アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

2024年までに「会社」は一度死ぬ。そんな時代の企業の在り方、働き方とは?

経営コンサルタント、神田昌典さんが書いた「未来から選ばれる働き方〜会社がなくなる時代のキャリア革命」を読んだ。
(正しくは、後述するようにUTグループ社長、若山陽一さんとの共著)

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2012年に出した著書「2022ーーーこれから10年、活躍できる人の条件」で、2024年には「会社」がなくなる。と予測した神田さん。

あれから4年、間違いなく時代はその方向で進んでいる、しかも加速度を増して。その確信が、神田さんに本書を書かせる大きな動機のひとつとなったようだ。

確かに、東芝の巨額赤字やシャープへの鴻海精密工業の支援、またつい最近では三菱自動車の燃費改ざん問題など、大企業が地に堕ちるような出来事が相次ぎ、かつての栄光は見る影もない。ある意味、資本主義社会における「会社」の限界を感じざるを得ない状況にあるのだ。神田さんの予測はまんざらでもないと、多くの人が感じられるのではないだろうか。

本書の冒頭で神田さんは、前書からの4年間で会社をめぐる「環境」の変化について、次の3つを挙げている。

(1)社内で価値を創る時代から、社外で価値が創られる時代へ
(2)社内で予算を獲得する時代から、社外で資金を調達する時代へ
(3)人を育てる時代から、ロボットを創る時代へ

中でも、私が特に見逃してはならないと思ったのが、(1)の「社外で価値が創られる」の意味だ。

神田さんはその典型例として、Airbnb(エアビーアンドビー)、Uber(ウーバー)のビジネスモデルに着目する。

前者は部屋を貸す人と宿泊先を探している人を結びつけるマッチングビジネス。後者は、自分の車に人を乗せる「運転手」と乗せてもらう「ユーザー」を結びつけるマッチングビジネス。

さまざまなメディアで取り上げているので今では知らない人は少ないと思うが、実はこれらの会社、アメリカで誕生してからまだ数年しか経っていない。以前では考えられなかったその急成長の理由のひとつが、社内のリソースをほとんど持たない、使わないということだ。

たとえばAirbnb(エアビーアンドビー)の競合となるのはホテルであるが、ホテルの場合は自前で建物を作る、従業員を教育する、お客様をもてなすサービスを考えるなど、資金と労力をかけて自社内で価値を創らなければならない。

対してAirbnb(エアビーアンドビー)はといえば、部屋を提供する人と借りたい人を結びつけるプラットフォームを用意することがすべてといっても良い。価値そのものはそこに参加する提供者と利用者が作ってしまうのだ。
問題は安心・安全を誰が担保するのかという点だが、その心配もいらない。進化したITが解決してくれる。
Uber(ウーバー)のビジネスモデルも同様である。

こうしたプラットフォームをベースとした新たなビジネスが続々と生まれてくる時代に、多くの社員や不動産を抱える旧来のビジネスが今のままで生き残れるわけがない。神田さんが2024年に「会社は一度死ぬ」という意味は、こういうことなのである。

さて。本書はそんな時代を予測して、いち早く「正社員を派遣する派遣会社」として急成長を遂げているUTグループ社長、若山陽一さんとの共著となっている。神田さんの時代分析に対して、その実践例として若山さんが自社の価値観を話す。それにより、読者はこれからの時代の働き方を自分ごととして考えることができるというわけだ。

若山さんの話はまた別の機会に書くとして、神田さんの話に戻すと、
第5章で神田さんは「コネクティング・インテリジェンス」という本書の核となっている重要キーワードを掲げる。

コネクティング・インテリジェンス。
具体的にいうと、「内面と外面のズレをなくし、常に、それらを一致(コネクト)させていく知性」という意味。

これからの時代は、日常のすべてが情報化され、内と外を隔てていた壁が透明になっていく。ゆえに、これからの時代には、ズレをなくす能力を持つ人や組織が、驚くほどの影響力を放てるようになると。

その背景にあるのは、インターネット、中でもSNSなどの進化による情報のフラット化と個人のメディア化だろう。

企業が自社で情報を囲い込むことや情報を隠蔽することがまず無理になった今、「透明性」という価値観をいち早く受け入れることで、企業も個人もイニシアティブをとることができるようになる。それこそが神田さんのいう、これからの「企業の在り方」であり個人の「働き方」なのではないだろうか。

2024年より早いか遅いかは別として、この先、仕事人生を一社で勤め上げるなどということが成立しないのは間違いない。だからこそ、自らの意思でキャリアを設計することが重要になってきているのだ。

このタイミングで、この本と出会えた人は運が良いのかもしれない。それだけでなく、この本を読んで行動に移せた人は必ずあの時この本に出会えてよかったと言える時がくるはずだ。

神田さんの時代を見透す力、相変わらず衰えを知らない。

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物語をテコに会社を変える。ネット、SNSの時代に効く「物語戦略」。

大手広告会社のコミュニケーション戦略プランナー岩井琢磨さんとマーケティングディレクター牧口松二さんが書いた「物語戦略」を読んだ。

二人はともに早稲田大学ビジネススクール教授、内田和成さんに学んだという縁で、内田さんが本書の監修を務めている。

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「君の言っていることは正しいけど、おもしろくない」

広告会社などでクリエイティブに携わる人間であれば、まず最初に浴びせられる言葉。
幾多の洗礼を受けて、クリエイターとして一人前になっていくというのが二人の著者と内田さんの共通認識だ。
かくいう私も、現役時代は最後までその呪縛が解けなかった。

これはクリエイターにかぎらず、実は企業の戦略においても同じ、というのが本書を書いたきっかけのよう。

それでは企業が「正しいけど、おもしろくない」戦略を脱却するためには、どんな「おもしろさ」が必要か?
それが本書のテーマである。

著者たちは、その「おもしろさ」の答えを、「企業のシンボリックストーリー」に見出した。

シンボリックストーリーとは

①企業の強みを象徴している
②企業の戦略方針に合致している
③思わず人に話したくなる

という要件を満たす物語と、著者たちは定義する。

本書に登場するシンボリックストーリーは、

「沈まないトランク」のルイヴィトン。
「売っていない商品の返品に応じる」ノードストローム。
「100万人の命を救ったエンジニア」のボルボ。
「勤務中に社員をサーフィンに行かせる」パタゴニア。

などなど、業種業態も多岐にわたる。

さて、おそらく読者共通の関心事は、今なぜ、シンボリックストーリーが、企業の「おもしろさ」の源となり、
他社との差別化につながるのか?ではないだろうか。

その背景には企業の競争環境の変化があると、ふたりは言う。
その変化とは、「個人のメディア化」と「ビジネスモデルの同質化」の二つ。

「個人のメディア化」
メディアの主役がマスメディアからインターネットに変わり、個人が主体的に情報発信ができるようになったこと。
企業のおもしろい物語が、スマホをベースにすごいスピードで拡散されるようになったのだ。

「ビジネスモデルの同質化」
ビジネスモデルの模倣が容易になり、なかなか新しいビジネスモデルが成立しにくくなったこと。
そんな中で、独自の物語は他社が真似することは難しく、新たな戦略の核となりつつあるのだ。

こうした理由から企業の物語の重要性が増しているわけだが、ただやみくもに物語を打ち出せば良いというものではない。
使い方によっては諸刃の剣に。肝心なのは、その活用の仕方だ。

ふたりは「ビジネスモデルの核に物語を埋め込む」ことが重要と言っている。

本書ではビジネスモデルを構成する要素を、

①顧客に提供する価値
②競争優位性の持続
③儲けの仕組み

と定義するのであるが、シンボリックストーリーはその各要素の独自性を高める物語でなければならないのだ。

ここまで読んで、あらためて先進企業のシンボリックストーリーを眺めてみると、なるほどそういうことだったのか!と腹落ちできる。

シンボリックストーリーは0から生み出すものではない。
どんな企業にもシンボリックストーリーは眠っているのだ。
本書ではそのシンボリックストーリーを掘り起こす方法もわかりやすく紹介されている。

紹介されている事例は大企業のものが多いが、そのエッセンスは中小企業でも十分に取り入れることが可能であり、差別化という視点からいえば、むしろ中小企業にこそ取り入れる価値があるのかもしれない。

インターネットが、そしてSNSがコミュニケーションの主役となりつつある時代だからこそ、企業にとって理念に沿った物語が重要。私も全面的に賛同する。

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1通の手紙でP・マッカートニーを口説き落とした男の文章術とは?

ノンフィクション作家、野地秩嘉さんが書いた「SNS時代の文章術」を読んだ。

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「はじめまして、取材したいんです」

野地さんはかつて「餃子の王将」社長に取材をして本を書いた事があることから、社長が何者かに銃撃され命を落とした時、メールや電話などで数多くの取材依頼が届いたという。

そんななかで、1件だけ通信手段の違う依頼があったのだそうだ。
それがフェイスブックによるもので、文面は前述のとおり。
明らかに時代は変わったと、その時、野地さんは感じたらしい。

野地さんいわく、メールの時代の文体には、まだそれまでの時代の名残があった。
しかしSNSの時代には杓子定規な前置きや挨拶文は必要なくなった。
何せ短い文章で用件だけ伝えなければならないから、単刀直入なのである。
ゆえに文体も口語体が主となる。電話の音声の代わりの文字といっても良いかもしれない。

本書で野地さんは、文章のプロへの取材でわかったSNS時代の文章の特徴を次のようにまとめている。

1.文章に写真や動画、絵文字がついてくる
2.記号。句読点が増えている
3.読む人を意識した文章になっている
4.読む人に目の高さを合わせた文章が好まれる
5.文章の中の漢字が減った
6.文は短くなり、体言止めが増えている
7.コロケーション(連句、あるいは連語のこと)が間違っている
8.個性と賢さを出したい人たちが文章を書いて投稿している

いかがだろうか、「そうそう」と思い当たる節があるのではないか。
特に8番目は、言われてみると私の周りにもそんなタイプが多いように感じた。そういう私もそのように見られているかと思うと、なんとなく気恥ずかしくも。

さて、肝心の文章術についてであるが、本書で野地さんは、180度変わったと言ってもいい、SNS時代の文章の書き方を多角的に教えてくれている。

しかも書き方の話はSNSに限定されず、手紙、企画書と多岐にわたる。もっといえば、SNSと銘打っているものの、文章術は過去の例、たとえば野地さんにとっては最大の成果であろうポールマッカートニーに取材を依頼して見事に成功した時の手紙やユニクロの柳井さんの年頭挨拶、ソフトバンク孫社長の高校時代の企画書なども例に。

以上。

とはいえ野地さんの本書における結論は、これまでの話からすると、いささか逆説的だ。
SNS時代になって、文章を書くのに大切なこと。それはオーガニックな文章を書くことだと。

オーガニックな文章とは、プレーンで飛び跳ねた表現のない文章。そして、形容詞も控えて、事実だけを淡々と書く文章。そうやって、そっけない文章を書いていると、その中に書いている人のキャラクターが出てくるのだそうだ。個性とはすなわちそれであると。

オーガニックな文章とは言い得て妙。まさに時代もオーガニックな方向に進んでいると。これまで意識したことはなかったが、確かに文章も、時代の移り変わりとともに愛されるスタイルが変化している。しかし、本当に重要なのは「伝える」ことの本質は昔も今も変わっていないということだ。

「書く」ということを、あらためて考えさせられた1冊だった。

デザインとは見た目ではない。まさに「デザインの誤解」を解く1冊。

グッドデザインカンパニー代表、クリエイティブディレクターの水野学さんが書いた「デザインの誤解」を読んだ。
(副題が、今求められている「定番」をつくる仕組み)

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今欲しいものはありますか?

そう聞かれて、「これが欲しい!」と即答できるものがあるだろうか。

もちろん消費欲がないわけではないが、自分自身に問いかけても、どうしてもというものは今のところ見当たらない。
昔と比べると圧倒的に消費意欲が減退しているのは間違いないのだ。

若者がクルマを買わない理由もなんとなくわからないでもない。

それはそもそも大量生産・大量消費の時代がとうに終わったことを意味している。
多くの人の価値観は、安いものを使い捨てる消費から、多少高くても良いものを長く使う消費スタイルに変わりつつあるのではないだろうか。

それではそんな時代に、モノはどうすれば売れるのだろうか。

そのひとつの解答が、水野さんたちが立ち上げたオリジナルブランド「THE」の取り組みだ。

コンセプトとは、“皆が共有しておくべき地図のようなもの”と前置きして、
「THE」のコンセプトを、新しい「定番」となるべき基準となる商品をつくる、と位置付ける。

醤油差しといえば。ご飯茶碗といえば。洗濯洗剤といえば。

それこそ「THE○○○」、ともいえる商品をデザインすること。

昨今の情報で多くの人には理解が進んでいると思うが、デザインとはかっこいいとか、クールとか「見た目」のことではない。生産や流通も含めて人の手に渡るまでをトータルに考える「デザイン思考」を意味している。

彼らの取り組みで見習うべきとあらためて思ったのは、徹底した情報収集。
それも単に競合商品を集めるというレベルではなく、たとえば醤油差しであれば、歴史を徹底的に掘り下げ、なぜその形に至ったのかをとことん突き詰める。そうしたプロセスを経て、はじめて「THE」と称することができる商品を生み出すことができるのだと。

論理や理屈も大切だけど、それだけではイノベーションは起こせない。そこで重要になるのが「デザイン思考」だ。
しかも思考というだけに、その能力を身につければ、これからのビジネスシーンにおいて大きなイニシアティブを持つことができるのは想像に難くない。

そういう意味ではあらゆるビジネスマンにとって、今だからこそ知っておきたい発想の種が包含された1冊である。

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地域×クリエイティブ×仕事。淡路はたらくカタチ研究島の4年間。

淡路はたらくカタチ研究島監修による「地域×クリエイティブ×仕事〜淡路島発ローカルをデザインする」を読んだ。

地域×クリエイティブ×仕事

まず、ほとんどの人の疑問は「淡路はたらくカタチ研究島」って何?だろう。

淡路島はたらくカタチ研究島とは、淡路島における雇用創出をめざす、厚生労働省からの委託による事業の名称。
島の豊かな地域資源を活かした家業・生業レベルの起業や商品開発をサポートするプロジェクトだ。

本書はその波乱に満ちた取り組みと成果について、役割を終えた事業の集大成としてまとめられている。

波乱に満ちた、と書いたのは、すでにスタート時点から想定外の出来事が次々と襲ったこと。
呼びかけに集まったはいいものの認可申請が滞り、1年以上も職がないままだったというメインスタッフ。
そして、なんとかスタートに漕ぎ着けたものの、プログラムがまとまらず、またまた時間が過ぎるばかり。

こうしてみると、官公庁からの委託事業というものの辞書には、順調などという言葉は載っていない、そんな気にもさせられるほど難しさを知らされた。プロ中のプロという人間が関わってもこれほど大変だとは。

これは一般的な企業のスタートアップにも共通の話だと思うのだが、この時期をいかに過ごすかで、その後の果実に大きな差が出るような気がする。

結果として、本書を読むかぎり、この事業は当初の想定以上の大きな成果を生んで終わったようだ。

本書では、提供者側に立ってサポートした、デザイナーや料理家、ファシリテイターなどのさまざまな人の取り組みと感想。反対に受益者として、実際に起業や事業の立ち上げを行った人の取り組みと感想。送り手と受け手、両者の視点からこの事業の意義を知ることができた点で大変参考になった。

そして、何よりこの事業の成果は、小さいながらも現実の起業を数多く生んだことにある。

それまで夢は描いていたものの行動に移せなかった人たちの背中を、力強く押せたのだ。雇用を生むためには、雇用を生める事業を数多く起こす必要がある。その明確な理念の共有がこの成果につながったのだと思う。

それにしてもサポートに関わった人は、働きかた研究家の西村佳哲さんはじめ、そうそうたるメンバー。スーパーバイザー江副直樹さん、地域アドバイザーとして旗振り役となったやまぐちくにこさんの人間力が大いなる人の輪を生んだ、そんな気がした。人の力、人と人のつながりこそ、お金や行政のバックアップより、もっともっとこういった取り組みの成功を左右するもの、そんな気がしてならない。

このような事業の集大成を1冊の本として時系列で読むことができる意義は大きい。この先同様の事業、地域再生のプロジェクトを考えている人にとっては貴重な参考書となるだろう。


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