アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

プロフェッショナルの条件は、どこでも誰とでも働けること。

尾原和啓氏が書いた「どこでも誰とでも働ける」を読んだ。

どこでも誰とでも働ける

副題に、12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール、とあるように尾原氏はマッキンゼーを皮切りにリクルートやGoogle、楽天など、独自性を持った多くの会社のキャリアを持つ人。

そんな彼の仕事観を知りたくて本書を手に取った。

私自身、35年あまり会社勤めをした経験を持つが、転職はわずか2回。キャリアアップのためというよりは必要に迫られてというのが正直なところだ。

尾原氏の転職の考え方は、私とは正反対。その背景にあるのは、肩書きではなく、自分の名前で生きる勇気を持つ、ということ。

与えられた仕事を自分事化して、最小の時間で最大の効果を出し続ける。それにより、◯◯会社の尾原さんではなく、◯◯ができる尾原さんになる。

簡単なようで簡単ではない。なぜなら誰しも目の前の生活を維持したい、そんな気持ちが働くからだ。転職に臆病になるのも当然だろう。

しかし、これからの時代はそういうわけには行かなくなる。尾原氏は働き方を根底から変えざるを得ない、世の中の3つの変化を挙げている。

(1)社会やビジネスが、いっそうインターネット化する
(2)これからビジネスで活躍できる人は、プロフェッショナルだけになる
(3)会社と個人の関係が根底から変わる

かつて糸井重里氏が書いた「インターネット的」がまさに現実になろうとしていると尾原氏。リンク、フラット、シェア、さらにはIoT、AIなどの技術進化が組織のあり方から働き方、ひいては生き方まで、現在の価値観を180度といってもいい劇的転換を促す。

そんなこと、ありえない。あったとしてもまだまだ先だろう。そんな他人事でいる人は要注意、自動運転技術を見ても、絵空事ではなく、ほんの数年後に街中を当たり前のように自動運転者が走ることは間違いない時代なのだ。

何が起きてもおかしくない時代だからこそ、会社に依存する生き方は早々にあらためなくてはいかない。

どこでも誰とでも働けるように、自身の得意を磨かなければならない。数年前にそのことに気づき自ら実践してはいるが、本書を読んで、まだまだ足りないと痛感、尾原氏の考え方を通して、あらためてプロフェッショナルとはどうあるべきかを考えさせられた。

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ファンベース。長く愛される企業のキーワード

コミュニケーションディレクター、佐藤尚之氏が書いた「ファンベース」を読んだ。

ファンベース


明日の広告明日のコミュニケーション明日のプランニングと、企業と消費者を取り巻く広告、コミュニケーションの考え方、あり方の変化を著してきた佐藤尚之氏。

本書「ファンベース」では、前著「明日のプランニング」の後半で提唱した考え方をさらに発展させた待望の1冊となった。

佐藤氏はもと電通のクリエイター。在社当時からネットの世界では「さとなお」さんとして有名だった。

振り返ってみて、最初に佐藤氏の「明日の広告」を読んでブログを書いたのは、2008年。

私自身も広告代理店のクリエイティブディレクターの立場にあって、広告の限界に直面して思い悩んでいる時だった。

当時、本書に出会って随分勇気をいただいたことを昨日のように思い出す。

もっとも、そのせいで自身の独立がさらに遅れてしまったことは否めないが(笑)


そこから10年である。

この10年の間に、広告をベースとしたコミュニケーション環境はがらりと、もっと言えば180度変わってしまったと言っても過言ではない。

そんな状況で、佐藤氏が満を持してタイトルに掲げたのが、ずばり「ファンベース」。

本書で佐藤氏が提唱する、これからの企業活動に最も重要な「ファンベース」という考え方と言ってもいい。

ファンを大切にし、ファンを大切にし、中長期の売上や価値を高めていく、それがファンベースという考え方だ。

ファンベースで特に重要なのが「中長期」というある意味、長い時間軸に視座を置いていること。

ゆえに、広告が最も得意とする短期的な売上志向をある意味、真っ向から否定している(言葉はそこまで直接的ではないが)。

もっと言えば、仮にそれで売上が上がったとしても、企業経営はそこで終わるわけではなく、必ずそのしっぺ返しと言ってもいい売上の落ち込みがこれまで以上にリスクとして企業に襲いかかることを指摘している。

すべからく、企業は正直で誠実でなければならない。企業内部を隠し立てなく、裏表なく見せる必要がある。そのためには、企業と生活者、企業と社会の壁を取り払い、心地よい空気で社内と社外をつなぐことだ。

こう考えた時、求められる経営者像も、おのずと変わってくるにちがいない。これまでよく見られた自身の価値観を押し付けるワンマン経営は影をひそめるだろう。

本書で佐藤氏はこれまで以上に、より現実的なデータ、より具体的な事例を掲げて、経営者がより自分事として取り組めるよう「ファンベース」マーケティングについて、熱く教えてくれている。

ここからは私の持論であるが、こういった考え方を取り入れるには、ほとんどの経営者は歳をとり過ぎている。大切なのは、まず自身の価値観を入れ替えることだ。そして、次の世代を担う若い幹部たちの意見を聞き、新しい企業像を模索すること。

一見遠回りのように見えるが、結局のところ、それが最善の道でもっとも近道となるはずだ。

明日の広告から10年、「ファンベース」は佐藤氏の考え方の集大成とも言えるが、もっと長いスパンで見れば単なる通過点となるのだろう。とにもかくにも今この時のコミュニケーションを俯瞰してみるには最適の一冊である。


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「応援される会社」これからの会社の生き残り方

「応援される会社〜熱いファンがつく仕組みづくり」を読んだ。書いたのは、上智大学教授の新井範子さんと東京富士大学教授の山川悟さん。

応援される会社


この時代に企業が成長を続ける条件とはいったい何だろうか?

そのひとつが応援される企業であることと、かねがね私は思っていた。

時代が成熟して商品やサービス自体ではなかなか差別化することが難しくなっているからだ。

となれば、その会社が好きか嫌いか、そこで差がつくケースが以前にもまして増えているのではないかと推測する。

著者ふたりは、そのあたりの背景をマーケティングの研究対象として調査、本書で論理的かつ、わかりやすく整理してくれた。

なんと言っても、応援が身近になった理由としては、SNSの普及によるところが大きい。

たとえば「いいね!」を押すこと自体も新たな応援の形であると著者たちは本書で言及、その連鎖が、応援消費という新たな消費形態を生み出していると。

少し前は応援というと声援を送るというような行為が一般であったが、今では多種多様、さまざまな形に拡がってきている。

企業から見れば、こういった生活者の価値観の変化をうまく取り入れられるかどうかが、今後の成長の鍵を握っていると言っても過言ではないのだ。

ある意味、かつては成り立っていた営業会社が不振に陥る理由も、案外こういった生活者の価値観の変化を理解できないところにあるのかもしれない。

さて。本書の内容に戻ると、

・応援されるブランドの類型と特徴
・応援される会社「4つの必要条件」
・応援を味方につける方法…と

普通の会社が応援される会社へ変貌を遂げるために踏むべきプロセスを、ヤッホーブルーイングやイチローモルトのベンチャーウィスキー、いすみ鉄道などの豊富な事例とともに紹介してくれている。

極論すれば、どうしたら売り上げを上げられるか、利益を確保できるかを考える前に、
どうしたら応援される会社になれるかを考えたほうが上手くいく時代だ。

日頃の経営に頭を悩ませている経営者には、ヒント満載の1冊である。


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終わらない、安藤忠雄の挑戦。

今年も数々の美術展に出かけた。

その中でもっとも感動したものをひとつ挙げろと言われたら、私は迷わず「安藤忠雄展ー挑戦」を選ぶ。

美術好きの人からみれば、それを美術展と括ること自体に違和感があるかもしれない。

けれど、ある程度建築に興味のある人なら、安藤氏が建築を美術品と同じように、鑑賞物としての作品の領域まで高めた貢献者の一人であるというのが共通意見であることは想像に難くない。

安藤忠雄展


この美術展に関連した記事を読むと、10万人集まる展示会にしてほしい、というのが美術館側からの要望だったようだ。

しかも美術館の会場費以外の展示費用はすべて安藤持ちという条件だったらしい。

それでOKと言える潔さ(自信の裏付けといったほうが良いかもしれないが)、常に可能性を追い求める彼の生き方そのものの発露だと私は思う。

そして、展覧会のテーマはずばり「挑戦」。

英語表記がENDEAVORSとあるので、努力という意味が近いように感じるが、安藤にとっては挑戦=努力、それに尽きるのだとあらためて感じた。



ご承知のように、安藤はここ数年病魔と闘い、結果として内臓のほとんどを失っている。

にもかかわらず、心は以前にも増して凛と前を向いている気がする。

はたして何がそこまで彼を掻き立てるのだろうか。展示を見ている間中、そのことをずっと考えていた。

その結論は今も自分自身の中で燻ったままであるが、展示の数々を通して一貫して感じたのは、決して過去の回顧ではなく、安藤氏の未来への熱く強い眼差しである。

建築の可能性、いや建築が作る空間の可能性といったほうが良いかもしれない。人を幸せにする。世の中を今より幸せにする。そのために建築ができること。

その実現のために、安藤氏の挑戦はまだまだ続く。目標のある人はいつまでも青春である。安藤氏の言葉だ。

※写真は、図録の安藤氏のサイン。当初、印刷かと思ったが、なんと3万部すべて、安藤氏が手書きしたそうだ。なんというパワーだろうか。

光の教会サイン

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ミレニアム起業家の「新モノづくり論」

仲暁子さんが書いた「新モノづくり論」を読んだ。

新モノづくり論

仲さんは新卒でゴールドマンサックス証券に就職、その後フェイスブックの日本法人の立ち上げに関わり、独立してビジネスSNS「ウォンテッドリー」をリリースさせた、なかなか他には類を見ないキャリアの持ち主だ。

本書にも頻繁に登場する「ミレニアム世代」だが、まさに仲さん自身がドンピシャのミレニアム世代。

仲さんは本書で、「なぜ日本から世界で活躍できる企業が減っているのか?」という問いを投げかけているが、その背景にある日本経済の長きにわたる成長鈍化に対し、2つの理由を挙げている。

ひとつは、AI、ロボット、IoTなどを含んだ広義のインターネット系の産業の構築の遅れ。
もうひとつが、消費者、労働者として社会の中心になろうとしているミレニアム世代への理解不足。

いずれも仲さんが実際に自分事として体感している話で説得力がある。

いずれもに共通する原因は、過去の成功体験を持った50代〜60代が、古い価値観で相変わらず企業の中枢に居座っていることではないだろうか。そういう私自身がその世代ゆえ、余計に実感としてわかる。

高度成長期に積んだ良い体験の記憶がなかなか捨てられず、低成長の時代に変わっているのにも関わらず、やればできる的な根性論をごり押しする。仕事へのモチベーションという意味では若い世代のほうが旺盛にもかかわらずだ。

しかし、ミレニアム世代が社会の中枢に少しづつ足を踏み入れてくるに従い、旧世代の居場所はなくなりつつある。おそらくこれから5年後くらいにはすっかり企業の様相が変わってしまっているのではないだろうか。

さて、本書の中で、そのインターネットとミレニアム世代が形作る社会を攻略するキーワードとして仲さんが挙げているのが「トライブ」である。

トライブとは何を指すのだろうか。

英語でトライブは、種族とか部族と訳されるが、仲さんは転じて共通の価値観を持った人たちの集まりという感じで使っている。

ポイントとなるのは人と人のつながり方だ。

企業のような硬い関係性ではなく、ゆるやかでしなやかな関係性とでも言おうか。彼らのつながりたいという気持ちに寄り添うことが企業にとってますます重要になってきているように思う。そしてそのつながりの中で自分らしい生き方ができることが求められている。

もうひとつ。

トライブで重要になるのが、仲間探しだ。何事もひとりではできないと仲さんは言う。たとえば同じ情熱やビジョンを持った人が一人二人集まっていくことで、新しい組織が形作られていく。重要なのはお金ではない、カルチャーなのだ。

ミレニアム世代への理解不足。そんなテーマに惹かれて本書を手に取ったのだが、読み終えてみると、自分が独立して2年くらいの間に考えてきたこととそんなに大きな違いはないように思った。

重要なのは、ミレニアム世代を理解しようと知識を膨らませることではなく、時代の変化に対して自らの行動を変えることだ。デジタルが世の中を変えていくのだったら自らがデジタルを活用してみることだ。

そういう意味では、本書を読んで、彼らを理解するどころか、彼らから教えられている事のほうが多い自分がいることに気づいた。

やや上から目線が度を超えている感があり、賛否両論あるだろうが、仲さんの指摘は正論で切れ味鋭い。こんな人たちが元気なら、この先の日本もきっと大丈夫だろう。

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