アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

食べることは、生きること。未来へつなぐ食のバトン。

大林 千茱萸(ちぐみ)氏が書いた「未来へつなぐ食のバトン」を読んだ。



子供たちの給食を地元産の有機野菜でまかないたい。そんな想いを実現するために、なんと土づくりから始めたという大分県臼杵市の取り組み。

単に植えて育てるというわけにはいかない。土そのものを堆肥作りから考え、時間を掛けて、実際に形にしていった。
子供の将来を担う「食」に賭ける本気度が伝わってくる。

そんな取組みを、前町長から直々に依頼を受け、大林氏が記録したドキュメンタリー映画が「100年ごはん」だ。

本書はそのプロセスで大林氏が学んだこと、出会った人、そして完成後の上映会でのさまざまな体験を綴ったもの。

少し余談になるが、映画、そして大林という名字。それだけでピンとくる人もいるだろう。そう、大林氏は、かの大監督、大林宣彦氏のお嬢さんだ。

映画を観ていないので何ともいえないが、幼い頃より父親の背中を見て育ってきた、おそらく感性は父親譲りなのだろうと、本書を読む限り想像に難くない。

さて、映画もそうなのだろうが、本書の最大の特長は、有機野菜に知識が少ない彼女が、

・そもそも「有機野菜」とは?
・完熟堆肥はどうやってつくられるのか?
・なぜ野菜にとって土は大切なのか?

読者が同様に抱くであろう素朴な疑問をひとつひとつ解決していく、答え探しのプロセスにある。

好奇心旺盛な彼女、行動力もひとしおで、ひとつの行動がまた次の行動につながっていく。
そんな「つながり」の連鎖、彼女の人柄の良さを本書の随所で垣間見ることができる。

そんな彼女の彼女らしさが、おそらく映画でも功を奏し、良質さを生んでいるのではないだろうか。

「つながり」の連鎖を意識させられるエピソードは、完成後の上映会の様子にも見て取れる。

このドキュメンタリー映画のもうひとつの特長、それはメジャーな興行ではなく、自主上映会を中心にしていること。
そして上映会の主催者はクチコミ、紹介をメインにしていることだ。

映画を見て、私も上映会を開催してみたい、そんな想いのつながりに、読んでいて知らず知らずのうちに胸が熱くなり幸せな想いに浸ることができた。

本書を読んで映画を観てみたくなった。それは私だけではないだろう。

本×映画。ノベライズだけでない新しい可能性のかけらをここに観たような気がする。

そしていささか道が逸れてしまったが、本書の本題である「未来の子供たちにつなぐ食のバトン」、食と土の関わりは本当に大切である。土はすべてのはじまりり。あらためてそう気付かされた。

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大切なのは、自分の土俵で闘っているかどうか。

クリエイティブディレクター佐藤可士和氏が書いた「佐藤可士和の新しいルールづくり」を読んだ。



超ベストセラーとなった「佐藤可士和の超整理術」でおなじみ、その佐藤可士和氏の最新刊は、自らの体験を通して培った、人生を優位に生きるために必要な「ルールづくり」について書いている。

本書から学べることは、ずばり「自分に有利な場所=自分の土俵で闘うこと」の重要性だ。

サッカーでいうアウェイを想像してみよう。

相手の本拠地で闘うということは、グラウンドの条件からすべてホームチームに優位なように設定され、はなからハンディキャップを背負うことになる。

ホームでは圧倒的な強さを見せるチームがアウェイとなると別人のように見えてしまうのは、もちろんそこに心理的な要素が働く事も大きいが、研究し尽くされ「闘う場」がそもそも苦手な条件にセッティング(=相手優位のホームルール)されているからなのだ。

この例のように、本書における佐藤氏の「新しいルールづくり」とは、まさに自ら優位に闘うために「闘うための新しい場」を規定すること。

あらためて考えてみれば、個人にかぎらず、ビジネスでも「新しいルールを作れる力」が成功を大きく左右する。

アップルの成功などはその典型だろう。

マッキンントッシュをはじめアイフォンでも、アイチューンズでも、これまでにあったビジネスのステージのようなものをまったく新しい形に創り変えてしまった。つまり闘うルールそのものを変えてしまったのである。

佐藤氏いわく、新しいルールを創るために重要なことはまず前例・常識を疑ってみること。

常識に捉われていては、新しいルールなど作れるはずがない。特に現代のような創造的破壊が求められている時代には特に重要な要素に違いない。そういう意味では、本書で紹介されている佐藤氏の思考法は実に参考になる。

今仕事で上手くいかないとか、ビジネスで価格競争に巻き込まれているとか、そんな悩みを抱えている人は、意外と自分にとって不利な場所で闘っていることに原因がある場合も多いようだ。

そんな人は、アウェイな場所に乗り込んで自滅するのではなく、自分の強みを今一度明確にして、闘うルールそのものを変えることを意識してみてはどうだろうか。

最後になったが、本書で「佐藤氏のルールづくり」が明確に整理されているのは、聞き手である斉藤孝氏の「引き出し力」によるところが大きい。斉藤孝氏をセッティングした編集者のセンスにも拍手を贈りたい。

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マスマーケティングの対極にあるムーブメント・マーケティング。旧来型のアドマンは180度の価値転換が必要。

グローバルマーケティング/広告代理店「ストロベリー・フロッグ」のCEO、スコット・グッドソンが書いた「ムーブメント・マーケティング」を読んだ。



グッドソン氏によれば、ムーブメントとは社会的・政治的・文化的な運動や活動を指す。従って、ムーブメント・マーケティングは、ムーブメントを利用して、企業への共感や好感を獲得する行為といえるであろう。

特徴的なのは、ムーブメント・マーケティングはあらゆる面において、従来のマスマーケティングの対極にあるということだ。

グッドソン氏は、こんな言い方で違いを表わしている。

ここに新製品の携帯電話がある。

「この新製品を買ってもらうためにどうすればいい?この製品独自の売りは何なのか?この新しいボタンだ。では、それをどう売り込むのか?」これが従来の考え方。

しかし、ムーブメント・マーケティングではこう考える。

「今、この世の中で何が起こっているのか?消費者は今、何を考えているのか?どんなことに今日的な意義があるのか?」

ご承知の通り、ほとんどの商品やサービスはコモディティ化しつつある。なのに、消費者が興味が無いのにかかわらず未だ商品の特長を一方的にメッセージしている企業がいかに多いことか。そんな状態ではメッセージが伝わるよしもない。

それより、今消費者が興味を持っていることに商品やサービスをアジャストさせるほうが、よほどメッセージが伝わりやすい。

ただし、問題点がある。消費者が主役である以上、もはや企業の側では情報や伝わり方をコントロールできないということだ。価値観を変えない限り、一時的にムーブメント・マーケティングを採用しても長続きしない。それどころか、企業のウソが簡単に見抜かれてしまう。

大切なのは、ブランドの理念と繋がっていること。
何を伝えるか?どのように伝えるか?よりも、なぜ伝えるのか?なぜ、その商品・サービスを提供するのか?が明確になっていなければならない。

グッドソン氏は、ムーブメントマーケティングの特徴を、指図するのではなく耳を傾けることにあるとも言っている。

確かにマスマーケティング全盛期は、より多くの人にいかに効率よくメッセージを届けることができるかが最重要課題であった。リラックスした状態にいきなり土足で踏み込むような一方的なもので、相手の状況など一切おかまいなしだ。

当時はインターネットもない状態。一方的なメッセージであっても情報が少ないために受け入れざるを得なかった。というか、むしろ積極的にマス情報を享受していたのである。

しかしインターネットが普及してソーシャルメディアが進化してくると、企業からの雄弁な一方的なメッセージは嫌悪感、不信感さえ抱かれるようになった。

以上の状況を総合的に鑑みて、マーケターは180度価値観を変えなければならない時代になったのである。

そのあたりを適切に書いた記述があるので、やや長文になるがここに引用する。

デジタルテクノロジーとソーシャルネットワークのおかげでマーケティング担当者は、大衆の声に耳を傾けようとすれば、いくらでも会話の中に入ることができる。しかし、その会話の輪を乗っ取ろうとしてはならない。それこそまさに、これまでのマーケティング担当者がしてきたことだ。それではうまくいかない。こうした媒体においては、大衆こそが主役なのだ。だが企業は、そんな会話の輪の中に、大衆にとって有益なものを提供することができる。役に立つもの、関心のあるもの、参加・共有したいと大衆に思わせるものである。それを提供することに成功すれば、大衆が企業の“メディア”になってくれる。企業のかわりにメッセージを伝えるだけではない。メッセージを広めるためのコンテンツさえ提供してくれるようになる。

以上。

現在の企業コミュニケーションを端的に言い表している。ここを理解できるかどうかがマーケティングの成否を分けると言っても過言ではない。

本書では、ストロベリーフロッグが手掛けたものを中心に、ムーブメントマーケティングの実例が豊富に紹介されている。

実例を知りつつ、ムーブメントマーケティングの概念を理解することで、自身の価値観を変えられれば、グッドソン氏の狙い通りということなのだろう。

しかし、しかしである。広告業界で長年培った常識はそう簡単に変えられるものではない。
そういう意味では業界歴が浅い人の方がムーブメントマーケティングの考え方は相性が良いのかも知れないと思えてくる。

本書、間違いなく広告会社の本質的な問題点と新たな可能性について、非常に示唆的であり、実に刺激的な1冊だった。今まさにマスマーケティングの壁に当たっているなら、新たなブレイクスルーとなるきっかけとして、ぜひ本書をおすすめしたい。

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