アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

UXが劇的に進化する時代に、これまでのビジネスモデルは生き残れるか。

年末年始、時間が見つけて何冊か本を読んだ。そんな中で、これは良い本に出会ったと実感できた1冊が本書、ジーオス代表取締役、松島聡氏が書いた「UXの時代〜IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか」。

IoTの時代

皆さんは、Uber、Airbnbをご存知だろうか。
その手の横文字は苦手という方も、おそらく名前くらいは聞いたことがあるだろう。

Uberは配車サービス、欧米での普及とは裏腹に、日本では法規制があり本格的な普及には程遠いが、Airbnbはじわじわと日本社会に浸透し、すでに国内でも巨大な売上を創るビジネスになっている。

こうしたビジネスモデルはシェアリングビジネスと呼ばれるが、そのベースに存在するのが、かつてない斬新な「UX」であり、それを支える技術が「IoT」なのである。

まさに旬のキーワード「シェアリング」と「IoT」、そして「UX」について本書は書かれている。

UXとはUser Experience、ひと言でいえば「ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験」。
Web業界などでは、これまでも語られることの多かったUXであるが、本書で書かれているUXとの決定的な違いは、そこにビジネスモデルが存在するか否か。

これまでのビジネスモデルは、いわゆる垂直統合型。
上流から下流まで関連事業を支配する一貫体制のビジネスモデルだ。
スケールメリットや効率の追求から生まれた合理的なビジネスモデルである。
しかし同時に、実現するためには規模の経済が前提となり、シュリンクしていく現代においては、企業グループとしての体躯の大きさが致命的な欠点ともなり得る、諸刃の剣だ。

そして、まさにその欠点を突くように生まれてきたのが新しい水平協働型のビジネスモデル。
水平協働型とは、サービスの提供者と受益者という一方的な関係ではなく、提供者が受益者となり、受益者が提供者にもなるという、いわば主体自体が存在しないビジネスモデル。
Airbnb、Uberなどはまさにその代表例となる。

Airbnb、Uberのコア事業はUXを実現するプラットフォームを提供することで、ホテルやクルマ、さらにサービスを提供する人も一切自社に抱えないという、コスト面での強みがある。
旧来のビジネスにおいていちばんコストがかかるのは人件費だったことを考えると、どうみても旧来のビジネスモデルでは太刀打ちできないような気がしてならない。

さて。重要なのはここから何を読み取るか、それに尽きるのではないだろうか。
詳しくは本書に委ねるとして、前述のとおり、この水平協働型のビジネスモデルを可能にしているのは、テクノロジー、とりわけIoTの技術の進化である。あらゆるモノがインターネットに接続された状態で、なおかつAIがリアルタイムで分析を行う。その状況は、Airbnb、Uberでわかるとおり、すべての既存ビジネスを一変させるほどのとてつもないパワーを秘めているのだ。

この先、どんなUXビジネスモデルが生まれてくるのか、わくわくするのと同時に、ビジネスの当事者としてはどんな脅威にさらされるのか常に監視の目を向けていなければならないリスクがさらにが高まっている。

進化を指を咥えて見ているのか、それとも進化の当事者になるか。新たな挑戦は容易なことではないが、少なくとも当事者になる覚悟を持てなければ、この先のビジネスは非常に厳しくなることだけは間違いないだろう。

迷える経営者にとって、福音となる1冊となるか、それとも終わりを告げる1冊となるか。
読んで自身のビジネスモデルと照らし合わせてみるのも、それだけで価値があるのではないか、そんな想いを抱いた1冊である。

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「noma(ノーマ)はなぜ世界一のレストランなのか?」ドキュメンタリー映画「ノーマ東京」を観て。

デンマークのコペンハーゲンにあり、世界のベストレストラン50で2010年から堂々3年連続一位に輝いたレストラン「noma(ノーマ)」。ちなみに、nomaとはデンマーク語で「nordisk」(北欧の)と「mad」(料理)を組み合わせた造語のようだ。

そのノーマが本店を休店して、スタッフ総出で東京のマンダリンホテル東京に期間限定出店した際のドキュメンタリー映画「ノーマ東京〜世界一のレストランが日本にやってきた」を観た。

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何が凄いかと言って、一にも二にも、天才シェフと謳われるオーナーシェフ、レネ・レゼビのこだわり。
時間がないからとか、食材の調達が難しいからとか、そんな言い訳(わかっているのでスタッフも言い訳をしないが)は一切通用しない。あるのは、ただただその料理が独創的であるかどうか。独創性という意味においては、本店での人気レシピすら一切認めない。とにかく今までに体験したことのない、初めての味を徹底的にスタッフに要求する。そのために常に追い込まれているスタッフが悩む様子は胸が痛むが、それはそれで見ごたえが(笑)

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イチロー然り、天才とは99%の努力と1%のひらめきと言われるが、まさにそれを地でいく。
ある分野でいちばんになるには、その分野でいちばん時間を費やしたかどうか、世界ナンバーワンの称号は、当たり前のことが当たり前に行われた結果であるとあらためて痛感した。

この映画の中でもっとも印象に残った言葉。
「我々が求めるのは、“完璧な完成”ではなく、“完璧な未完成”だ。(少し表現は違ったかもしれない)」
この“完璧な未完成”という言葉に、レネ・レゼビ、ノーマのすべてが凝縮されているのではないだろうか。

もうひとつ強く印象に残ったのは、ノーマのコンセプトそのものであるが、日本の出店においては、すべて日本食材を使うということ。
そのためにレネとスタッフは日本全国を実際に歩き、自身の目で確かめ、自身の下で味わって食材を決めていること。一本一本味が違う桂皮(ニッキ)の木をちぎって噛んで確かめて様子は象徴的だった。日本人シェフにはいささか失礼にあたるが、日本人以上に日本の食材にこだわっていることがなにより驚きである。
いささか余談ではあるが、築地のシーンでは案内役としてかの山本益博さん、小野次郎さんも登場する。その前に観た「築地ワンダーランド」でも両者が登場したのは偶然ではないだろう。世界にもその名が響いている証と推測する。

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築地ワンダーランドと同様、この「ノーマ東京」も外国人監督。
外国人が取ると、なぜこうも日本が魅力的にスタイリッシュに映るのか?そのあたりにまだ気づいていない地域創生のヒントもあるのではないか、そんな風にも感じた次第。

「ノーマ」を観ていない私がいうのも何であるが、とにもかくにも「ノーマ東京」、なかなか見ごたえのあるドキュメンタリー映画だった。

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役割を終えた「マクドナルド型モデル」、絶頂を迎える「ディズニー型モデル」。そして「その先」へ。

オラガ総研株式会社代表、牧野知弘氏が書いた「2040年全ビジネスモデル消滅」の読後録。

2040年全ビジネスモデル消滅

この手の、タイトルで驚かせてページを開かせようとするテクニックには正直、辟易とするところがあるが、実際に読んでみると切り口は斬新、かつよく理解できるもので、筆者の分析はなかなかだった。


内容を簡単にいえば、
「マクドナルド型ビジネスモデル」と「ディズニーランド型ビジネスモデル」の対比。
片や質より量の代表、マクドナルド。片や量より質の代表、ディズニーランド。
前者のマクドナルド型ビジネスモデルは役割を終え、後者のディズニーランド型ビジネスモデルは相変わらず隆盛を極めている、さてその理由は?というところだ。
さらに、筆者には三井不動産に勤めていたという経歴もあり、不動産的観点からの分析も本書に厚みを持たせている。


さて。マクドナルドが日本でオープンしたのが1971年、ディズニーランドが日本にオープンしたのが1983年。
牧野氏はこの1971年を起点として、四半世紀(25年)を周期とする世の中の価値観(牧野氏は価値軸と言っています)の変化に照らし合わせて、マクドナルドの低迷とディズニーランドの隆盛を検証している。


牧野氏の分析はこうだ。

1971年から1996年=「量的充足」の時代。
マクドナルドが日本に上陸して存在時代が珍しかった時代を経て、日本全国くまなくマクドナルドが気軽に手にできるようになった時代。ちょうど日本の高度成長期からブバル崩壊までと言っても良いだろう。

1996年から2021年=「質的充足」の時代。
「安さ」が当たり前となったマクドナルドが長い低迷の時代に入っていったのに対して、ディズニーランドは物を売らず夢を売るわけで、ますますその存在を確かなものにしていく。

そして次は、いよいよ2021年からの四半世紀が始まるというわけである。

それでは、2021年からの四半世紀はどんな時代になるのか?

筆者は「ディズニーの夢がいよいよ解ける時」と予測する。

特に不動産は、高度成長期に郊外へ出て行った住宅が廃墟と化し、また都会のタワーマンションも価値が暴落し、一部の資産価値を持つ物件をのぞけば、二極化が顕著になり、2040年に向かっていく。
その頃には暴落した住居の空き家率化が30%を超え、人手不足を解消するために迎え入れた外国人がその空き家に棲みつきスラム化する恐れが多分にあると。

こうなると庶民が手に入れたマクドナルド型ビジネスモデルの住宅やマンションはほとんど価値がなくなり、こうして2040年くらいまでには、すべてのビジネスモデルが崩壊するというのが著者の論調である。

実際のところ、どうだろうか。2040年まで、あと23年。このところの技術革新のスピードを考えると、ビジネスモデルという概念自体がなくなっている、それくらいの変化はあって当然なのではないだろうか。

いずれにせよ、質的充足に対応できる企業は今まで以上に数は少なくなる。新たな時代の価値観にアジャストしてビジネスを成り立たせるのは容易ではない。

すべての企業で、これまで以上のイノベーション体質への転換がなにより求められている、本書を読んで、そんな思いがより強くなった。

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【本ばかり読んでて実践しないなら、意味ないじゃん!】それでも本を読む理由とは。

私の読む本のほとんどが、仕事関係の本ということを知っていて、ごくたまに、そんな風に言われることがある。


なので仕事の本ということに限って、本を読む理由を書いてみる。


まずよく考えてみてほしい。
本は商品なわけだから、売れるようにそれなりに脚色されている。
当たり前の話だ。なので、そのまま実践したところで、大抵は本のようには上手くいかない。


ではなぜ、わかっていても、そんなに仕事の本を読むのか?


私の広告会社時代。
ナレーターの技量を示す言葉として「引出し」という言葉がよく会話の中に登場した。
渡されたナレーション原稿に対して、ナレーターが自分の中のどの「引出し」を開けるか。

すなわち「引出し」の数をたくさん持っているナレーターが、レベルの高いナレーターというわけなのだ。
そして、この引出しを数多く持つことは案外と難しい。


私が本を読む理由もこれに近いものがある。

広告やマーケティングの世界では、商品やサービスを売るための導線を考えることを「コミュニケーション設計」と言ったりするが、まさにその際に求められるのが、先に挙げた「引出し」の数なのではないだろうか。

なので、コミュニケーション戦略と考えれば、すなわち引出しの数は「武器」の数と言えなくもない。


話をもとに戻そう。特に今、なぜ仕事の本をたくさん読むのか?

現代はマス広告以外にSNSとかも登場して、マーケティングコミュニケーションは、より複雑に、より多層になってきている。


なので、コミュニケーションを考える際には、あらゆるケースを想定して「引出し」の数は多ければ多いほど、戦略の精度は上がるというのが、今の私の考え方だ。

数が少なければその逆、特にネットへの理解が薄ければ提案そのものが片手落ちにもなりかねない。
だからこそ知っていた方が良いこと、知っておかなければならないことは、ますます増えているのだ。


それゆえに、あくまでそのまま実践するのではなく、実践するためのシミュレーション材料として情報を持っておくに越したことはない、というのが今の私の「仕事の本を読む理由」なのである。


ただ冒頭にも書いた通り、情報に振り回されてはいけない。
本の中の盛られた部分は自らのフィルターで濾過できるだけの冷静さ、知見が求められる。


とかなんとかいっても、今のところ、私の「引出し」はあまり使われていないのは事実(笑)

それでも、その日に備えて、今日も本を読むのです。

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「中小製造業・逆転のブランディング」、中小企業にとってブランディングとは。

宇土寿和氏が書いた「中小製造業・逆転のブランディング」を読んだ。

逆転のブランディング

中小企業にとって、ブランディングは永遠の課題である。なぜなら大抵の場合、小回りが効くことが強みであって、臨機応変という言葉が往々にして中小企業の本質的な強みを見えなくしてしまう。一貫性を持って顧客接点を考えるほどの余裕もない。

そんな状況にあって、著者、宇土氏の会社がどのようにブランディングと取り組んだか、とても興味深く読んだ。

宇土氏は、旅行会社に勤めた後、旅行会社時代に縁のあったアパレル企業に転職。そして、その会社がニット製品を取り扱っていたこともあり、10年勤めた後に独立。自身でニット製品のメーカーを立ち上げる。

宇土氏曰く、独立後20年以上は赤字が続いたという。それがある時に起死回生の手段を思いつき、一気に黒字化に成功した。

その起死回生の手段とは?が本書のテーマであり、それこそ本書のタイトルともなっている「ブランディング」だった。

そのきっかけは20年間続いた赤字をなんとか解消するために選んだ手段。OEMでなんとか食いつないできたものの価格競争は収まるところを知らない。そこで考えたのは低価格の逆を行く、「高価格高品質化」。カシミアに特化してオーダー注文による消費者への直接販売の道を選んだのだ。ちょうどインターネット通販が急成長を始めた頃で追い風が吹いたことも幸運だった。

さらに、やむなく山梨にあった自社工場を岩手県の北上市に移したことも功を奏したという。それにより「被災地支援」を自社のPRに活用できたからだ。また同時にこの移転は「ご当地ブランド」を立ち上げることにもつながっていく。
このあたり、運が運を呼ぶ善循環に転換していったところも大きいように思う。

そして極め付けは、岩手県北上市の認知向上につながったということで、市から「ふるさと納税」の返礼品にどうかと声が掛かったこと。これが大反響を呼び、業績は大幅改善し、予想以上の売上貢献に繋がったのだという。

転機は、OEMによる価格競争では生きていけないと悟った時、180度違う商品政策に舵を切り直したこと。
当然、選ばれるためには、他者との違いを明確にすることが必要で、思い切って社名もロゴも変えたこと。
この2点がその後の良い循環につながっていく。
そして、見過ごしてはいけないことは、なにより経営者の価値観も同時に切り替わったことだ。
ある意味、お金儲けからお客様への貢献という意識に。

自分自身もブランディング支援を生業としているため、とかくブランディングは難しいという声を聞くが、「ではどうやってお客様から選んでもらうのですか?」と問い返したくなる。少なくとも「価格」での勝負だけは絶対に避けなければならない。売上的に一時良くても長い目で見れば消耗するだけで決して未来はないからだ。

宇土氏のように運に恵まれることも大切だが、運を呼び込むためには確固たる信念が必要。
その推進役としてのブランディングを学ぶためにはわかりやすい実践書と言える1冊である。


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