アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

「オオカミ少女の憂鬱」を観て。

先週土曜日のことになるが、名駅西のシネマスコーレで有馬監督作品「オオカミ少女の憂鬱」を鑑賞した。


斉藤和義の「歌うたいのバラッド」という歌がある。

歌うことでしか愛を伝える術を知らない、不器用なほど純粋な歌うたいの話だ。

映画を観終わったあと、なぜかこの歌を思い出した。


映画の主人公、小上優子。

日常的に嘘をつく少女である。
しかしながら嘘であることが当たり前のように見破られてしまう、ある意味、歌うたいより不器用な少女だ。
何せ嘘をつくことでしか自身の存在を確認できない。不器用ゆえに、上手く生きられないのである。


そんな少女が恋をした。
言うまでもなく、結果は明らかだろう。


世の中をスイスイと泳いで行く器用な人間がいる一方で、生きることにさえ汲々としている人たちもいる。

何が嘘で何が真実か。

何が悪で何が正義か。

見る方向によって、180度変わる。まるでコインの裏表のように。

そんな世の中にあって、信じられるものとは何だろうかと、問いかけられているような気がした。

歌うたいは愛を歌う。
オオカミ少女は嘘を語る。
愛おしいほどまっすぐに。

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新たな時代を象徴する、“Googleの逆説”とは。

岩井克人氏と小宮山宏氏監修のもと、公益財団法人・東京財団CSRプロジェクトがまとめた「会社は社会を変えられる」を読んだ。



本書の冒頭に、本書のタイトルにもなった趣旨がまとめられているので、少し長文になるが紹介しておく。

「企業が経済的利益のみならず、社会的な責任や社会からの要請にコミットすることで、社会全体の問題解決能力は上がる。しかしそれだけでなく、働く人々がそれぞれにやりがいと充実した経験を得ることでイノベーションが促進され、さまざまな問題を乗り越える活力を生み出し、社会のあり方を変容させることができる」

それが「会社は社会を変えられる」の意味なのである。

その大きなテーマをベースに、本書は3部で構成される。

第1部が小宮山宏氏の「なぜいま、会社の出番なのか」、第2部が社会を変える会社6社の紹介、そして第3部が岩井克人氏の「会社の存在意義とは何か」。

特徴的なのは、示唆に富んだ2人の考え方と実際に推進している企業の具体例を合わせて読むことで、世の中で求められるCSRに、より理解を深めることができるという点。彼らの知見が本書に奥行きを与えていることは間違いない。

さて、私が本書を手に取るきっかけとなったのは、帯にある『“Googleの逆説”から見えてきた未来をつくる企業のかたち』という言葉。

Googleの逆説とは、一体どういうことなのか?

岩井氏によれば、お金を追求しない会社が、もっともお金を儲けている、この逆説的な現象が世界のいたるところで起こっており、その象徴がGoogleということだそうだ。

この逆説的現象を引き起こしている最大の要因が『短期的利潤を追求することなく、情報や知識を使って世の中に貢献したい』というGoogleのミッションにある。

そして、これこそが資本主義の変質を何より象徴していると岩井氏は続ける。

お金儲けを目的にする企業は頑張れば頑張るほど、世の中から受け入れられなくなる時代。ミッションもなく、これからの時代の大前提を読み違えた経営者とそこで働く社員の末路は...想像に難くない。

事業を通して、世の中を、より良い場所にする。

重要なのはお金儲け以外の明確な目的が企業の存在意義になっていることではないだろうか。

そう考えれば、CSRと呼ぶかCSVと呼ぶかは些細な問題なのだろう。本書を読んでそう気付いたとともに、いよいよ経営者の資質が問われる時代になったと感慨深いものがある。

日本再生の切り札となるか、「CSV×イノベーション」が企業を変える。

デロイトトーマツコンサルティング、パートナーの藤井剛氏が書いた『CSV時代のイノベーション戦略』を読んだ。
副題に、「社会課題」から骨太な新事業を生み出す、とある。



今、日本のほとんどの企業に改革が必要なのは間違いない。問題は、何によって従来型のビジネスモデルを変革するかではないだろうか。その一つの回答が、本書で藤井氏がまとめた{CSV(Creating Shared Value)=共通価値の創造」による変革である。

CSVとはそもそも、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が2010年に提唱した、「経済的価値を創造しながら社会的ニーズに応えることで社会的価値をも創造する」というもの。

ともするとCSVはそれ以前にブームともなったCSRと比較されるが、CSRは事業によって得られた利益を社会貢献活動に使うというもの。利益が上がらないと取りやめになるというジレンマを常に包含しており、その評価もまちまちであった。そんな中、その課題をもとにまったく新しい考え方として登場したのがCSVと言える。本書でも藤井氏はCSVをCSRの延長線上で考えてはいけないと警鐘を鳴らしているほどだ。

日本においても、ポーターによって提唱されてから早い時期に書籍などでも紹介され、導入している企業も見受けられたが、今ひとつ盛り上がりに欠けた印象がある。先述のとおり、言葉が似ているせいかCSRに近い概念と考えられがちなところもその理由の一つかもしれない。

しかしながら、日本は課題先進国と言われるほど、時代の進化と逆比例するかのように、残念ながら社会的課題が続々と増えている。そういう意味では、CSVを推進する絶好の環境に現代はあると言える。ピンチとチャンスは常に背中合わせなのだ。

それではどのようにCSVを事業に取り入れてイノベーションンを生み出すか、が本書の最大のテーマであるが、
その推進方法として、本書で藤井氏は次の“三つの越境”を提唱している。

①「(自社が所属する)業界の枠」を超える
②「規制の枠」を超える
③「国境」を超える

いかがだろうか。内向きになりがちな日本の企業にとって最も苦手な考え方かも知れない。
しかしながら、アップルをはじめとするイノベーション企業の成功例を振り返ってみても、必要十分条件であることは疑う余地がないだろう。

より柔軟に、よりスピーディに、自ら仕掛けることによって新たな活路を見出していこうという試み、「CSV×イノベーション」を企業再生の切り札として取り上げた初めての書籍であり、それだけでも十分に読んでみる価値のある1冊ではないだろうか。

苦手とか得意とか言ってる場合ではなく、世の中のパラダイムシフトを読む限りとにかく取り組むほかないというのが私の結論である。間違いなく本格的なCSVの時代が幕を開けようとしている。本書を読んでその想いを強くした。

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「WHYはぶれずに、HOWはいつでも捨てよ」

元グーグル日本法人社長、その前はソニーでVAIOやデジタルTVの部門責任者だった辻野晃一郎氏が書いた「成功体験はいらない~しがらみを捨てると世界の変化が見える」を読んだ。

本書は自身の処女作「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」以来の2作目となる。



過去の成功体験。実にやっかいなものである。私のように大した成功体験がない者とでも、どこかで良い時代のイメージが残り、なかなか新しいチャレンジができなかったりする。それはひとえに「捨てる」ことが怖いからだ。

そのあたりを辻野氏は自身の経験を踏まえ、捨てたからこそ見えてきた世界があるとし、ソニー退職の意義と意味について書いている。

幸い時代は大きな転換期にあり、20世紀の延長線上で発想したり行動したりするのではなく、21世紀の新しいスタイルを生み出しながら、チャレンジをやり遂げて行くフロンティア精神が求められていると辻野氏。

そして、その第一歩となるのが、先にも書いた「捨てる」という行為なのだそうだ。

裏を返せば、やや楽観的ではあるが、捨てることさえ恐れなければ、ある程度どんなことでもうまくいくということかも知れない。

ソニー退職後Googleを経て今は自身の会社で新たなチャレンジを始めている彼の生き様は、まさに好例と言えるし、何より同世代としては勇気をもらった気がする。

さて辻野氏は本書で、自身の会社を設立した時に掲げた『21世紀の行動指針』を紹介している。次の10項目だ。

①最初から世界市場へ
②日本経済の新陳代謝を加速
③経営スタイル、企業カルチャー、ビジネス慣習の刷新
④少数精鋭、パートナー重視
⑤群衆の叡智の積極活用
⑥20世紀的にならない
⑦常識を疑う
⑧10年早く、10倍速く
⑨人のフォーカス
⑩天真爛漫

世界を相手にビジネスを展開してきた辻野氏ならでは言葉も多いが、私が注目したワードは「20世紀的にならない」だ。

成功体験を捨てると同意語だと思うが、時代が短期間で180度変わるほどの大きな転換点にあることを象徴していて、まさに言い得て妙だと思う。

最後に辻野氏は、「WHYはぶれずに、HOWはいつでも捨てよ」という言葉で締めくくっている。

WHYとは、なぜそれをやるのかというそもそもの目的。
HOWとはその目的をどのように実現するのかという手段。

ぶれてはいけないのは、生きて行く上での価値観、そもそものミッションだ。そこさえぶれなければ、あとはすこぶる柔軟に考え、楽しもう。

そんな前向きなエネルギーを吸収できる1冊であった。




1枚のシャツから日本を変える。急成長する鎌倉シャツのミッション。

もと広告代理店のコピーライター、その後ヨーカ堂を経て商業界に入社。現在はフリーライターの丸木伊参氏が書いた「鎌倉シャツ 魂のものづくり」を読んだ。



4900円のワンプライスライン、100番手以上の上質なコットンを使用、しかも国内縫製を貫く。
何から何まで常識やぶりの経営を実践する貞松社長とはどんな人物なのだろう。

本書を手に取った一番の理由はそれだった。

もともと鎌倉シャツを愛用していた私ではあるが、読んであらためてわかったことは、
社長の貞松のミッションの大きさ、強さだ。

本書の巻末には、その想いの一端を窺うことができる貞松語録が紹介されている。私が気になった文言をいくつか紹介する。

たとえば、

・シャツを手がける以上、本物を提供するのが使命。だから目先の利益は考えていない。
・日本の縫製業を支え、メイドインジャパンの良さを発信させていく。
・こうあるべきという信念と哲学の中に、商いのチャンスを生み出していくことが重要。
・働く人たちの自由裁量権を拡げ、働くことが自己実現につながる会社を目指したい etc

いかがだろうか。

志の高さこそ、鎌倉シャツを急成長に導いた最大の理由と言っても良いのではないか。

貞松社長は53歳でこの鎌倉シャツを起こしている。本書によれば、それまでに5度の倒産を経験してきているというから、人生わからないものだ。

その倒産を経験した会社のひとつが、日本のアイビー文化をリードしたVANジャケットだ。良きにつけ悪しきにつけ、貞松社長自身もその影響力の大きさを認めているが、貞松社長とvANジャケットの創業者、石津謙介氏との次のような粋なエピソードが本書で紹介されている。

師と仰ぐ石津氏のところへ創業の報告に行ったときのこと。
石津氏は「とにかく業界に一個の石を投げ込め。それが業界に波紋するようなことをやれ。俺が応援する」と言って、素敵なメッセージをくれた。貞松氏はその言葉を忘れない様、シャツを購入した時についてくるタグにその言葉を付けているそうだ。その言葉とは、

「私の門下生、貞松君夫妻がシャツショップを始めるという。そのシャツを彼が工場に立てこもって作り、彼女がそれを売るという。直接お客さまにだ。これこそが現代的S.P.A.というのだろう・そんな難しさに挑戦しようという。その心意気に私は大拍手をしたい。Spesial Shopとはこんな哲学と自信から生まれるのだ。メーカーシャツ鎌倉。お客様はきっと期待しているはずだ。きっと。」

自筆にしたためたこんな素敵な文章を送られた貞松社長は、感激し、意気に感じ、その後の成長につながっていったことは想像に難くない。

大切なことは嘘をつかないこと。

正直で誠実な心をモノづくりに昇華させてシャツの常識を変えてしまった、貞松社長と鎌倉シャツ。
本物には本物である理由が必ずあるのだ。まますます好きになった。
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