

チームとはかくあるべき、その最高のお手本をこの「七人の侍」に見出した瀧本氏のセンスには脱帽である。

この他にもチームづくりに重要なポイントが、さまざまな事例とともにこれでもかと紹介されている。

リスクを取るより、リスクを取らないことの方が、よほどリスキーである時代が迫りつつある。大企業とて、終身雇用は夢物語になりつつあるのだ。だから、あえて個人もリスクをとって、自ら人生を切り拓いていく強さが必要になる。とはいえ、ひとりの力では何もできない。だからこそ、チームづくりなのだ。

本書の最後を瀧本氏はこう〆ている。
「他人の作った、作り物の物語を消費するのではなく、自分自身の人生という物語の脚本を書き、演じろ」

「君たちに武器を配りたい」でもそうであったが、瀧本氏の本の読後感は、自分が一皮むけて何か新しい力を得たような前向きな気持ちになれる爽快感がある。

そうだ、チームをつくろう。

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すべてのビジネスには、“サービス”が内包されている。

グロービス経営大学院教授の山口英彦氏が執筆した「サービスを制するものはビジネスを制する」を読んだ。



本書の狙いは、

①サービスに関する先入観の刷新
②サービス経営に関する体系感
③サービスの実務への橋渡し
④サービス現場の問題意識とのマッチ
⑤豊富なサービス事例の紹介

以上を通して“いかにビジネスにサービスが重要であるか”を伝えることだと山口氏。

本書はまずサービスに対する誤解を解くところから始まる。

経営学では、そもそもサービスをモノづくりとの対比で考え、サービスとモノづくりが互いに独立した存在だと捉えていない。つまりは、あらゆる産業をモノづくりとサービスとのミックスと考えてきたわけだ。

例えば外食産業はサービス業と分類されるが、それは店内での接客活動が中心となり、お客さまに“食の楽しみ”を提供しているからだ。しかし、厨房で厨房機器を使って料理をつくる営みは、モノづくりに分類すべき活動となる。

山口氏によれば、経営学におけるこの考え方はすでに40年前に、かの経営学者セオドア・レビットによって「本来、サービス業などというものは存在せず、どの業界もサービスと関わりがある。ほかの業界と比べて比重が大きいか小さいかだけが違いなのである」と表現されているそうだ。

こんな歴史的背景がありながらも未だ、サービスの本質が理解されていないために、ビジネスが機能不全に陥っている企業が相次ぐという現実。

冒頭に書いたように、その誤解の理由をひとつひとつ紐解き、サービス経営を進めるにあたって必要なサイクルを解説し、さらには実際に実践している企業の事例を紹介し、最後には、サービスの重要性が腹落ちできるという、サービスの全体像を俯瞰できる全体構成になっている。

サービスが何たるかをより分かりやすく理解させるため、ケーススタディやシーザーズエンターテイメント、QBハウスなどの実例を豊富に紹介している点も評価できる。

1冊を通して読んでみて、企業だけでなく、個人もサービスを理解することで、自身のビジネス能力を高めることができるとあらためて実感した次第。いつでも取り出して読めるよう、手元に置いておきたい、まさにバイブル的な1冊である。

本書で山口氏も言っているが、サービスは特定の業種・業界に携わる人の専門知識ではなくまさにビジネスパーソンの必修科目であることは間違いない。

どうやらこれからのビジネスは、“サービスへの理解”が鍵を握りそうだ。

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