アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

人と人、心と心をつなぐビール。ベアレン醸造所。

ベアレン醸造所株式会社専務、嶌田洋一氏が書いた「つなぐビール〜地方の小さな会社が創るもの」を読んだ。

つなぐビール

ベアレン醸造所は盛岡にある、クラフトビール製造会社。2001年創業だ。

嶌田氏と共同経営者の木村氏の出会いは10年前にさかのぼる。
当時二人はそれぞれ、盛岡地区の協和発酵とキリンビールの営業担当。ライバル会社であったものの妙に気が合い、二人の環境が変わった後も情報交換を続けていたという。

そんなある日。木村から「一緒にビール会社を作らないか」と誘われる。安定した環境を捨てることに不安はあったものの木村の熱い想いに打たれ、新たな船を漕ぎだすことになった。

当時はちょうど地ビールブームが終わった後で、ブームに乗って雨後の筍のように誕生した各地の地ビール会社が、経営不振で続々と倒産、閉鎖されていた頃。地ビールでの起業のタイミングとしては最悪の状況だっただろう。しかし逆に言えば、厳しい環境だったからこそ、地に足のついた経営につながったのかもしれない。

とはいえ、今日までの道のりは平坦どころか、さしずめジェットコースターといった様相。

中でも最大の難関は、醸造所のタンクが爆発して醸造担当だった社員が命を落とした時だ。

不慮の事故だったとはいえ、当然経営陣には管理不行き届きとしてマスコミから非難が集中する。
それより何より、甚大だったのは、家族ともいえる社員を死なせてしまったという精神的苦痛だ。
当時を回想するシーンは、読んでいても心が痛くなるほどだった。

しかしそのどん底ともいえる状況をなんとか乗り越えたこと、
その教訓を忘れずその後さまざまな社内改革に取り組んだことで、
あらためてベアレン醸造所の快進撃がはじまる。

事故を契機に、何を最初に取り組んだか。
それは、職場の安全等を盛り込んだ「経営理念」の策定だった。
その経営理念を核としたことで、やるべきことが明確になり、ブランドが形作られていく。
そのあたりのくだりは、中小企業の経営者にとって参考にできるところが多い。

私は、21世紀に入って成長を遂げた企業に共通する成功法則があると考えている。
それはマスを相手にビジネスをするのではなく、コアなコミュニティを組織化することに長けている点だ。
アウトドア用品のスノーピークしかり、先日紹介した気仙沼ニッティングしかり。

ベアレン醸造所で、それに相当するのが〈よ市〉ジョッキクラブだった。

盛岡の材木町で、冬を除いた毎週土曜日に開催されるイベントでベアレン醸造所はビールを提供する。
その時に使用するジョッキを買ってもらい預かり制にしたことで、熱心なファンを一気に増やすことになった。
と同時にファン同士のコミュニケーションも活発になり、この日を楽しみにする人たちが、ベアレン醸造所の重要な営業マンの役割を果たしてくれるようになったのだ。

こういうことは意図してできることではない。
お客様とのコミュニケーションを大切にしたい、その強い想いが自然にその方向へ導いていったと言えるのではないか。

最後に。つなぐビールという本書のタイトルであるが、
人と人、100年前の伝統、地元への愛、亡くなった社員の思い、ビールがいろいろなものをつないでいる。
そんな思いが込められているのだそうだ。

つなぐ。まさに時代のキーワードである。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

気仙沼ニッティング物語。応援したくなる会社の作り方。

御手洗珠子さんが書いた「気仙沼ニッティング物語〜いいものを編む会社」を読んだ。

気仙沼ニッティング物語

震災地、気仙沼発のニットブランド「気仙沼ニッティング」。
メイン商品の手編みのアランカーディガンがなんと1着15万円!それでいて、注文待ちの人が現在200人以上いるという。

ちょうど昨夜、カンブリア宮殿で取り上げられ、ご覧になられた人も多いのではないか。今日あたりはサイトへの来訪者が一気に増えていることだと想像する。

その気仙沼ニッティングの社長が本書の著者、御手洗さんである。動いている御手洗さんをテレビではじめて観たが、その印象を一言で言うと「聡明な人」。

それもそのはず、最終学歴は東京大学。新卒でコンサルティング会社のマッキンゼーに入った、いわゆる超エリートだ。
しかし、その会社を2年少しで辞め、今度はブータン政府に雇われ初代首相フェローとして勤める。
そして任期切れを間近に控えた頃、東北の大震災が起こった。

被災地のために何かできることをしなければと帰国。
次の道を模索していた時、以前から知り合いだったという糸井重里さんに「編み物の会社を立ち上げたい、ついては社長をやってみないか?」と誘われ、引き受けることになったのだ。

御手洗さんは、まだ31歳。大企業でいえば、やっとビジネスのことがわかってきた程度の若輩であるが、本書を読んでもテレビを観ても、この人にとっては年齢はほとんど関係ない。
逆に言えば、若さが武器となって、回りが巻き込まれていく、そんな根っからの才能を持った女性という印象を抱いた。

もちろん、糸井さんのバックアップもあるし、年長者のサポーター、編み手に恵まれたこともあるだろう。しかし、それを差し引いても、彼女の事業を俯瞰して見る能力、実行力、そしてそのベースにある、ぶれない想いの強さは余人をもって替えがたいのだ。

御手洗さんは気仙沼で起業するメリット・デメリットを本書でこう記している。

メリット
1.周りの人に助けてもらえる
2.多くの人にとって未知な分、興味を持ってもらいやすい
3.賃料が安い
4.地域の街の中で存在感を持ちやすい

デメリット
1.大消費地から遠い
2.人が少ない?(働き手の確保が難しい)

メリットを活かし、デメリットを克服し、企業をどう軌道に乗せて行ったか。
時間的には短いが、かなり濃密な物語がそこにある。

彼女は自身の仕事を「種を蒔き、木を育て、森を作るような仕事」と話す。

立ち上がったばかりの企業としては、もちろん利益を上げて会社を存続させることが最重要課題だろうが、そのあたりは眼中にもないように思える。見据えているのは、もっと先、大きなビジョンが彼女を駆り立てているのだ。それがこの仕事観につながっているのではないだろうか。

極め付けは本書にも登場するこんなエピソード。

事業を急成長させた、とあるIT企業社長からこう言われたという。

「すでにそこそこ名前は知られているから、セーターやカーディガンにこだわらず、いろんなものにブランドをつければオンラインで売れる。それでSEO、 SEMをガンガンにやれば、一気にスケールアップできるよ!」

それに対して彼女はこう考えた。

「確かに1,2年は売上が急増するかもしれない。けれどそれでは100年続く事業には育てられないでしょう。それは、気仙沼ニッティングがこれまでお客さんから得てきた信頼を、短い時間で使い切るような話だからです。信頼は、築くのには時間がかかりますが、なくなる時はあっという間です。」

どうだろう、こう言い切れる経営者がどれほどいるだろう。

こんな彼女だから、気仙沼ニッティングの今日がある。
想いに、年齢も経験も関係ない。その想いへの共感が時代のキーワードとなりつつある今、今後の気仙沼ニッティングがますます楽しみになってきた。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

「ほとんどの会社が17時に帰る、売上10年連続右肩上がりの会社」の作り方

ランクアップ社長、岩崎裕美子さんが書いた「ほとんどの会社が17時に帰る、売上10年連続右肩上がりの会社」を読んだ。

ほとんどの社員が

社員のほとんどが終電帰り、長時間労働こそ、できる社員の証!

そんな広告代理店の取締役だった岩崎さん。自らが残業も臆せず社員の先頭に立って働く、企業戦士の代表のようなモーレツぶりだったと語る。そんな状況なので、社員の3年未満離職率はなんと100%。いやはや凄い会社である。

その彼女が自らの働き方に疑問を感じたのは、35歳を超えた頃。

このまま消耗して働き続けるのか?出産して子育ての喜びも体験したい…
迷った挙句、思い切って退職。新たに自身で立ち上げたのが化粧品会社「ランクアップ」だ。

しかもこの会社、社員が残業をほとんどしないにもかかわらず10年連続で売上が右肩上がりだと言う。

創業10年で95%ほどの会社が消えていくと言われている日本にあって、「なぜそのようなことが達成できたのか?」「広告代理店時代との違いはなんだろう?」それが本書のテーマであり、私自身が手に取った最大の関心事だった。

岩崎さんがその会社を立ち上げて達成したいと考えたのが、残業しなくても成り立つ会社。
そして彼女がたどり着いた答えは、次の3つの強みだった。

・差別化した製品づくり
・わかりやすい広告力
・親切で丁寧なサービス

特に徹底して考えたのが先のふたつ、「選ばれる製品とは?」とその「良さの伝わり方」だ。

そこには広告代理店時代の貴重な経験が活かされている。

当時の代理店は独自媒体がない弱みのため、どうしても価格競争に晒される毎日だった。
せっかく獲得したクライアントも、さらに下をいく価格で他者に取られてしまう。
とにかく量を獲得して薄い利益をカバーするしかない、そのため長時間労働が当たり前になってしまうのだ。

代理店を反面教師として立ち上げた会社、スタートは順調だったが、企業として成長し、創業当時のことを知らない社員も増え、経営者とのギャップが次第に拡大していく。順調な成長に反して、社内の雰囲気は最悪だったという。

「何とかしなければ将来がない…」

そんな思いから、社員のやる気を引き出すさまざまな手段を模索したものの、なかなかこれだというものに当たらない。それでもと探し続けた結果、ようやくたどり着いたのが、「会社としての価値観」を決めること。

社員の自主性を高めるためには、人事評価制度をつくることより、まずは自分たちの考え方を社員に伝えるべきだ!あるコンサルタントからの助言で目が覚めた。

そして、自分たちの原点を見つめ直し考え抜いた結果、導き出したのが「挑戦」という価値観。

この価値観を明確にし社員と共有できたことから、ふたたび経営者と社員がひとつになり、やるべきことやらざるべきことの判断基準が明確になり、社員の自主性も格段に高まったという。

それ以降、新たな成長軌道に乗り成長を遂げて行ったわけであるが、すべての原点は、この「挑戦」という価値観の賜物だったと岩崎さんは振り返る。

そんなきれいごとで飯が食えるか!そんな外野の声も聞こえてきそうだが、お金儲けに長けた経営者のその裏側が簡単に見抜かれてしまう時代、社員も顧客も同じ人間であるからこそ、ますますきれいごとが重要になってきている。

もちろんここに書かれている話は多少誇張して書かれていることもあるかと思うが、考えさせられること、明日からのヒントになること、そんな発見がいろいろとあった。「働き方改革」が国の重要戦略となった今、経営者にとって読んでおいて損のない1冊である。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

BtoB企業は価値観転換が必要なとき。「BtoBウェブマーケティングの教科書」

株式会社ウィット代表取締役、渥美英紀氏が書いた「BtoBウェブマーケティングの教科書」を読んだ。

BtoBウェブマーケティングの教科書

渥美氏にとっては、7年前に書いた「ウェブ営業力」に次ぐBtoBウェブマーケティングについて書いた本だ。
ウェブの世界で7年といえば、使用前使用後というくらい、技術革新において雲泥の差がある年月。
したがって、技術的にはほぼ一新されていると言ってもよいだろう。

しかしながら、法人営業という意味では、考え方に大きな違いはない。
ポイントはウェブとリアルの活用比率。いうまでもなく、7年前とくらべればウェブの技術が進化し、見込み客の顕在化という意味では相当のことがウェブ上で可能となっている。かつては推測の域を出なかった「見込み客」がかなり明確に見えるようになってきている。

問題なのは、そのことを理解せずウェブ制作に取り掛かると、見た目のきれいなだけの「使えないウェブサイト」が出来上がってしまう。広告系のデザイナーが受注する「使えないウェブサイト」となり、嘆いても後の祭りだ。
特にBtoBの場合は、見込み客を集客し、見える化し、育成し、営業マンに引き渡すという明確な目的がある。なので問い合わせ窓口の作り方はもちろん、当然、適切なKPIの設定も重要になってくる。

またBtoBサイトがBtoCサイトと明らかに違うのは、コンテンツの作り方とBtoB特有のライティングの重要度だ。

それ以上に忘れてはいけないのは、BtoBサイトは究極の「営業支援ツール」ということ。
様々な理由から飛び込み営業が効かなくなった今、疲弊する彼らにとっては救世主になる存在であることは間違いない。したがってBtoBウェブマーケティングで成果を上げるためには、経営者の価値観の転換が必要不可欠だ。

以上、本書は教科書と謳うだけあって、そのあたりが実に整理されて記述されていて、まさにBtoBウェブマーケティングの水先案内人といった存在の1冊。

インターネットの世界は日進月歩。マーケティングオートメーションの導入もすでに大手から中堅・中小でも手の届くところにきている。BtoB企業にとってはさらに重要度を上げてウェブマーケティングに取り組む絶好のチャンスであり、そのためにはウェブサイトのリニューアルは必須だ。

私自身、前職がBtoB企業の企画・広報ということもあり、BtoBウェブマーケティングは私自身が長年取り組んできたテーマ。本書であらためて考え方を整理できた。

知らないければ取り残されるばかり。知っていれば一気に存在価値を高められる。その理由と方法論を知ることができる格好の1冊である。

お金を掛けなくても作れる「小さな会社のはじめてのブランドの教科書」

TERRANOS代表、高橋克典氏が書いた「小さな会社のはじめてのブランドの教科書」を読んだ。

小さな会社のはじめてのブランドの教科書

小さな、そしてはじめてとあるから、間違いなくブランディング入門書。

高橋氏の社会人キャリアはハナエモリに入社したことからはじまる。その後もシャルル・ジョルダンやカッシーナ・イクスシーなど数々の外資系一流ブランドでブランディングや経営に携わってきた。ゆえに中小企業といっても、そのベースに日本の中小企業のような泥臭さはなく、考え方に少し隔たりがあるのではないだろうか?と最初は思った。

しかし、そんな心配は杞憂だった。内容は社員数名の日本の中小企業でもいますぐ実践できる、非常にわかりやすいものになっている。

本書は、
第1章:小さな会社こそブランドが必要な理由
第2章:小さな会社にとってのブランドとは何か?
第3章:これだけ!に絞るブランディング
第4章:小さな会社がお金をかけずにブランドをつくる方法
第5章:地方にいても、お客に足を運ばせる
第6章:今の人材で戦う、競争しないブランド戦略
第7章:お金をかけなくてもブランドはつくれる
第8章:小さな会社がブランディングを実行する方法
以上で構成されている。

特に興味を持って読んだのが、第5章「地方にいても、お客に足を運ばせる」。「ブランドは営業力不足を補う」というブランドの効用について書いている。

フランスやイタリアの中小企業への出張経験が豊富な高橋氏。マーケティングをまったくしないというフランスの磁器メーカーがどうやって売上を上げ続けているのか。その理由は、この会社へわざわざ足を運ばせる確固たる理由があるからだという。
その会社は南フランスの片田舎にあり、これだという観光名所もないのだが、そこには小さなレストランが点在し、訪れる企業の人たちに楽しみを提供している。もちろん工場でのモノづくりに直接触れることで会社への愛着が増すことの効果は計り知れないが、この地にあるメーカーと町が一体となって、訪れたくなる場所を作り上げている姿勢が共感を呼ぶのではないだろうか。
ちなみにこの会社は、値引きは誇りある職人の給料を減らすことになるからと一切せず、それどころか毎年物価の上昇分だけ価格を上げるという確固たる考え方を維持しているとのこと。

サービス残業への監視が厳格になり、営業にこれ以上の無理を強いることが難しい今だからこそ、自社のブランディングについて真剣に考える必要がある。マーケティングにお金を使わなくてもできることはたくさんある。という考え方は中小企業こそ今一度考え実行してみるべきだ。このフランスの企業の例は、経営者にとっては非常に参考にできる話だと思う。

世界中を仕入れで歩き、世界中の企業をみてきた高橋氏が語る日本企業の魅力と、魅力があるのに発信しきれていない日本企業のジレンマ。そんな会社へのブランディングの処方箋ともいえる本書。

入門書として非常にわかりやすく書かれており、共感出来る点が多々あった。小さな会社の社長にこそ、ぜひ手に取ってもらいたい1冊である。

テーマ:徒然なるままに… - ジャンル:ブログ

次のページ

FC2Ad