アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

ユニクロ1億人の顧客を魅了する服のデザインとは。

ファッションデザイナー、滝沢直己氏の書いた「一億人の服のデザイン」を読んだ。



イッセイミヤケのデザイナーを経て2006年に独立、以降フランクフルトバレエ団のコスチュームデザインやユニクロのファッションディレクションなど、従来の枠を超えた幅広いステージで活躍し中である。

本書は滝沢氏がこれまでに経験したさまざまな体験をもとにまとめられていて、興味深いエピソードが心をときめかせる。

たとえば、イッセイミヤケ時代にアップルのスティーブ・ジョブズからTシャツの大量発注を受けた時のジョブズ氏のこだわり、クリエイティブディレクター佐藤可士和氏とプロジェクトを組んだ時のに経験した佐藤氏の緻密さ、今や世界的なアーティストとなった村上隆氏とのツールづくりにおける激しいバトルなどなど…ページを送るのが楽しい1冊となった。

しかしながら全体を通して伝わってくるのは、ファッションデザイナーという仕事がクリエイティブなだけでなく非常に厳しい仕事であること。
それだけに当然ながら誰にでもできる仕事ではないということだ。

特に一流といわれるステージに立つ人は、対峙する人も一流の感性を持っている。

それだけに、時に感性がぶつかりあう激しい現場に出くわすことになる。

先に書いたジョブスのエピソードはその典型だ。

イッセイミヤケのTシャツが大のお気に入りであるジョブズ氏から数百枚のオーダーをもらい、採寸後に納めたのだが、色がオーダーしたものと微妙に違うということで全数返品されてきた。確かに確認してみると指摘は正しい。あらためて作り直し納め直したとのこと。普通の人なら気付きもしないようなほんの些細な違い。
このこだわりこそ、アップルの製品づくりの原点に通ずると、このエピソードを読んで“なるほど”とあらためて感心した次第。

三宅一生氏をはじめ、ファーストリテイリングの柳井社長、その他多くの経営者と直接対話し、そのつど最適な解を探してきた滝沢氏。それだけに経営者のデザインに対する価値観に対しても、一家言持っている。 

それを象徴するのが本書に登場する以下のくだり。

「いわばデザイナーには、自分の美学に沿う創造的視点と、経済的視点の両方が必要だ。ならば同様に消費者の満足を追究する以上、経営者にだってデザイナー的な発想が必要なのではないか。」

滝沢氏は経営において、デザイナーを育成するデザイナーマネジメントが必要と繰り返し強調しており、これからの日本企業の重要な課題とも言っている。

本書の最後を滝沢氏はこう締めくくる。

「美しいか美しくないか。売れるか売れないか。経営者もクリエイターも、この二つの視点を持ち合わせなければならないと思うのです。」

1億人の顧客を持つユニクロでファッションディレクターを務めた滝沢氏だけに、この言葉の意味は深い。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

CS(顧客満足)は女子力で決まる。

法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科、小川孔輔教授が書いた「CSは女子力で決まる!」を読んだ。



安倍政権の成長戦略における重要なピースの一つが、女子社員の幹部・取締役への登用。
近い将来、上場企業での義務化も視野に入れているようだ。

しかしながら、その機運が高まるずっと前から、すでに女子社員の働きやすさ、従業員満足を追求して、着実に成長している企業もある。

本書で紹介されているのは、そんな、従業員満足と顧客満足の両立を計っている最先端企業7社の事例。

従業員満足=顧客満足。

お客さまと直接接触する機会が多い小売業では当然のことだと思うが、しかしながら、意外と従業員への対応を疎かにして顧客満足だけを追求している企業がまだまだ多いような気がしている。

従業員満足というと思いだされるのは、ちょっと前に話題になったワタミやゼンショー。
業績的には急成長を実現しながらも、従業員やアルバイトからそっぽをむかれて窮地に追い込まれた。
それだけに従業員満足はますます経営の重要な要素になってきているのは間違いないだろう。

本書で紹介されている企業は次の7社。

クロスカンパニー、ヤオコー、シンガポール航空、オルビス、ロック・フィールド、呉ベタニアホーム、劇団四季。

いずれも女性が働く場所として魅力がある、今人気の企業だ。

本書によれば、7社に共通するのは次の4つの領域での積極的な取組み。

(1)経営理念の浸透とリーダーシップの発揮
(2)従業員のモチベーションづくりと教育研修制度の充実
(3)顧客サービス対応の仕組みづくり
(4)科学的なサービス管理手法の導入

私が特に感心するのは、いずれの企業も徹底的に従業員視点、顧客視点であることだ。

たとえば女性社員の出産前後での雇用の考え方。

子育てに集中できるように休業制度や短時間労働制度を柔軟に取り入れている。しかも、きちんと成果につながるように仕組みから考え尽くされているから尊敬に値する。
モチベーション高く長く勤めてもらうことが会社にとっても利益につながると考えてのことだ。

冒頭のアベノミクスの話に戻るが、女子社員の取締役を増やすという発想そのものが女性差別と思えなくもないが、とにもかくにも女性が企業の中での発言権、決定権を高めることは、幸せな社会を作る意味でも大いに賛成である。

大切なのは、経営者の気付きだろう。その意味で本書はまさにタイムリーな1冊と言えるのではないだろうか。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

学んでおいて損はない、ビジネスモデル思考法。

兵庫県立大学教授、川上昌直氏が書いた「ビジネスモデル思考法」を読んだ。

副題に、ストーリーで読む「儲ける仕組みのつくり方」。



ビジネスモデルというと、企業では日常的に会話の中で交わされる言葉であることは間違いない。しかしながらそれが正しい意味で使われているかというと、大いに疑問が残るところ。

そもそもビジネスモデルと事業計画の違いを述べよと言われて正しく答えられる人は皆無、と言っても過言ではないのではないか。

本書はそんなビジネスモデルとは?を正しく理解するのに最善の1冊である。

理由は2つ。

ひとつは、ハイブリッドフレームというビジネスモデル開発のフレームワークを学べること。
ビジネスモデルのフレームワークというと、有名なのが、ビジネスモデルキャンバスだが、このハイブリッドフレームは顧客価値提案と収益性という、ビジネスモデルに欠くことのできない2つの重要な要素を並列的に考えることができるという点において、ビジネスモデルキャンバスより使いやすいかもしれない。

もう1点は、ストーリーで全編展開されていて、読み進めるうちに自分事として自然にビジネスモデル発想が身に入ってくること。

ストーリーの舞台はレオニアスという傾きかけたシューズメーカー。起死回生を狙ってビジネスモデルの改革を託された須藤が悪戦苦闘の末に、ついに新たな顧客価値と収益を両立させた大ヒットにたどり着く物語だ。

あらゆる商品・サービスがコモディティ化する今、イノベーションにつながるビジネスモデル発想は企業人には欠くことのできないスキルになってきている。

ビジネスモデルについて書いた本は数あるものの、実践的に使える本となるとなかなか見あたらない。そんな中では現時点でピカイチの1冊と言えるのではないだろうか。

根っからの山男が、経営者になったら。共感を集めるモンベルの経営哲学。

アウトドア用品メーカーのモンベル創業者、辰野勇氏が書いた「モンベル7つの決断」を読んだ。



辰野氏は少年時代に読んだアインリッヒ・ハラーのアイガー北壁登攀記に感銘を受け、山ひと筋の青春時代を過ごした根っからのアルピニスト。数々の名峰を踏破し名実ともに日本のトップクライマーとなった後、日本初のクライミングスクールを開校。その道では若くして名声を得たキャリアの持ち主だ。そして28歳にして株式会社モンベル設立という経営者人生のスタートラインに立った。

本書は、経営者としてのモンベル設立から今日まで、大きな決断を迫られた7つの岐路を振り返ったものだ。

7つの決断とは、
1.28歳、資金ゼロからの起業
2.創業3年目で海外市場へ
3.パタゴニアとの決別
4.直営店出店と価格リストラ
5.モンベルクラブ会員制度の発足
6.アウトドア義援隊
7.山岳雑誌「岳人」発刊
以上である。

こうして並べて振り返るだけで物語が甦って来て胸が熱くなる。

ひと言でいえば、辰野氏は「想い」の人である。

どんな時にも自分の信念に基づき、まったくブレがない。だからこそ結論を迫られる時でも、必ず誰かが手を述べてくれたり、良い運が向いてくるのではないか。これはもう天性のものだろう。

しかしながら、それだけでは今日まで成長を続けることはできない。間違いなく経営者としての明確な経営哲学があったからだ。

辰野氏は自身の企業経営を「アルパインスタイル」という。

そもそもアルパインスタイルとは現役時代の辰野氏の登山スタイルで、少人数で頂上を目指し、リーダーがトップに立ち、ルートを選んで登っていく。グループでいちばん力を持ったリーダーが仲間を引っ張っていくことで、続くメンバーは迷いなく頂上に向かって歩み続けることができるというわけだ。

辰野氏は経営スタイルも、この登山の「アルパインスタイル」を通じて培われ、大いに役立てることができたと振り返る。

辰野氏の考え方はモンベルのモットーからも伺える。そのモットーとは「社員の能力が、経営者の能力」。

経営を進めていく過程でさまざまな決断を迫られてきたわけであるが、それを乗り越えられたのは、その都度、支えてくれる社員の力があったからと辰野氏はいう。経営者の想いもそれを実現してくれる社員がいなければ達成されない。ゆえに「社員の能力が、経営者の能力」と言う考えに至ったのだそうだ。

いささか余談ではあるが、私が企業と顧客との絆の強さを計るのに特に気にしてみるのが、自社コミュニティの存在。
その点からいうと、モンベルのコミュニティ、モンベルクラブはスケールが違う。会員総数なんと50万人、しかも年会費1500円というから、これだけでも7億5千万円!顧客の愛着がわかるというものだ。

本書の最後で、辰野氏は読者に次のメッセージを送っている。

「Do what you like. Like what you do.」(好きなことをやりなさい。そして、やっていることを好きになりなさい。)

自分の選んだ道を歩き続けることができる幸せに感謝する気持ちが、人生を豊かにしてくれる。私はそう信じると言いきる辰野氏に、そのとおりと思わずエールを送りたくなった。モンベルを愛する人はそんな心境なのではないだろうか、本書を読んでそんな想いを抱いた。

俺のイタリアン。躍進の影に哲学あり。

ブックオフ創業者であり、現在は俺のイタリアンをはじめとする大人気飲食店を展開する俺の株式会社代表取締役社長、坂本孝氏とメディアフラッグ代表取締役社長、福井康夫氏の共著「俺のフィロソフィ~仕組みで勝って、人で圧勝する俺のイタリアンの成功哲学」を読んだ。



共著であるが、内容は坂本氏が語り手、福井氏が聞き手となって進められている。この関係はそのまま、普段の二人の関係を表わしてもいる。

坂本氏は福井氏が創業まもなくで困難な状況にある時、物心ともに支援をしてきたいわば師弟関係にある。
さらに坂本氏は稲盛和夫氏が主宰する盛和塾の門下生。

そんなわけで、坂本氏の経営哲学の基本は、稲盛氏の経営哲学に通じるところが多い。

坂本氏の経営哲学は、「仕組みで勝つ」「人で圧勝する」の二つの大きな柱から成り立っている。

まずは「仕組みで勝つ」。

「低価格・高原価率・超高回転率」が俺のイタリアンの、他店が真似のできない最大の独自性だ。

低価格で提供するためには原価率をどこまで下げられるかが通常の飲食業の常識であるが、俺のイタリアンの場合はすべてが常識破り。

一般的に30%程度といわれる原価率をなんと80%まで上げた。しかも料理によっては原価率が100%を超えるものもあるという。

100%を超えるということはそのメニューだけ見れば完全に赤字。それでも利益を出せるのは、通常店舗の何倍とも言われる超高回転率。しかもそれを手がけるのがすべて過去に名店で働いていた一流シェフたちというから人気の秘密がわかるというもの。

中途半端は一切ない。妥協せずとことん3つの要素を追求し仕組み化したことが、短期間で行列のできる店まで上り詰めることができた最大の要因のようだ。

そしてこの仕組み化を具体的に形にして行くのがもうひとつのこだわり「人で圧勝する」だ。

ここでのポイントは、経営理念の存在。

理念の存在しない会社は危ういとし、理念を掲げるだけでなく徹底的に理念の浸透を図る。「俺のフィロソフィ」と銘打たれた自社の理念を冊子にして配布しているのもそのひとつ。しかし、そのような形ももちろん大切であるが、それよりもっと重要なことがあると坂本社長。

そのために坂本社長が常に社員に言い続けていることは、たったひと言。それが「仲間のために汗をかく」だそうだ。
そのせいか通常のレストランではあり得ない、ホールスタッフが仕込みを手伝うことも日常的に行われているとか。

社長に大切な資質として、坂本社長はいちばんに人間的な魅力を挙げている。

その人に人を惹きつける魅力があるか、
若い子、特に若い女性社員がこの人と焼き鳥屋で2時間お酒が飲みたいと思ってくれるようであれば、社長にみ向いていると判断できるという。

実際、坂本氏と福井氏の関係は居酒屋で培われて行ったようだ。

ブックオフでの名声をすべてリセットして、60代半ばにしてのゼロからのチャレンジ。こういう人を根っからの起業家というのだろう。

いくつになっても常識にとらわれない柔軟な思考。むしろ常識そのものを疑ってかかる天性の感性の持ち主かもしれない。

俺のイタリアンから始まった俺シリーズの店舗は、あらゆる料理ジャンルに広がりつつある。

さて次はどんな店が誕生するのだろうか、本書を読んでますます楽しみになってきた。

次のページ