アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

そうだ、星を売ろう。売れない時代のビジネスモデルとは。

マーケティング戦略アドバイザー永井孝尚さんが書いた最新刊、「そうだ、星を売ろう」です。

そうだ星を売ろう

永井さんを一躍有名にしたのが大ベストセラー「100円のコーラを1000円で売る方法」、読まれた方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな永井さんがまたまた新境地を拓いた1冊。長野県下伊那郡阿智村で取材したエピソードをもとに書き起こした、限りなく真実に近いフィクションです。

心温まる感動の物語ですが、それだけでなく巧みに作られたビジネスストーリーでもあります。読み進めるうちに、自然とビジネス戦略が学べるという優れもの。このあたりは永井さんの筆力の真骨頂です。

さて、本書の舞台、長野県下伊那郡阿智村といえば、先日もテレビで取り上げられていたように、いまでは「日本一美しい星空の村」として全国的に名をはせる人気観光地。

とはいえ、少し前までは温泉客依存でジリ貧となっていた課題いっぱいの村だったのです。

それがどのようにして蘇ることができたのか。その起爆剤となった商品がずばり「星空」というわけです。

物語の中心となっているのは、星空が商品として認知され衰退の一途にあった村を救うそのプロセス。
ふたりの人物の価値観の相違が対比的に描かれていきます。
大量生産大量消費の象徴としての老経営コンサルタント。新しい時代の象徴としての若手社員。
それはそのまま「モノ」の時代と「コト」の時代の象徴でもあります。

二人の価値観が対立する展開はまさに今の地域創生現場の縮図。こんなことが今も全国至るところで起こっているのでしょう。

読んでいても思わずクスっとさせられ、気づいたら若手社員、諸星にエールを送っているという始末。わかっていても永井さんの狙いにまんまとはまってしまう、そのストーリーの展開力には脱帽でした。

そして、その物語にさりげなく散りばめられている、ジョン・コッターやダニエル・ピンクなど数々のビジネス理論も、堅い本をは苦手という人でも、おそらくすんなりと理解できるのでは。

阿智村の「星を売る」物語。
ご本人があえてフィクションと名打つとおり少し美化されすぎているきらいはありますが、地域再生を学ぶ人、地域再生をビジネスとする人にとっても、おすすめの1冊です。

永井さんの著書は、以前にも紹介させていただいています。「戦略力」が身につく方法。


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「今、企業がブランド力を上げる理由」 美濃焼ブランディングプロジェクトに想う。

企業ブランディングに取り組む株式会社イマジナ、代表取締役の関野吉記さんが書いた最新刊が「今、企業がブランド力を上げる理由」。副題に「想いを伝える企業ブランディング」とあります。

イマジナ書籍

3作目か4作目になるのでしょうか、関野さんが書いた本はすべて読んでいますが、本書は、考え方は変わらないものの、これまで紹介されていない彼らの最新事例が、より具体的に紹介されています。

ニトリやにんべん、タカギなど全部で8つの事例、中でも私がより興味深く読んだのが、STORY6「美濃焼ブランディングプロジェクト」の章。

なぜかといえば、先日岡田さんに案内されて訪れた多治見の「ギャラリーヴォイス」で偶然、本書と本書に関するイマジナから関係者に向けて書かれた案内書を見つけたからでした。

普段なら見ることもないであろうギャラリーの本棚のところにたまたま見えるように置かれて、あぁこれも何かの縁かと、あらためて本書を手に取った次第。

(ちなみにギャラリーボイスで開かれていた日本全国の作家による陶磁器展もなかなか見ごたえがありました)

そんな縁もあって、この章は普段以上に感情移入して読んだというわけです。

その章のさわりを少し。

おそらくどこも共通の課題を抱えているのではと推測しますが、美濃焼の産地であるここ、多治見、土岐、瑞浪も、海外からの低価格品の輸入と国内市場自体の縮小により大きな打撃を受けています。

そんな中で、二つの方向性がより重視されるようになったといいます。その二つとは「高付加価値化」と「グローバル化」。その戦略を具体的に進めるため、3市の市長が手に手を取って取り組んだのがこのプロジェクトです。

中心になって取り組む古川多治見市長は、「中国産の低価格品と競争しても勝てません。それよりも、本物の良さをきちんと消費者に評価してもらうことを考えるべきではないでしょうか」と。

とはいえ歴史が長い分課題も多く、たとえば美濃焼といえば織部、志野、黄瀬戸など多様性が売りなのですが、その分具体的なイメージが希薄になるという問題が付いて回ります。さらに、長年OEMや分業制に甘んじてきたつけも回ってきているという厳しい状況。

そんな中でイマジナが依頼を受け取り組み出したのが「美濃焼ブランディングプロジェクト」なのです。

美濃焼ブランディングプロジェクト自体まだ端緒に就いたばかりで、進行状況については細かく記載がありませんが、今後注目してみていきたいプロジェクトのひとつです。

さて肝心のイマジナのブランディングコンサルティングですが、顧客の企業カルチャーを見出して、誰もが価値と感じる“ブランド”まで高める、カルチャーブランディングというスタイル。

特に他のブランディング会社と異なるのは、他が商品・サービスのブランド化や広告宣伝を積極的に使うアウターブランディングに重きを置いているのに対して、彼らが手がける企業ブランディングは企業の理念やビジョンなど、“想い”の社内共有を重視するインナーブランディングを中心に置いていること。

これは私自身も大いに賛同するところで、社員満足なくして顧客満足なし、そのためにはブランディングの核となる経営理念の共有が必要不可欠なのだと。

「自社が働く企業が何のために存在するのか」「社会にどんな価値を提供しているのか」「何をめざしているのか」といった企業理念の共有が、社員だけでなく世の中に与えるインパクトを十分に理解していることが、ここ最近の“心の時代”への移行と相まって、このところの高い評価につながっているのではと推測します。

ちなみに彼らの会社が掲げるキャッチフレーズはこうです。

「伸びる会社は、月曜日の朝がいちばん楽しい」

日曜日の午後くらいから月曜日のことを憂鬱に思い始める会社員が多いと聞きます(私自身も前職ではそんな感じでした)が、こんな考え方の会社だったら、社員のモチベーションも上がり生産性も高まるのではないでしょうか。ひいては業績にも好影響が。

さて、皆さんの会社はいかがでしょうか。

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企業の活動は「目的」と「大義」からはじまる。 水野学的ブランディング思考 その②

前回に続き、グッドデザインカンパニー、クリエイティブディレクター水野学さんの近著『「売る」から「売れる」へ 水野学のブランディングデザイン講義』から。

ブランディングデザイン講義風景

タイトルに掲げたのは、本書の中で私が大いに共感した一節。

水野さんは新たにブランディングの依頼を受けた時、まっさきに行うのは経営者との徹底した対話だそう。

その理由を「めざしているところがきちんと共有できないと、ブランディングの方向が間違ってしまうから」と水野さんはいいます。

ここがブランディングと単なる広告やツール制作とのいちばんの違いなのではないでしょうか。

単なる一手段であれば、経営者でなくても一担当者で済む話かもしれません。けれどブランディングとなると、経営戦略とも大いに関連してくるので経営者マターとなるのです。

経営者をすっとばしたブランディングなど片手落ちだし、上手くいくはずがありません。

逆にいえば、高いお金を払うのだからこそ、ブランディングの本質を発注者側も十分心得ておく必要があります。

時に激論をかわしながらも、こうしてお互いの相性も確かめつつ進んでいくからこそ、相性が合う相手ととことん付き合うことができるし、必然的にブランディングの精度が上がっていくのかなと思います。

最初のハードルは高くなるかもしれませんが、ブランディングを生業とするのなら、意を決して我々もぜひ見習いたいものですね。


目的=何のために?と大義=なぜ?

もちろん経営を続けていくためには売上・利益を上げることが必要不可欠ですが、それはそもそも大前提であるわけで、売上・利益を度外視した経営なんて経営と呼べません。そういう意味で、経営のエンジンとなる、お金儲け以外の目的や大義が重要になってくるのです。

そんなきれいごとで。と否定的な経営者もいまだ存在しますが、時代錯誤も甚だしいと。

そんなわけで。本書にも登場する中川政七商店や茅乃舎のブランディング事例は、水野さんが経営者と費やした対話時間の賜物であることが想像できるのではないでしょうか。

いささか余談になりますが、前職で銀行系のアナリストと話した時、10年前と今で、上場会社の経営者に求める素養として何が重要かという話になり、彼が即答したのが「経営者の哲学」という答えでした。

哲学と大義、似て非なるものではありますが、どちらも時代が「こころの時代」に入ってきていることを如実に物語っています。

そして、ブランディングデザインと大義。一見、関係がないようなものがつながることで、現代の経営における課題が見えてくるのではないでしょうか。

あらためて考えてみれば、論理より感性、まさに右脳の時代なのです。

世の中をあっと驚かせてはいけない。水野学的ブランディング思考 その①

世の中をあっと驚かせてはいけない。水野学的ブランディング思考 その①

「えー、なんで?」と広告系のクリエイターの声が聞こえてきそう。もし該当者なら要注意です。本書を読んでみる価値があるかもしれません。



本書とは、グッドデザインカンパニー、クリエイティブディレクター水野学さんが書いた『「売る」から「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』。

ブランディングデザイン講義

タイトルに書いた言葉は、水野さんがブランディングデザインに必要な3つのポイントとして掲げたひとつです。

ちなみにあと2つは、
「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力のことである」
「ブランドは細部に宿る」。

3つともうなづける点が多くなるほどと思わせる言葉ですが、冒頭の言葉は、ほかのブランディングに関する著書では、意外と語れられていない重要なポイント。

長年、広告をやっているとわかりますが、ひとつ間違うと「どうやって世の中を驚かせてやろうか、イヒヒ」と、クリエイターがほくそ笑み肩に力が入るところですが、それこそブランディングにとっては大きなマイナスを生む理由にもなるのです。

なぜならブランディングは長期的視点、長い時間軸で持続性をベースに考えるものだから。あっと驚かせた結果、瞬間的に認知が上がって売上が増えても、それが長く続かなければ意味がありません。それどころか逆効果になった例を、私自身たくさん見てきました。

水野さんは、こんなたとえ話で、この言葉の意味をわかりやすく伝えています。

これは差別化というものへの誤解です。〜中略〜
イスの差別化をはからなくちゃいけないからといって、座れないイスを作っても意味がないでしょう。そんなことは冷静に考えればわかるのだけど、差別化を考え始めると、それに近いことをやってしまうんですよ。
的を得ているなら、本当はもっと小さな差をつくるだけでいいんです。そういう意味で「世の中をあっと驚かせてはいけない」

どうですか。もちろんブランディングではなく販売促進が目的なら瞬間風速も重要です。
けれど…今目の前の提案が、座れないイスになっていないか、大いに考えさせられるところですね。

今回の著作は、これまでの水野さんの著作とダブるところも多いですが、学生に向けての講義をもとに書かれていることで、わかりやすさがさらに増しています。

また代表事例として中川正七商店、茅乃舎へ実際のプレゼンテーションした企画書が掲載されていること。普段どのようにクライアントへ提案しているか、その裏側をちょっとだけ覗くことができたこと、そして、そのトーンに水野さんの人柄が垣間見えてとても共感できました。

水野さんいわく、日本には企業の社長の片腕になれるクリエイティブデイレクターが決定的に不足しているそうです。確かに私もそう思いますし、経営コンサルタントでは対応しきれない経営課題もたくさん出てきているようで、時代の転換点を感じています。そういう意味ではとても勇気づけられる1冊でもありました。

●本書、なかなか奥が深いので、次回はその②として、もうひとつ気になった名言。企業の活動は「目的」と「大義」からはじまる。について書きたいと思います。

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売れる広告の肝は、いつの時代も「ロジック」と「マジック」。

ロジック=戦略的考察。マジック=創造的跳躍。

このふたつが、ブランドが目指すコミュニケーションの実現には、いつの時代にも欠かせないものであり、その両者の間で思考を往復させながら解決方法を見出していく。それこそがもっとも重要なプロセス。広告づくりは、まさに左脳と右脳のぶつかり合いなのだ。

そんなテーマで展開されるのが本書。フリーのクリエイティブディレクター、伊東紅一さんとビーコンコミュニケーションズ、プランニングディレクターの前田環さんの共著、「売れる広告」である。

売れる広告

「売る広告」といえば、かのデイヴィッド・オグルヴィが書いた名著であるが、こちらはそれに対抗してというわけではないだろうが「売れる広告」。「売る」と「売れる」。なんとなく時代の移ろい・広告を取り巻く環境の違いを考えさせられるタイトルで、まずは興味を引かれた。

とはいえ、内容はいたってオーソドックスだ。昔から変わらない広告の基本中の基本を押さえた方法論、ある意味、これから広告に携わる人にとっての入門書としても十分に役立てられる。

具体的に紹介すると、

1部が【ロジックパート】

・プランニングの基本戦略立案
・ターゲットの設定
・インサイトの見つけ方
・購入決定プロセス
・ブランドの使命
・クライアント・ブリーフから戦略構築

2部が【マジックパート】

・クリエイティブアイデアの開発1〜3

3部が【ネット化とグローバル化の時代に向き合う】

・広告コミュニケーションの今
・変わるものと変わらないもの

その中でも、特にいつの時代にも変わらないものと言えるのは、「インサイト」の存在だろう。彼らも最後は「インサイト」に行き着くと言っている。

ただし、商品やサービスの「インサイト」自体は、時代時代で微妙に変わってくる。というか機微がわからなければ、ターゲットの心を捉えることはできない。

インサイトとは、ひと言で言えば「行動を起こす心のツボ。」

「確かにそう言われれば、そうだよね。気づいてなかったけど、わかるわかる!」そんな感じだろうか。

適切なインサイトを見つけられたら、クリエイティブ作業の大半は終わったっと言ってもよい。
それほど重要な存在であるし、そんなインサイトを見つけるために、アドマンは心血を注ぐ。
これはというインサイトを見つけられた時、まさにアドマンはアドマン冥利に尽きるということではないだろうか。

デジタルの時代になって、特にインターネットの進化によりさまざまな手段が登場している昨今。だからこそ、見失ってはいけない本質が重要になってくる。

「売れる広告」。広告の是非は別としても、コミュニケーションの本質を見極めることの重要性を、あらためて教えてくれる1冊である。


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