アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

人は、正しいことをすると、もっと正しいことをしようとする。パタゴニアの哲学。

パタゴニアのイヴォン・シュイナードとヴィンセント・スタンリーの書いた「レスポンシブル・カンパニー~パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは」を読んだ。



かつて私が学生だった頃、ポパイ創刊とともにアウトドアブームが起こり、アメリカ発のアウトドアブランドが最先端のファッションアイテムとして人気を博した。シェラデザイン、ウーリッチ、ノースフェイスなど、海を渡ってやってきたブランドは、またたく間に私も含めた日本の男子をとりこにした。パタゴニアもそのうちのひとつだった。ただパタゴニアはどちらかというとプロ仕様で、私のようなひ弱な人間にとっては敷居が高かったが…

当時、かれこれ30年以上も前から今日に至るまで、数少ない息の長いブランド、パタゴニア。

さらに今日のパタゴニアを有名にしたのはイヴォンの前作「社員をサーフィンに行かせよう」だ。良い波の立った日には仕事中のサーフィンを認めている、あの会社である。

本書はそのパタゴニアの創業者と経営の実務を担当してきたふたりが、企業が経営を通して社会的責任を果たすには、どのように考えどのように行動すべきかを、自らの歩んできた道を振りかえり記している。

社内にいち早く託児所を作ったり、リサイクル材料を積極的に使ったり、今日では社会的企業の代表と言われるパタゴニアであるが、創業当時は利益を追求するごくごく普通の営利企業だった。それが会社の節目節目で、社会的企業に生まれ変わる、エポックとなる重大な気づきがあったそうだ。

たとえば、本書にも登場するコットンの問題を知った時。

コットンは、栽培されるのに大量の化学肥料と大量の水が使われているのだそう(ちょっと前までそんなことも知らなかった私みたいな人間もいるが)だが、その環境へ与える影響の大きさに脅威を感じ、自社で使用するコットンをすべてオーガニックに変えたそうだ。当然、コストがかかるから価格に跳ね返ってくるが、その必要性・重要性を顧客が理解し、その決断に共感してくれたから今日のパタゴニアが存在するのだろう。

パタゴニアの哲学、それは「人は正しいことをすると、もっと正しいことをしようとする」という言葉に集約される。

いわゆる性善説からしか生まれないこの哲学こそ、パタゴニアがパタゴニアたる所以なのだ。

たとえパタゴニアに共感した企業が自社のふるまいを変えたとしても考え方そのものを変えられなければ長続きしない。考え方=価値観が最も重要であるし、その価値観を形作るのはあくまで経営者自身なのである。

イヴォンのような経営者が1人でも増えることが社会を今より良くすることだと思うし、そうならなければ次の世界へさらに大きな負担を背負わせることになるだろう。そうなってはいけない。そうしないことが私たち世代に課せられた重要な課題であることは間違いない。そのために私にももっとできることがある。本書を読んでその思いを強くした。

さて。日本にも出でよ、次なるイヴォン。

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「心の時代」にモノを売る方法。

小阪裕司氏の書いた、「心の時代」にモノを売る方法を読んだ。



本書は、先日読んだ「価値創造の思考法」と補完関係になっており、6章を除いて、主に「価値創造の思考法」の前提としての記述と小阪氏は言っている。

以前に紹介したように「価値創造の思考法」をすでに読んでいるので、本書はすんなりと小阪氏の主題に入ることができた。

モノが売れない時代と言われて久しいが、すべての商品がそうとは限らない。こんな時代にもきっちり売れている商品はあるのである。

たとえば、ル・クルーゼ、ダウニー、ライブナチュラル・・・そこには機能的に優れているという観点だけでなく、心を満たすという別の共通する特長があるのだ。

この共通する特長を理解することにより、この先どのような商品、売り方が流行るのか予測を立てることができる、それが本書の小阪氏が展開する最大のテーマ。

小阪氏は今後の新たな消費の潮流として3つの潮流を挙げている。

潮流1:「業種分類は消滅する」…何屋かわからない店や会社がこの先続々と現れる。本書でも紹介されているビレッジバンガードはその走りだろう。

潮流2:「多くは教育産業となる」…多くのビジネスは、今の教育産業に近い、いわば月謝を取るビジネスに変わっていく。

潮流3:「社交サロンは隆盛する」…少なからずビジネスは社交サロン化するだろう。

以上の3つの潮流をあらためて眺めてみると、こだわり、コト化、コミュニケーション、クリエイティビティ、そのあたりが共通のキーワードではないか。

いずれにしても、過去の常識に捉われているとビジネス機会を逃すことになる。大切なのは長く続いている業界毎の常識みたいなものを疑ってみることだ。意外なところに新たなチャンスが眠っている気がする。

小阪氏がいう通り、2冊を読むことで小阪氏の低唱する「価値創造」のビジネスのあり方がより深く理解できた気がする。

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選ばれた1%になるか、その他99%になるか。その一線を分けるものは?

知的生産研究家、そして新規事業プロデューサーである永田豊志氏の書いた「トップ1%の人だけが実践している思考の法則」を読んだ。



“5Aサイクルを回している人は、圧倒的に成功する確率が高い”というのが本書のテーマ。

ちなみに1%というのは、私たちのビジネス人生とほぼ同じ長さである40年続く企業はわずか1%しかない、というところからきている。同様に個人でも40年継続して成長できる人は100人にわずか1人しかいない、それほど貴重な存在ということを言っているのだろう。

さて5Aサイクルとは聞き慣れない言葉だが、それもそのはず永田氏の造語で、ビジネスを成功に導くイノベーティブな思考の循環システムを指す。長年の研究の結果わかった、ビジネスで成功している人に共通の考え方だそうである。

その5Aとは、次の5つ。

Awareness(認知)…顧客の抱える問題の認知
Approach(アプローチ)…問題解決のための従来と異なるアプローチ
Action(実行)…アイデアのスピーディーな実行
Analysis(分析)…仮説と実行結果の差異に対する分析
Adjustment(適応)…マーケットニーズに合わせた柔軟な適応

さらに永田氏は、この5つの循環を円滑に回すため、ぶれない軸=「Idea(理念)」の重要性を説く。

マーケティングでいう選択と集中を進めるにあたって、やるべきことやらざるべきことの判断を容易にするためにも、理念は重要ということだろう。

確かに理念がなくても短期的には成功できるだろう。しかし、継続的に成長し続けるためには、理念の存在は必要不可欠なものであることは間違いない。

先ほどの5つのAをあらためて考えてみると、いずれも今にはじまったことではない。それほど、ビジネスにおいての基本中の基本と言ってもいい要素ばかりだ。

しかし忘れてはいけないのは、今という時代がすべからく過去の常識が非常識となる時代だということ。

基本要素を、いかに常識に捉われることなく考え行動に移せるか、それが今と言う時代と過去との最大の違いなのだ。そこを間違えないようにしっかり押さえておく必要がある。

本書には実際に5Aのルールに則しビジネスを成功に導いた企業の例がたくさん登場する。

話の本筋とは逸れるが、本書を読んで、今人気爆発の「俺のフレンチ」が、ブックオフ創業者の沢田氏の新事業であることがわかった。革新的な飲食ビジネスとしてかねがね注目していたのであるが、ブックオフ同様ビジネスモデルとしてまさに5Aの王道を行っていることに感嘆するばかり。

私がこの本を買った最大の理由。
それは本書の冒頭に紹介されている、パソコンの父としてスティーブ・ジョブズにも多大な影響を与えたと言われるアラン・ケイのこの言葉。

「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」

イノベーションの入り口は小さな小さな気づき。だから、もっと考えよう。もっと観察しよう。気づきに年齢は関係ない。ましてや地位や過去の栄光は役にも立たない。あらためて教えられた気がする。

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「イメージがすべて」から「実態がすべて」へ。

グローバルな広告宣伝・コミュニケーショングループ、ハバスのCEOデイビッド・ジョーンズ氏が書いた「正義の会社が勝つ~ソーシャルメディア時代のCSR」を読んだ。



テーマは、社会貢献とソーシャルメディアを軸としたこれからのビジネスのあり方の提案。

どちらかというと広告業界の内側の人だと思うが、ジョーンズ氏の考え方は間違いなく新世代のアドマン・クリエイターのものだ。それだけ広告業界も新陳代謝が進み、広告そのものの価値観も変わり新たな可能性が芽生え始めているのだと本書を読んで実感できた。

広告業界を新たな回復軌道に乗せるもの、ずばりそれは特定の企業の金銭的利益のためではなく“世の中のためになることにクリエイティビティを活用すること”だ。

幸い企業の中にも、社会性とビジネス上の利益を両立可能として真摯に取り組むリーダーが出現してきている。広告会社は彼らのパートナーとなって、自らの強みを活かすことで新たなチャンスが増えてくるに違いない。

透明性と信頼性とスピードがこれから成長する企業の条件とジョーンズ氏はいう。
特に透明性はこれまでの大企業が最も苦手とするところで、情報をコントロールすることでイニシアティブをとってきた。それゆえに時代の変化に気づかないどころか、過去の成功体験から未だ抜け出せず経営のかじ取りを誤っている企業も多い。

広告会社はこれまでであればメディアが販売できれば良しとして、こうした企業とも割り切った付き合いをしてきたと思うが、これからはそれでは共倒れになる。広告会社にも毅然とした態度が求められているのだ。

本書には古いタイプの広告会社の人間には耳の痛い話も多い。

たとえば、こんな話。

ジョーンズ氏は時代の価値観の移り変わりを次のように3つの時代の変遷で捉えている。

・1990年代は「イメージの時代」…実際の姿とは裏腹に消費者の頭の中に企業イメージを作り上げることに労力を尽くした時代。実態はどうでもよく、イメージを作ることがすべてだった。まさにマス広告の花形時代の名残ともいえる。

・2000年代は「アドバンテージの時代」…競争優位に立つために社会的責任を取る態度で消費者の評価を受けようと考えた時代。少しづつ実態を意識してきた。

・2010年代は「ダメージの時代」…社会的責任を果たせない企業は、それによってダメージを受ける時代。実態がすべてである。成熟した消費者は、情報を持ち、場合によって自分たちの期待の水準に達しない企業には攻撃さえ仕掛ける。

イメージの時代からダメージの時代へ。これだけでも、広告会社の存在の希薄化が想像できるのではないだろうか。

ソーシャルメディアで企業が丸裸になる時代だからこそ、自らすすんで透明性を追い求める。当然企業の価値観そのものを大きく転換しなければならないし、それは大変なことだ。しかし、それ以外にこれからの企業が成長する道はない。本書を読んでその思いを強くした。

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個人の影響力を計るものさし、ソーシャルスコアリングとは?

マーケティングコンサルタント会社社長、そしてアルファブロガーとしても知られるマーク・W・シェイファー氏の書いた「個人インフルエンサーの影響力~クラウト、ソーシャルスコアがもたらす革命的マーケティング」を読んだ。



シェイファー氏によれば、デジタル世界における3つの革命により、影響力の勢力図そのものが変わったという。

3つの革命とは、

(1)インターネットの台頭、ブロードバンドの登場
(2)携帯端末と無線接続の台頭
(3)SNSの台頭

かつて影響力のほぼすべてはマスメディアによるものだった。しかし今は上記の3つの革命によって、個人の手に渡ったのだ。

すでにアメリカではその重心の移行をいち早く察知した企業が、個人インフルエンサーの影響力をマーケティングに活かし始めて成功を収めているという。

企業がその個人インフルエンサーの影響力を計るものさしとしているのが、kloutが提供する「ソーシャルスコア」だ。ソーシャルスコアをひと言でいうと、個人のソーシャルメディアにおける影響力を100点満点で数値化したもの。
独特のアルゴリズムをもとに、ソーシャルメディアにおいての個人の存在価値が評価されている。当然スコアが高い人ほど、他の人への影響力が大きいというわけで企業の手厚い歓迎を受けることになる。

企業がこのソーシャルスコアに基づいてマーケティングを行うのは、この個人の影響力を活用するものだ。

たとえば製造業であれば自社の新製品をいち早く提供する、飲食店であればオープニングパーティーに招待するなど…
ソーシャルメディアを日常的に使っているのだがら当然、体験したことをブログやフェイスブックなどのSNSで投稿してくれることを期待してのもの。ただし、あくまで個人の意思にまかせているので必ずしも好意的な記事になることは約束されていない。

以前日本でもブロガーを招待して記事を書いてもらうようなサービスが盛り上がった時期があったが、この場合はやらせ的に記事を書かせることが横行したせいか、いつのまにかフェイドアウトしていってしまった。

ソーシャルスコアを活用したマーケティングも同様のリスクを孕んでいるだけに、そのあたりの高い意識と最新の配慮が求められることは間違いない。

本書は、kloutが創造する「ソーシャルスコアリング」の新たな可能性を説くものであるが、同時に、その背景にある影響力の重心がマスメディアから個人に移りつつあることを忘れてはいけない。この流れを押さえることができるかどうかが、この先のマーケティングの成功を左右すると言っても過言ではないのだ。

日本でもそろそろ盛り上がってくるであろう「ソーシャルスコアリング」とその活用によるマーケティング。まずはその考え方と背景を押さえるには格好の1冊といえるだろう。

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表現するように経営する時代。表現力のあるリーダーが求められている。

感動プロデューサー平野秀典氏の書いた新刊「GIFTの法則」を読んだ。



たった1人に伝わると大勢が感動する、が本書のテーマ。毎度のことながら、平野氏の著書での「伝える力」は、シンプルで強い。そして何より、言葉が自然に身体の中に沁み込んでくる。本書の中でも登場するが、まさに「伝わる」のである。

平野氏は、企業活動を表現活動に例えて、顧客に価値を伝える活動、と定義する。
つまりは伝えようと思えば思うほど伝わらなくなる。大切なことは、「共感」と「感動」を創造し、知らないうちに伝わっている状態になることだ。

本書で平野氏は、この「共感」と「感動」を生みだすビジネス表現力を、次のような1つの基本フレームと4つの法則にまとめている。

基本フレーム=二人称シフト
第一の法則=GAP 意外性を加える
第二の法則=Impact 記憶に沁み込む
第三の法則=Focus 焦点を整える
第四の法則=Thanks 感謝を贈る
そして、4つの法則の頭文字を取って本書のタイトルにもなっている「GIFTの法則」の完成というわけだ。

特に注目すべきは基本フレームの「二人称シフト」の考え方。

私がでもなく、みんなにでもなく、目の前にいるたったひとりの「あなた」に向けてのメッセージ。
精一杯の思いを込めて贈ることで満足が感動に変わるという。

たった1人の人の心を動かすことから、感動が次々と波動のように多くの人に伝播していく。
この概念、ソーシャルメディア時代のコミュニケーションのあり方そのものといっても良い。


企業がこだわる「顧客満足度」もこれからは「顧客感動度」をめざすべきと平野氏は続ける。まさに日本でただ一人の感動プロデューサーの真骨頂だろう。

最後の最後の追伸で、平野氏は「最も大切なことは、最も大切なことを、最も大切にすること。」と言う言葉を掲げている。昨年亡くなった、平野氏が尊敬してやまないスティーブン・コヴィ氏が7つの習慣の中で書いている原則についての言葉だ。

平野氏がいうように、自分が本当に大切だと思うことを愚直に信じて貫くことが、やがて多くの人の共感を呼び、いつしかライフワークとなっていくのだろう。すべてのはじまりは「たった1人」の人の心を動かすことから始まるのだ。
ついつい忘れそうになるが、決して忘れてはいけない、「人」としての基本であると同時に、ビジネスの基本でもある。

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