アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

「やらないこと」をやり続ける勇気。

経営コンサルタント阪本啓一氏が書いた、『繁盛したければ、「やらないこと」を決めなさい』を読んだ。



阪本氏と言えば、今から15年ほど前、セス・ゴーディンの書いたパーミッションマーケティングを日本で広めた人として、広く知られるようになった。私自身も当時大いに影響を受け、以来、阪本氏の著書は新刊が出るたびに読ませて頂いている。

さて本書は、そんな坂本氏の『「たった1人」を確実に振り向かせると、100万人に届く。 (「市場の空席」を見つけるフォーカス・マーケティング) 』以来の待望の新刊。

自社の「強み」がなかなかわからないと嘆く経営者も多いと聞く。

そんな経営者に対して阪本氏は、「やらないこと」を決めることで、自ずと「強み」が見えてくるという。

中小企業や小さなお店に必要なのは、まず「やらないこと」を決める勇気。

そんな勇気ある経営者に対して、坂本氏自身の持てるノウハウを惜しみなく提提供しようというのが本書のテーマである。

それでは何を「やらない」と良いのか?

阪本氏によれば、次のような「やらない」だ。

大きくなることを「やらない」

何屋さんか商品(サービス)で定義することを「やらない」

顧客の記憶に残らないことは「やらない」

低価格戦略は「やらない」

やめても何も起こらないことは「やらない」

などなど。

そして最後に阪本氏は、繁盛している会社・お店に共通する、たった1つの「やらないこと」として、次の言葉で本書を締めている。

それは、昨日と同じことを「やらない」

日々どんなに小さなことでも昨日と違うことで変化し続けること。

それは何より阪本氏自身の生き方そのものである。

努力を止めた時に成長も止まる、企業も人も同じではないだろうか。肝に銘じたい。


経営とは継栄。100年企業を作る原理原則とは。

経営コンサルタント新将命氏の書いた『「生きた戦略」の条件~勝ち残る会社の13原則』を読んだ。



時代の移り変わりのスピードがますます速くなっている。
ビジネスの世界でもつい昨日まで栄華を誇っていた企業があっという間に凋落の道を辿る。
誰も寄せつけないと思われたビジネスモデルでさえ瞬きをする間に陳腐化してしまう。

そんな時代にあって継続的に企業が生き残っていくためには果たして何が必要なのだろうか。

そんな悩みを抱える経営者に、骨太の1冊が現れた。

著者は伝説の外資トップと称され、シェル石油、日本コカコーラ、ジョンソンエンドジョンソンなど、名だたるブランド企業で社長を務めた新氏だ。

流行にとらわれず原理原則を重んじる独特の経営論、リーダーシップ論で、経営者にもファンが多い。

本書は、その新氏の真骨頂とも言える経営の鉄則について書かれた本である。

新氏が長年に渡る企業経営で培った「百年続く企業」をつくる5つのステップ、「生きた戦略」13の条件を、わかりやすく解説している。

長くなるが、読めば新氏の考え方がよくわかるので記しておく。

1.企業理念との整合性があるか
2.正しい土俵で戦っているか
3.顧客視点に立った差別化があるか
4.顧客満足が数字で表れているか
5.優先分野は明確か
6.経営資源の裏付けはあるか
7.ノンオーガニックグロースが含まれているか
8.策定のプロセスに社員の参画はあるか
9.全社員にコミュニケートされているか
10.部門チーム個人単位の戦術に落とし込んでいるか
11.現場で継続的に実行されているか
12.PDCサイクルは正しく回っているか13.環境変化に対応するための準備があるか

以上、いかがだろうか。

1.から順に上位概念から短期の戦術へと並んでいる。

新氏は、世に溢れるこれまでの戦略本には、残念ながら大いなる不満(わかりやすく翻訳すれば欠点)があるという。

経営は、右手に論語(理念・哲学)、左手に算盤(戦略・戦術)というバランスが取れていなければならないが、多くの戦略本は、この「理念・哲学」と「戦略・戦術」のバランスが欠如していると新氏。

なるほど、どれだけお題目は立派でも実践できなければ絵に描いた餅で終わってしまう。それだけに現実を見据えたバランスが重要になるわけだ。

理論先行の研究者とは一線を画し、実際に企業を率いたからこそわかり得た考え方だけに言葉が重い。

基本中の基本といってもいい経営の原理原則、中でもその頂点に存在するのが理念ではないだろうか。新氏もその重要性を最上位の概念として相当のページを割く。
そして「理念の偉大さは非常時にこそわかる」とし、かのジョンソンエンドジョンソンの「我が信条」を紹介している。

広告会社時代からいろいろな企業、経営者と接してきたが、歳を重ねるごとに思うのは、理念の大切さ、その共有の重要性である。

複雑で変化のスピードが速い時代だから、変化に流されない普遍さ=原理原則を学ぶ必要がある。そのためには最適な1冊ではないかと思う。

ビジネスに大切なマーケティング・センスの磨き方

もと博報堂のコピーライター、クリエイティブディレクターの黒澤晃氏が書いた「マーケティング・センスの磨き方」を読んだ。

本題に入る前に。書店で手にして最初に目に飛び込んだのが、著者の名前。

かの大監督と漢字は違うものの同姓同名。幼少期よりさぞやプレッシャーを感じて成長されたのではないだろうか。



さて本書は、そんな黒澤氏の初の著書となる。

本書のテーマはずばり、マーケティング・センス。

マーケというと、どちらかといえば左脳の世界。マーケターには感性よりデータ、そしてデータ分析能力が問われるように思うが、黒澤氏の主張はマーケこそセンスが必要、というもの。

さらに、マーケティングにとって重要なのは顧客のインサイトを発見することだ、とも。

本来インサイトというと、クリエイティブの専売特許ではないか、なぜに?というのが本書への最大の関心興味でもあった。

黒澤氏がその結論に至った背景には、広告代理店時代にマーケティングとクリエイティブの両方に携わったことの影響が大きいようだ。

なので、一般企業内、マーケティング専門会社のマーケターとはそもそも仕事の領域が異なることに、まずは留意しておきたい。

とはいえ、あらゆる仕事にマーケティング的視点が求めれる今、黒澤氏の知見は、ビジネスマンとして参考にできる点が多いだろう。

本書で黒澤氏は、ビジネスに必要なマーケティングセンスを次の5つに分けて紹介している。

・集めるセンス
・商品づくりのセンス
・仕掛けのセンス
・説得のセンス
・巻き込むセンス

データの集め方から、商品の企画方法、広告・広報の仕掛け方、企画プレゼンの技法、クライアントの巻き込み方などなど、マーケティングプロセスをすべて“センス”という切り口で、広告会社時代のさまざまな経験で培ったノウハウを披露している。

なるほどセンスのよいマーケター&クリエイターはこう考えるのだ!とあらためて実感。

さて、以上でもなかなか読み応えのある1冊であるが、さらに本書の最後で黒澤氏は、ブランドづくりはマーケティングの究極の目標であるとして、「ブランディングを成功させるための7カ条」を明らかにしている。
企業ブランディングを研究している私としては、この章だけでも十分にもとが取れたと、もう満腹の1冊となった。

マーケティングをセンスという切り口で思考する考え方には、賛否両論あるだろう。

ただこれだけ世の中が複雑になった今、従来の延長線上では答えは導き出せないのも明らかだ。

少し視点を変えてビジネスに広告会社的マーケティング思考法を取り入れてみるのも、いいタイミングなのではないだろうか。

マーケティング・センス、ビジネスマンとしての必須スキルとなる日も近そうだ。



誰もがとりこになる、「高倉健」という生き方。

フリーライター谷充代さんが書いた『「高倉健」という生き方』を読んだ。



本書は谷さんが健さんと出会ってから25年。心の交友録とも言ってよい1冊である。

谷さんは1980年代半ばから2000年代まで、健さんをめぐって様々な取材を重ねてきた。
初めての出会いは31歳のとき。フリーライターとしての初めての仕事だったという。
すでに当時、大スターだったはずだから、羨ましいのと同時に相当な緊張感を伴った仕事だったと推測する。
相手が健さんだったことが、その後の彼女の運命を決定づけたといっても過言ではない。

その時の印象があまりに鮮烈で、以来ペンとノートを手に健さんの後を追いかけ続けるようになったという谷さん。

実際ここからが凄い。

健さんを追いかける取材の旅は、日本国内にとどまらず、映画のロケ地となったアメリカ、ヨーロッパ、アフリカにも同行。
執りつかれたと言う言葉がふさわしいような追いかけ方だ。

その気持ちを健さんも素直に受け入れたに違いない、それぞれの旅に彼女との珠玉のエピソードが残されている。

そのひとつひとつは、本書を読んで頂くとして、すべてに共通するのは、健さんの思いやりのこころだ。
しかも、決してスターという偉ぶったものではなく、人間、高倉健しての優しさに溢れている。

出会った人、誰ひとりとして健さんを悪く言う人がいない、そして、そのすべての人がもう一度出会いたいという理由が、あらためてわかるというものだ。

不器用で寡黙ではあるが、身体の中には暖炉のような火が燃え、出会った人の心を温める。

演技はもちろんであるが、その人柄に置いても、不世出のスター、健さん。できることなら、私も一度でいいから出会いたいと思っていたが、その願いは永遠に叶わない。

読後の感想はひとこと、「谷さん、うらやましすぎる!」

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原始時代2.0。ハイテク・バーバリアンだけが生き残る?!

もと日本版ワイアードの立上げ人、現インフォバーン社長の小林弘人氏と日経ビジネスのプロデューサー柳瀬博一氏の対談による「インターネットが普及したらぼくたちが原始人になったわけ」を読んだ。


本書のテーマはこうだ。

原始時代から時代を経て変わったのは「人間」ではなく、人間が積み上げてきた「文明」である。

原始時代、人間は数十人からせいぜい百人単位の小集団で暮らし、動物を刈ったり、魚を採ったりしていた。
時代は変わって現代、インターネットの時代になり、ブログやSNSのおかげで再び原始時代に立ち返ったかのような「小さな村」をいくつも作り始めている。村の数は無数に増えたけど、本質は「原始時代」と変わっていない。

それでは「小さな村」が無数に誕生する時代に、メディアや広告やコミュニケーションは一体どのようになるのだろうか?

そんなテーマをもとに二人のクエスチョン&アンサーが展開される。

かたやコンテンツマーケティングを推進するIT系企業の経営者。かたや日本を代表するビジネス情報誌のプロデューサー。
ふたりの相性もよく、ジェットコースター的に、「今」という時代、そして来るべき「未来」が次々と解剖されていく。オーバーにいえば瞬きする時間も惜しいくらい、私にとっては読み応えたっぷりの1冊であった。

読み終えた今、私の中で、くっきり浮かび上がってきたキーワードは、ずばり「個人」が主導権を握る時代。

つまり、これからの企業も、そしてメディアもビジネスも、すべては「個人」が中心となって展開されるというのが、ふたりの論調である。

たとえば本書で、会社の「属人化」という言葉が登場する。

これからの企業は、顔の見えない大企業の時代は終わり、個人の顔が見える企業が生き残っていく。そのためには、企業側にも「個人」の力を尊重する新しい価値観が求められるはずだ。ある意味、先日、企業人を経てノーベル賞を取った青色LEDの中村氏の例はその先駆けと言っても良いだろう。
企業というよりはさまざまな個性がある共通の目的のために集まった「小さな村」、そんなイメージを抱いている。

もちろん当然、個人側にも変革が求められる。

今までのように大企業におんぶにだっこの生き方はもう成立しないのだ。個人はスキルを含めた自身のパーソナリティを磨き続けなければならない。

本書では、そんなこれからの「個人」のあるべき姿に対して「ハイテク・バーバリアン」というキーワードを呈示している。

メールやブログ、SNSを自在に操りながら、原始人的感性を持った人。21世紀のスーパーゼネラリストと言っても良いかもしれない。これまでのような分業的な役割から複数のスキルを組み合わせて、「小さな村」を渡り歩き、新たな価値を創造できる能力が、より求められるようになると思う。

ウエブとSNSの発展により、原始時代に回帰して世界が「150人の村」になっていく。
その時、自分自身はどう考え、どう行動すべきか。そろそろ準備を始めておくべきタイミングなのかもしれない。

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