アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

エクスマの藤村正宏さん、最新刊のテーマは「つながりの経済」。

エクスマの藤村正宏さんが書いた『「つながり」で売る!7つの法則』を読みました。

「つながり」で売る!7つの法則

エクスマとは、エクスペリエンス・マーケティングの略。
モノからコト、体験をベースにしたマーケティングで数々の実績を残している藤村さん、ご存知の方も多いでしょう。

そんな藤村さん、今回のテーマは「つながりの経済」。

今はいきなり買ってもらうことを考えるより、まずはつながり=関係性をつくって、その結果として買ってもらったほうが良く売れる。そんな時代のマーケティングを、藤村さんは「つながりの経済(=つながりの消費)」の7つの法則として、本書にまとめています。

私にとっても、「つながり」と「つながりが生む消費の大転換」は、このところの最大の関心事ですが、この順番、藤村さんも言っていますが、今までのマーケティングとは真逆。

あくまで「売ってからつながる」のではなく、「つながってから売る」。この順番が重要なのです。

そして、かつての真逆の時代のマーケティングでは、なんといっても広告が主役でした。
対して、すでにおわかりのように「つながりの経済」の主役はSNS。FacebookやInstagram、Blogなどです。

そう考えれば「つながりの経済」では、かつての花形であった「ハンター型の営業」も必要ありません。
それどころか彼らが売りの意識をガンガンに持って表に出れば出るほど、悪い評判が拡がり、
企業の価値まで落とすことにつながりかねないのです。

もし今だにこのような営業スタイルが推奨されているとしたら…。
あなたの会社が市場からの退場を余儀なくされる日も遠くないかもしれません。

それにしても、広告とハンター型営業、あらためて考えてみると共通点が多いですね。

そうこういっても、SNSはまだまだリスクも多いのではないか?
そんな疑問を持って、SNSの活用に二の足を踏んでいる企業に対して、藤村さんは本書の中で「新しいルールの新しいゲームが始まっている」と書いています。

重要なのは、時代の価値観(新しいルール)が変わっていることを受け入れること。SNSを使うか使わないかはあくまで手段にすぎないということです。たまたま勝者になれたのは、過去のルールであったから、それに気づいているかどうか…
かつて日本のスキージャンプが圧倒的な強さを誇っていた時、ルール改正により一気に勝てなくなった、そんな時代を思い出します。

時代が変わったのだから、価値を入れ替えて、コミュニケーションツールを時代に合ったものに変える。
それが真の時代対応ということではないでしょうか。

「時代なんてパッと変わる。」
かつて高度成長期に、名コピーライター秋山晶さんが書いたコピーですが、その変化のスピードは、今や当時の何倍何十倍にも加速しています。

そんな時代のキーワード「つながりの経済」。
そろそろ企業コミュニケーションのあり方を根本的に見直すことが必要なときだと思いますが、いかがでしょうか。

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とうふを売るな。思いを売れ。おとうふ工房いしかわのまっすぐ経営術。

皆さんは、一丁いくらくらいの豆腐を買うでしょう?
日常的には、国産大豆の豆腐を選んでも、せいぜい100円から150円程度といったところでしょうか。
スーパーの客寄せ商品ともなれば一丁50円以下もざら。それでどうやって利益を出すか、以前仕事でお世話になった豆腐製造会社の社長が頭を悩ませていたことを思い出します。

そんなわけで今回ご紹介する本は、豆腐製造を主たる事業として愛知県高浜市に本拠を構える「おとうふ工房いしかわ」の石川伸社長が書いた「年商50億のまっすぐ経営術」。ちなみにいしかわの豆腐は一丁300円近くもします。

いしかわまっすぐ経営術

家族経営、町の小さな豆腐屋さんを引き継いで25年、今では年商50億円を超える売上の会社に成長を遂げた「おとうふ工房いしかわ」。
とはいえ、決して順風満帆であったわけではないようです。そんな窮地を救ったのは…
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、いしかわ社長はその成長のポイントを以下のように綴っています。

(1)国産大豆とにがりの豆腐にこだわったこと。そして決して安売りをしなかったことです。
   本書のタイトルにもあるように、ブレないまっすぐな経営が最大の成功要因だったように思います。

(2)子供たちの「旨い、安全、安心(社是でもあります)」にこだわったこと。
   こどもに食べさせるためには、特に安全な商品であることが重要で、
   それが時代に先駆けて、世の中の評価を受けることにつながったのです。

(3)もうひとつ挙げるとしたら、ネーミングに知恵を絞ったことでしょう。
   いしかわの代表商品である「究極のきぬ」「至福のもめん」はまさにその象徴ではないでしょうか。

そのほかにも、本書では「顔の見える経営」「おとうふエンターテイメント」「先輩・後輩のバディシステム」「毎月のお誕生日会」「農泊研修など、アイデアマン石川社長の本領発揮とも言える成長のエッセンスがぎっしり詰まっています。

決して妥協せず、商品を貶める値引きは頑ななまでにしない。
ここまで考え実行したら、あとは成功するしかない。そんな気持ちを抱かせる石川社長の一途さ、純粋さ。
たまたま夕方出かけたスーパー「フランテ」のおとうふ工房いしかわのコーナーが、いつも以上に輝いて見えました。

おとうふ工房いしかわの石川社長の経営術は、まさに経営の原理原則に則ったもの。経営者が読めば自社に何が欠けているか、また幹部が読めば自分がどんな役割を果たすべきか、今のあり方を見つめ直したいと思うのであれば、読んでみて損のない、そんな1冊です。

「空に牡丹」。打ち上げ花火に魅せられた男の物語。

愛知県出身の女流作家、大島真寿美さんが書いた「空に牡丹」の読後録です。

空に牡丹

実のところ、小説と呼べるものを読んだのは、何年ぶりでしょうか。
唯一の例外が村上春樹さんの長編小説。それを除けば、少なくとも2年くらいは読んでいないかもしれません。

そんな状況で手に取ったのが本書。花火に取り憑かれ全財産を花火に注ぎ込んだ男の物語です。

読むきっかけとなったのは、友人である、日本でも有数の花火師、磯谷さんの会社のホームページを作らせていただいたこと。

「花火師」という職業への理解を深めたく探した結果、行き着いた1冊。
仕事を終えた今、あらためて読み返し、感想をまとめてみました。

物語の舞台は、明治維新直後の、おそらくは山梨あたりの村(本の中では、丹賀字多村)。
主人公は、大きな地主の家に生まれた静助さん。

子供時代に、たまたま所有地に移り住んできた花火職人に感化され、いつしか花火に魅せられ、花火の打ち上げに持てる全ての財産を捧げてしまう。ある意味、穀つぶしの典型のような人物ですが、それがなんとも憎めない存在なのです。

大島さん自身、書くにあたっては、おそらくかなりの量の取材をされたのではないでしょうか(愛知県出身だけにひょっとしてと思い、磯谷さんにも聞いてみましたが、彼への取材はなかったとのこと)。
その描写の繊細さ、磯谷さんから聞いた話も合わさって、物語の世界にどんどん引きこまれていく自分がいました。

今と違い(もっとも、本質においては似たところもたくさんあると思ってますが)、技術も確立されておらず、まだまだ花火の打ち上げが理屈抜きの楽しみであり、ひとことで言えば「道楽」であった時代です。

そんな時代ですので、ただただ村人たちが喜ぶことを糧に、あるだけの田圃を売って注ぎ込んだ結果、残ったのは食い扶持を賄うだけの小さな土地のみ。その背景には、維新後の武家の没落、下克上をめざす新たな商人の誕生など、激動とも言える変化が…。
それでも静助が誰よりも幸せに映るのは、現代に失われてしまった人としての純粋さ、一途さなど、大切なものを持っているからではないでしょうか。

時代は違い、今はビジネスとして確立されている打ち上げ花火ですが、磯谷さんと話をすると、花火にかける想いには同じようなピュアさを感じます。
一瞬の煌めきにかける溢れんばかりの熱量が多くの人の心を捉えて離さない、あらためて、花火師とはなんともうらやましい職業であると思いました。

今年もまもなく、全国さまざまな町々で花火が打ち上げられるシーズンがやってきます。

この小説を読んだことで、はたして花火の見方が変わるのでしょうか。その瞬間が今から待ち遠しい、そんな想いです。



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読了「学校蔵の特別授業〜佐渡から考える島国ニッポンの未来」

佐渡にある日本酒の酒蔵「真野鶴」五代目蔵元、尾畑留美子さんが書いた「学校蔵の特別授業」。

学校蔵の特別授業

課題先進国と呼ばれる日本、その中でもさらに課題の最先端をいく佐渡での「学校蔵」の取組み、そしてそこで行われた特別事業の内容を再現する1冊です。

少子化、人口減少、高齢社会、過疎…これからの日本を考える上で避けて通れない課題に対してのさまざまなヒントが詰まっていて、ある意味、勇気と元気をもらえました。

舞台は、少子化の影響で廃校となった小学校です。

廃校舎の再活用例は全国でさまざまありますが、ここで尾畑さんたちが取り組んだのが、他では類をみない「酒蔵」としての再活用……。

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尾畑さんは、佐渡で1892年から酒造りを続ける蔵元、尾畑酒造の次女として生まれました。
女二人の姉妹ということで、幼い頃から漠然と酒蔵を継ごうと考えていたそうです。
しかし中学校の時に姉夫婦が酒蔵を継いだことで、自身は方向転換して東京の大学へ。
卒業後は映画配給会社で宣伝の仕事に携わりました。

そんなわけで東京生活を満喫していた尾畑さんですが、家業を継いでいた姉夫婦が父親とソリが合わず出て行ってしまったこと、父親が病院で入院したことなどをきっかけに「蔵に帰ろう」と決意したのが1994年。

帰った当初は、やることなすことうまく行かなかった、しかし5年目のある日、はたと気づいたのだそうです。

うまく行かないことを誰かのせいにすること、逃げることをやめてみようと。

そうしたら不思議、そこからいろいろなチャンスが舞い込んでくるようになったとか。

ターニングポイントとなったのは発想自体の転換。

縮小する市場で他社とシェアを奪い合うのではなく、微力でも市場そのものが大きくなる方向性に取り組みを変えました。

日本酒離れが著しい若年層を対象にセミナーを開いたり、海外で活躍するビジネスパーソンに酒講座を開設したり。
直接には自社商品の販売と関係ない企画を意識的に仕掛たのだそうです。

そんな地道に積み重ねた結果が、かつてない「学校蔵」の取り組みにつながっていきます。

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学校蔵でめざすのは次の4つの取り組み。

1.酒の製造
2.学び
3.交流
4.環境

本書で紹介されているのは、まさに3.交流の場づくりとして開催された3人の先生を招いての特別授業です。

3人の先生とは、
藻谷浩介さん
酒井穣さん
玄田有史さん

いずれも地方創生の取組みにおいて独自の視点を持った、私も大好きな人たち。

3人が尾畑さんと熱く語り合った内容は、佐渡というフィルターを通してみた、まさにこれからの日本が直面する課題の縮図といったものでした。

日本酒好きだからより感情移入して読めたということもありますが、それを抜きにしても、日本文化の象徴ともいえる日本酒の持つポテンシャルの高さ、人をつなぐツールとしての存在価値、なぜ今、日本酒が注目されているのかをあらためて知ることができました。

学校蔵。なんだかワクワクしてきませんか(笑)

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読了「体験デザインブランディング〜コトの時代の、モノの価値の作り方」

「デザイナーと芸術家の違いは?」そう尋ねられて、明確に答えらえる人はどれくらいいるでしょうか。

どちらもクリエイティブなポジションにあることは間違いありませんが、いちばんの違いは、目指すゴール。

その違いを、本書「体験デザインブランディング」で、著者の室井さんはこんなたとえで説明しています。

体験デザインブランディング

「平たく言えば、芸術家の夢は美術館にたどり着くことであるが、デザイナーの夢は市内のスーパーにたどり着くことである」
芸術家は芸術家として尊敬されるべき存在ですが、デザイナーは戦略家として、表現の世界を泳ぎ続けてはならないのです。

うまいこと言いますね(笑)。

デザイナー=戦略家

今やデザイナーのポジションは、チラシや雑誌の文字や写真を上手にレイアウトする表現の世界の人ではないのです。むしろ、経営者のパートナーとして、そのような見える価値ではなく、「見えない価値」を創造することこそ、デザイナーの重要な役割であると。

企業ブランディングを手がける、クリエイティブディレクター佐藤可士和さんや水野学さんをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。決してかっこいいツールを作ることを目的としていないのです。むしろデザインが目立たないことの方が重要なのかもしれません。


デザイナーが行うべきデザインをそのように規定して、本書で室井さんが展開するのが、「体験デザインブランディング」。

顧客の心をつかんで離さないブランドには、ある共通する要素があると室井さんは言います。

それがコトのデザイン「ブランドエクスペリエンス(ブランド体験)」

すぐれたブランドは、商品やサービスを「顧客体験=コト」という視点で編集し直し、新たな視覚的デザインを加える事で、どこにもないブランドを創造し続けている。特に重要なのは“クリエイティブな視点を持ちながら”だと。

この代表例が、言わずもがなですが、アップルではないでしょうか。


それでは、従来にないこうした新しい価値や視点というのは、いったいどこから生まれてくるのでしょうか?
室井さん曰く、それこそが本書のテーマでもある「デザイン発想」なのです。

本書では事業戦略にデザイン発想を加えることで、魅力的なブランドを生み出している企業の事例を紹介することで、体験デザインと視覚的デザインの重要性や作り方を解き明かしています。

どちらかというと、現代はWebやバーチャルな体験が優先される時代背景にありますが、室井さんが重視するのは、あくまでリアルなブランド体験
ブランディングを体験デザインの観点からとらえた書籍は稀有で、そういう意味では貴重な1冊です。

室井さんは、ブランド体験の構成要素として次の3つを挙げています。

Operation(人)、Product(モノ)、design(空間)。

「人」は、接客。どんなスタッフが、どんな格好で、どんな接客を行うか。
「モノ」は、主には商品。店内でどのように扱われるか、見せるか。
「空間」は空間デザイン、サインやインテリアはどのようなものか。などです。

加えて重要なのは、3つをつなぐ「体験シナリオ」であると。

来店者がどのような順番でブランド空間を体験していくかを具体的に作成することで、
より体験の精度が上がると室井さんはいいます。

本書の最後で、室井さんが取締役として経営に参画している「表参道布団店。」の事例が紹介されますが、まさに自身の考え方の実践例として、非常に興味深く読むことができました。

モノ自体での差別化が難しくなり、モノが売れない時代に、経営戦略がどのようにあるべきか?
その答えの一つがデザイナーの経営への参画であり、体験デザインによるブランディングなのではないでしょうか。

私自身がめざすところであり、それゆえに手に取った書籍ではありますが、経営の先行きに悩む経営者の方々にとっても一つの突破口となる戦略、それが「体験デザインブランディング」であることは間違いありません。

そして、広告の衰退で燻っていたデザイナー、クリエイティブディレクターの存在、ふたたび表舞台で脚光を浴びる時がきました。

〜もと博報堂、アーキセプトシティ代表/クリエイティブディレクター/一級建築士の室井淳司さんが書いた「体験デザインブランディング」。

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