アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

飲食業のオープンソース化。未来食堂ができるまで。

小林せかいさんが書いた「未来食堂ができるまで」を読んだ。

未来食堂ができるまで


未来食堂。すでにマスコミ等で多数取材され紹介されているので、おそらくご存知の方も多いだろう。

本書は、その「未来食堂」の準備期間から開店、開店後までのすべてを時系列で、しかも脚色なしの事実・本音で余すところなく紹介した1冊。かつてない新鮮な読後感だった。

小林さんは、東京工業大学を卒業後、IBM、クックパッドで6年間エンジニアとして勤務。
その後、飲食業で起業したという異色のキャリアの持ち主だ。とはいえ畑違いでありながら、それまでのキャリアが決してマイナスではなくプラスとして全面的に活かされていることがすばらしい。それこそが、今日の成功につながった最大の要因なのではないか、そんな風に感じた。

キャリアが活かされていると思ういちばんのポイントは、タイトルにも掲げた、「飲食業のオープンソース化」に取り組んだというところだ。

「なに、オープンソース化って?」

それはこれまで誰もやってこなかった、事業計画書から月次の売り上げなど、お店にまつわるあらゆる数字をすべて公開していること。これまでの常識だと、公開することで経営的に大変なのか大変でないのかもわかってしまい、お店の営業や資金繰りに悪影響が出るのではないか、そんな風に考えて公開しないという選択がほとんどだっただろう。

けれど小林さんは違った。すべて公開することでお客様や世の中に共感される、そちらを選んだのだ。
それが話題になると狙ったわけではないが、結果的にそれが差別化の大きな要因となった。
なおかつ開店前に事業計画を公開することで、お店をはじめる大義への理解が進んだことも大きかった。
このあたり、今の時代の価値観をまさに肌感覚で知っている、そんな小林さんの天賦の才能を感じる。

この事業計画書、本書にそのままそっくり掲載されているので、これからお店を開こうと考えている人にとっては大いに参考になるのではないだろうか。この手の資料はなかなか手に入らないだけに、それだけでも十分購入に価するといえる。

さて、この事業計画書。じっくり目を通してみると、実に綿密に作られていることに、まずはじめに感心させられる。

特に事業として成り立たせるための収支計画は冷静かつ現実的で、あらゆる意味でリスク回避の手段が施されていて、補助金や融資する側から見ても説得力があると思った。そんな論理的な部分だけでなく、未来食堂というアイデアが生まれたストーリー、事業の目的…など感性的な部分でも、読み手をワクワクさせる内容だ。うーんと思わず唸らされてしまう。

もうひとつ感心させられるのは、これまでの飲食店にはなかった、新しいビジネスモデルの導入。
ランチは一品だけ。お店を手伝った人にはご飯を提供するというシステム「まかない」。食べたいものをリクエストできる「あつらえ」などなど。他店にないユニークさは、マスコミが放っておくわけがない。狙い的中だ。

競争が厳しい飲食業界にあって、開店間もなくから話題を集め、取材もひっきりなしの「未来食堂」。
たまたまテレビで取り上げられていて知ったわけだが、こうして書籍にまとめられたものを読んでみて、これで人気店にならないわけがないというほど計画そのものの完成度が高い。もう「まいった」の一言である。

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「イートグッド」 これからの時代を俯瞰するキーワード。

飲食業界のトレンドを伝えるオンラインマガジン「フードスタジアム」編集長、佐藤こうぞう氏が書いた「イートグッド 価値を売って儲けなさい」を読んだ。

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佐藤氏は、15年以上に渡って、飲食業界のトレンドを見続けてきた人。その彼が、過去から現在、そして未来への飲食業界を展望したのが本書だ。

私自身は飲食業界と関わりがあるわけではなく、ただ飲んだり食べたりすることが好きな人間のひとり。

そんな私がなぜ本書を手に取ったかというと、一にも二にもこれからの飲食業界を象徴する「イートグッド」というキーワードに引き寄せられたからである。

「イートグッド」とは、佐藤氏いわく、読んで字のごとく、“良い”を“食べよう”。そして、ただ食べるだけじゃなく、“食を通じて良いことを実践しよう”という非常にシンプルな考え方であると。

この考え方、食にかぎらず、世の中全般における共通の価値観である、というのが私の見解。
なので、世の中の大きな流れを知る意味で、大変価値のある1冊として手に取った次第である。

具体的に話を進めていくと、
業界でこのキーワードを最初に掲げたのが株式会社エピエリの社長夫妻だそうだ。
夫妻に言わせると「イートグッドとは、あくまで社内で共有する理念であり、お客様に対する思いである」。

そして、その信条としてホームページに記載されているのが、

・丹精込めて作られた生産者の方、そして物事の背景を想像する
・おいしい一皿への出発地点となる食材に対して感謝の心を持つ
・素材を大切に扱い、食材そのものが活かされる調理方法、プレゼンテーションを持って料理を提供する
・料理をもっともおいしく食べていただけるよう、フレッシュなうちに、熱いうちに、冷たいうちに提供する
・家族や友人、大切な人に食べてほしいと思える料理を提供する

以上、5つ。

上にもあるとおり、佐藤氏が「イートグッド」をこれからの飲食業における重要キーワードとして上げる理由は、「何のためにその店をやっているか、そのミッション、もしくは思いが問われ、その思いに対して人が共感し、店を選択する時代になっている」からだとしている。

まさに、今世の中から求められている企業のあり方そのものではないか。

さらに本書ではイートグッドを補完する意味でのキーワードとして、
「ハンドクラフト」「ファームトゥテーブル」「イートローカル」「オーガニック」「コミュニティ」「サスティナブル」などを挙げている。

重要なのは、佐藤氏も書いているが、これらのキーワードの象徴的な場所が、ニューヨークでもパリでもなく、アメリカの「ポートランド」であることだ。

コーヒーでいえば、ブルーボトルを代表とするサードウェーブコーヒー。デザインでいえば、サードウェーブデザイン。これらが単なるブームではなく、価値観の変化から生まれたトレンドであることをあらためて認識しておきたい。

トレンドをすべて受け入れる必要はないが、世の中の価値観は大きな転換期にあり、その萌芽的な要素がこの「イートグッド」という言葉には数多く包含されている。

食べることは毎日の生活と切っても切り離せない行為だけに、世の中の変化を敏感に感じ、反映されるのが飲食業界といっても良いかもしれない。

ゆえに、飲食業をテーマに、時代が向かって行く方向をわかりやすく解説している本書、飲食業界以外の人にもオススメの1冊である。

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ファッションビジネスには頭が痛い。「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」

かつて定点観測で一世を風靡した「アクロス」編集長、そして最近では若者のライフスタイル分析でおなじみの三浦展さんが書いた「毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代」を読んだ。

毎日同じ服

副題に「今を読み解くキーワード集」とあるように、若い人たち(主に20代)の最近の動きから60以上のキーワードを抽出、それぞれに対して三浦さんならではの分析で分かりやすく解説している。

全体を通して伺えることはひとことで言うと、「かつて主流だった価値観と今の若者の価値観は真逆」だということ。

我々の仕事に置き換えてマーケティング的に考えれば、かつての価値観や方法論では、もう今の若者の心と財布を捉えることはできない。そういったほうが適切かもしれない。

考えてみればこの世代の父親は、「ワンマンで頑固」というのが定番だ。従ってその子供はそれを見て育っているから自ずと反対の性格に育つ。それが世代全体の価値観にまで広がっている、背景にはそんな影響があるように思えてならない。

表題となった「毎日同じ服を着るのがおしゃれ」は、まさにその象徴的な価値観。

父親母親世代は、高度成長期の恩恵を目一杯受けて育った世代。雑誌ポパイが創刊、JJやCANCANがバイブルとなっていたようなバブル絶頂期に20代を過ごした。ゆえに、ファッションのトレンドを取っ替え引っ替え毎日全身で表現していた。それがおしゃれだったのだ。

翻って今の世代はまさにその真逆。取っ替え引っ替えはダサく、同じ服を着ることがおしゃれと。もちろん、清潔感は大前提で、同じ服といっても1着を毎日着回しているわけではない。同じデザインのシャツやパンツを何着か持ち、それを毎日着替えるというライフスタイルなのだ。

一見シンプルで何気ないけど、人によっては以外とお金がかかっていたりする。親父たちが仕方なくユニクロで買って同じスタイルになってしまうのとはわけが違う。

若い人を相手のビジネスをするのであれば、いささか極論にはなるが、ほぼ50代以上とは逆の価値観が今の若者の主流の価値観であると考えれば、間違いは少ないだろう。50代以上の人がもし会議で若者についての意見を求められたら、勇んで話す前に、“真逆真逆”と唱えるくせをつけたほうが良いかもしれない(笑)

帯にもあるように、かっこよかったものがかっこわるくなる。新しいものが古くさくなる。時代の逆転。そんな時代。
若い人に対しては、どうしたら物が売れるかと考えるのではなく、どうしたら彼らが自分らしいライフスタイルが過ごせるか、そんなところにビジネスのヒントがあるのではないだろうか。

それにしてもモノが売れないのは間違いないので、消費ありきの資本主義経済が行き詰まる理由がよくわかる。

コトラー先生いわく、時代は「マーケティング4.0」へ。

かのマーケティング大家、フィリップ・コトラー教授とネスレ日本の代表、高岡浩三氏の共著による「マーケティングのすゝめ」を読んだ。

マーケティングのすゝめ

副題に「21世紀のマーケティングとイノベーション」とある。

そもそもなぜ「マーケティングとイノベーション」に、わざわざ「21世紀の」とことわりをつけなければいけないのか?

それは、20世紀と21世紀の社会の変化こそが、「マーケティングとイノベーション」の考え方に大きな影響を与えているからにほかならない。

そして影響力の最たるものが、言わずもがなであるが、インターネットの登場と急速な普及にある。

マーケティングは第二次産業革命をベースに発展した20世紀の資本主義社会の成長期に生まれた。
ゆえに、あらゆる点で、インターネット以前の価値観で成り立っている。

それこそeコマースもなかった時代。すべてが否定されるわけではないが、過去のマーケティング理論が金属疲労を起こしているのは明白なのではないか。

それでは、大きく変化した時代の「マーケティング」はどのように考え、どのように実践したら良いのか?
それが本書のメインテーマである。

本書では、コトラー氏が主に「どのように考えるか」という理論部分を担当し、高岡氏が「どのように行動するか」という実践部分を担当する形で進んで行く。

コトラー氏のベースとなっているのは、自身が提唱した「マーケティング3.0」の考え方。

製品主導のマーケティング1.0の時代
顧客主導のマーケティング2.0の時代
そして今は、価値主導のマーケティング3.0の時代にあると。

そしてここからが本書の最大の関心事だと思うが、
コトラー氏は、「マーケティング4.0」という新しい概念を提唱、現在、世の中はそこへの移行期に入りつつあると述べている。

ご承知のとおり、マーケティング3.0とは、顧客に新たな価値を提供しようというマーケティングで、
「世界をより良い場所にする」という企業の価値観が問われるものだった。

これに加えて、コトラー氏は、顧客ひとりひとりの可能性を引き出し、顧客の自己実現を支援する企業の姿を「マーケティング4.0」として提唱している。

この象徴的な例として本書で紹介されるのが、ネスレ日本の「ネスカフェアンバサダー」である。
テレビCMでもおなじみ、すでに皆さんの会社でも導入されているのかもしれない。

単にコーヒーを売るのでも、美味しいコーヒーによって顧客満足を追求するものでもない。企業内でコーヒーを通して人と人が触れ合う心地よい場を提供するというものだ。その場に人が集うことで良好な人間関係が育まれ、今より優しい企業になれるのだと。

詳しくは本書をぜひ読んでいただきたいが、高岡氏によれば、これからのマーケティングのヒントは「顧客と顧客が抱える問題を再定義」することが重要なようだ。特に顧客が抱える問題は実際のところ顧客が気づいていないことが多い。ゆえに、気づいていない問題を気づく力=問題発見力がこれからのマーケターに最も必要な資質であると述べている。
もうひとつ、この気づいていない問題に気づくためには、インターネットの力をどう活用するか、それが重要だと。

つまり、21世紀型のマーケティングとイノベーションとは、ITを活用して、顧客が未だ気づいていない課題を、モノではなくコトとして提供する、ざっくりといえば、そんな感じになるのだろう。

高いところからみれば時代は大きな転換点にあるものの、毎日の生活の中ではなかなか変化が見えにくい。けれど見えにくいからといって安穏としていると、気がついたときには置いてけぼりにされてしまう。難しい時代にあるのが今なのではないだろうか。

そういう意味では、コトラー氏が提唱する「マーケティング4.0」、高岡氏のネスレ日本が推進する「ネスカフェ・アンバサダー」の取り組みは、時代の変化を感じとる眼を養うには格好の例だと思う。ぜひ一読をオススメしたい。


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英国発クラフトビール“BrewDog”。熱狂を生むパンク経営哲学とは。

短期間に急速な拡大を続けるクラフトビール会社「ブリュードッグ」。その創業者であり共同経営者であるジェームズ・ワットが書いた「ビジネス・フォー・パンクス」を読んだ。

ビジネスフォーパンクス

いやぁ痛快!もうその一言に尽きる!

ビジネス書とは思えない爽快な読後感。あっと言う間に読み切ってしまった。

しかも、ただ面白いだけではないのだ。今の時代の、ビジネスの本質をズバッと突いている。

その面白さは、タイトルからも伺える。
なにせ「ビジネスフォーパンクス=パンクなやつらのためのビジネス」、なのだ。

ビジネスとパンク、一般的には対極にあると思われる要素を同列に並べてしまう。
ビジネスの成功はそれくらい既成概念を打ち破らなければはじまらない、といわんばかり。

さて。
ブリュードッグは、2007年にスコットランドで産声を上げたクラフトビールの会社。
彼の言葉に説得力を感じるのは、実際に創業以来、毎年倍々ゲームで成長、
8年あまりで500人を超える企業に成長しているという現実にある。
成長の秘訣は、一にも二にも彼ら創業者の経営哲学にあることは間違いない。

・始めるのはビジネスじゃない。革命戦争だ
・人の話は聞くな。アドバイスは無視しろ
・事業計画なんか時間の無駄だ
・嫌われ者になれ
・永遠に青二才でいろ
・すべてがマーケティングだ。
・顧客ではなくファンをつくれ

本書に登場するワットの言葉。
こうして列記してみても、会社の独自性がわかるのではないだろうか。

冒頭にも書いたが、本質を突いていると思うのは、今の時代の成功条件である
「マーケティング&イノベーション」を確実に押さえていることだ。

特にイノベーションはコモディティ化が進む世の中では必須条件となりつつあるだけに、
彼らの発想はとても参考にできる。
どんなにマーケティングに長けていても、それだけでは今の時代、片手落ちだとあらためて知らされる。

ここでは書かないが、良い悪いは別にして消費者とのコミュニケーションも超過激。
好きか嫌いか真っ二つに分かれるような…
もうここまでやったら否が応でも注目せざるを得ない、見事に手の内にハマってしまうのだ。

常識の真逆を行く。戦うのはライバルではなく自分自身。ただ信じる道を猛スピードで突っ走る。

明確な経営哲学が、世の中の共感を呼ぶ。あらためて、こんな時代になったんだと感嘆する1冊だった。


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