アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

人間、生まれたからには、必ず役割を持っている。

株式会社S.Yワークス代表、佐藤芳直氏が書いた「役割」を読んだ。



佐藤氏は早稲田大学を卒業し、日本マーケティングセンター(現 船井総研)に入社、その後コンサルタントとして独立して今に至る。

本書の帯のキャッチフレーズが「なぜ、人は働くのか」とあるように、社会に出てしばらくの悩みを抱えた社会人に向けて書かれた本である。
しかしながら、私のようなそろそろ現役の社会人人生からリタイアするような年齢の者にとっても、いろいろと示唆に富んだ一冊だった。

佐藤氏の社会人人生は、運命的とも言える状況で船井総研の創業者、船井幸雄氏と出会ったことから始まる。これを縁に導かれるように入社、以降長い時間を船井氏の側近として過ごした。

そこで培われた価値観をベースに書かれたのが本書「役割」である。


すべての人は役割を持って生まれてくる。それが本書のテーマ。

それを象徴する船井氏とのエピソードが本書に登場する。

佐藤氏の長男、由樹君は身体に障害を持って生まれてきた。そのことを船井氏に初めて報告に行った時、船井氏はこういったそうだ。

「そうか。障害を持って生まれてきたかぁ、それは良かったなぁ」と。

そして、こう続けたそうだ。
「おまえに何か教えようと思って、おまえを選んで生まれてきたんだぞ。おまえはこういう仕事を選んで、たくさんの人に何かを教える立場にある。彼から学んだことを教えてあげなさい。世の中、そういうことで悩んでいる人も多いのだから。そうか、良かったなぁ・・・」

佐藤氏が自らの生まれてきた「役割」をまさに自覚した瞬間だ。佐藤氏いわく「天命」の誕生日ということになる。

若いうちはもちろん、この歳になっても生まれてきた役割を見つけれれない悶々とした私のような存在も多いだろう。いや、役割など、そもそも考えたこともないという人も多いかもしれない。

たとえ今がそうであっても、自身の人生の役割を探し続けることが、生を受けてこの世にある使命なのではないか。

そしてその想いを抱き続けるかぎり、人は人として輝けるのではないだろうか。

佐藤氏の長男、由樹君は船井氏が亡くなった数ヶ月後の昨年春、めでたく社会人となり、初給与を得て満面の笑顔で持ち帰ったそうだ。

その額、2,280円。

佐藤氏の喜びもひとしおだっただろう。

人間、生まれたからには必ず役割を持っている。

少し立ち止まってその役割を考えてみる。そして、たとえ少しでも世の中の良い方向へ軌道修正してみる。
それだけで今より幸せな社会を作れるのではないだろうか。

心の温度が少しだけだけど、確実に上がる。今目の前に不安や悩みを抱え、将来に希望を抱けない、そんなあなたにおすすめしたい1冊だ。


ファンを作り増やすために、大切なこと。

ファンクラブコンサルタント、中村悦子氏が書いた『お客様を虜にして離さない「ファンづくり」の法則』を読んだ。



ファンクラブコンサルタントとは?そんな職業がある?と目を留めさせれば、まずは掴みは成功だ。何を隠そう、中村氏の前著での私がそうだった(笑)

中村氏が提唱するのは農耕型マーケティングだ。

狩猟型が営業テクニックを駆使して強引なセールスをメインに数字を獲得するのに対して、農耕型マーケティングは時間をかけて顧客との関係を深めることにより長期的な利益確保を求めていくもの。

市場のパイ自体が拡大している時は狩猟型マーケティングは通用するのかもしれない。しかし現在のような市場全体がシュリンクしている時代には、売ろうとする気持ちが強ければ強いほど生活者からソッポを向かれるという悪循環が起こりやすい。
そのことを経営者が分かっていればまだ救いはあるが、そうでない場合、その会社はブラック企業への道まっしぐら。
そして被害を被るのはお客様以上に、そこで働いている社員ということになるだろう。
そもそもブラック企業のレッテルを一度貼られてしまえば企業の存続自体も難しい時代。
従って農耕型マーケティングを志向することは、ある意味、低成長時代の現代においては必然と言えるのではないだろうか。

少し前置きが長くなったが、中村氏が今の仕事を始めるきっかけとなったのは、宝塚にいた娘のファンクラブ運営を自ら手がけたことに始まる。

どのように運営すればファンが増え関係を深くすることができるか。ファンの目移りも激しいであろう宝塚での、しかも自らのリアルな経験だけに、そこで培った中村氏のハイレベルなノウハウは非常に説得力がある。

どのようにしたらファンが出来上がり、どのようにしたらファンが去っていくか、ビジネスにおいてだけでなく、中村氏自身が顧客として体験した好事例、悪事例も豊富で、わかりやすく解説している。

以前にこのブログでも取り上げた佐藤尚之氏が最新著書で提唱している、ファンベースマーケティングとの共通点も多い。

さて、経営者がファンベースマーケティングを取り入れることは比較的容易であるが、今なぜファンベースマーケティングが効果的なのかを時代背景とともに理解できないと、真に売り上げありきの号令型経営から決別することは難しいだろう。

口コミをしてくれる「うさぎファン」の作り方
リピーターになってくれる「カメファン」の作り方 などなど、すぐに結果につながりそうな手法満載で、ともすると手っ取り早くそのエッセンスを頂こうと考えてしまうかもしれない。
しかしながら上っ面だけを適当に頂こうとしても、おそらくうまくいかないだろう。

重要なのは、共感やつながりという価値の考え方だ。まずは経営者が価値観を変えることの大切を肌で感じることができれば、新たなマネジメントへの扉を開けることができるだろう。

狩猟型から農耕型へ。特に小売業の経営者がマネジメントのあり方を根本から見直す、そのきっかけの1冊としてはオススメの1冊である。

消費社会が失った“つながり”を『食』を通して取り戻す。

もと岩手県議会議員にして現在は社会起業家の高橋博之氏が書いた「だから、僕は農家をスターにする~『食べる通信』の挑戦」を読んだ。



いやぁ、世の中には凄いやつがいるもんだ、これが素直なファーストインプレッション。読みながら感心すること、数知れず。
発想といい、実行力といい、まさにこれから世の中が向かっていく方向をきっちりと見据えている。日本全国見渡しても、数少ない貴重な存在が高橋氏であることは間違いないだろう。

経歴もユニークだ。
もともとライター志望でありながら就職先が見つからず、たまたま知り合いの紹介で議員を手伝ったきっかけで、30過ぎて議員を志したという。その初当選までの道のりも独特で、どの党にも属さず故郷に帰り辻立ちすること数百回。最初は見向きもしてくれなかった人たちが少しずつ心を開いていく。その地道な行動の先に、32歳での県議会議員初当選が待っていたのだ。

しかし、ここまでの話は導入のほんのエピソードに過ぎない。
本題は、大震災後の大変な状況に接し、いても立ってもいられず、議員を辞し岩手県知事選に挑戦したものの落選したことから始まる。

彼が考えたのは食による地域再生。そして形になったのが『食べ物付き情報誌』だった。食品のネット通販で小冊子が付いてくるものは世の中に数多ある。しかし、情報誌の付録として新鮮な食材が付いてくる。まさに逆転の発想だ。

東北の生産者と都会の消費者を情報誌を媒介としてダイレクトに結ぶ。それもただ結ぶだけでなく、生産者個人の思いや生産物の裏側にある物語を徹底的に表に出し、生産者と消費者の共感ベースの関係を作る出すのだ。いや、生産者と消費者という関係を超えて、未来の食を共に考える仲間という立ち位置なのかもしれない。

今や、高橋氏の取り組みは「東北食べる通信」をきっかけに、そのウェーブは日本全国に広がっている。

高橋氏の取り組みは、なぜここまで受け入れられたのか?

それは1にも2にも、一次産業に対する高橋氏の危機感。心血注いでもなかなか報われない生産者の現実をなんとかしたいという思いだ。そして、そんな思いを心から受け止めてくれる消費者が予想以上に多く存在したということに尽きる。

食に限らず、生活のあらゆる局面で、成長ありきの資本主義が綻び始めている。しかもそのスピードは加速し音を立てて崩れ始めているといっても良いのではないか。その象徴的な事実を、本書で垣間見た気がしている。

大量生産大量販売が通用しなくなった今、何が大切で何が正しいのか、ビジネスに携わる者、とりわけ資本主義発展の一翼を担った広告関係者は襟を正して考える必要があるのではないだろうか。私にとって時代のパラダイムシフトをあらためて実感した貴重な1冊になった。

比べない、競争しない。日々を楽にする禅的生き方とは。

曹洞宗徳雄山建功寺住職、枡野俊明氏が書いた「競争からちょっと離れると、人生はうまくいく」を読んだ。



かのスティーブ・ジョブズが多大な影響を受けていた禅宗。その教えをわかりやすlく世の中に伝え、迷える人に手を差し伸べているのが枡野氏だ。

出版されている著書も多いのでご存じの方も多いだろう。

そんな枡野氏、本書では、サブタイトルに「禅的、比べない、責めない、こだわらない生き方」とあるように、現代社会を生きていく上で避けて通れない競争に自身が消耗されない様、心の有り様について教えてくれている。

避けて通れないと書いたが、本当に避けて通れないものか。私にとっても永遠のテーマである。かつて所属した広告業界はコンペが前提の業界で、良くも悪くも競争ありきの業界だった。そんな私が言うのも何であるが、実は今も競争は大の苦手なのだ。

そんなわけで手に取った本書、予想以上に得るものが多い1冊だった。

競争で自分をすり減らさないために大切なこと。それはまず人と比べないことであると枡野氏。勝ち負けは誰かが決めるものではなく、自分自身の考えひとつであるのなら、白黒つけなければぐっと気は楽になる。

そしてさらに枡野氏が重要だとしているのが、自分だけの「ものさし」を持つこと。それも禅的な「ものさし」ならなお良いと。

そもそも「禅的」とはどういうことだろう。

枡野氏いわく、禅の教えでは勝ち負けのような「結果」は重要なことではなく、目を向けるべきは「プロセス」なのだそうだ。
なるほど「結果」に意識を向けなくなることで、競争原理から抜け出すことができる。

例えば、仕事でも「このくらいでいいじゃないか」という思いがある一方で、「いやいや、もっとやれる。」という思いが。
そうした自分自身の思いのせめぎあいこそ、真の競争なのである。

冷静に考えてみれば、確かにその通り。

競争相手を「他人」から「自分」にシフトすることで、他人との比較が必要なくなる。これが禅的な「競争からちょっと離れるコツ」なのだそうだ。

人だけでなく会社でもそうだろう。

競争が弱まるどころかますます強まっている気さえする現代社会。同業種だけでなく近頃は異業種からも、想像だにしなかった敵が現われ競争を仕掛けてくる。

そんな時、考えるべきはライバルとどう戦うかではなく、お客さまに対してどう向き合うべきかなのだ。

競争に右往左往してその場を凌いでも長くは続かない。

地に足を付けて自身の足元を見直す。競争からちょっと離れると、案外うまくいくのかもしれない。要は考え方ひとつなのだ。本書を読んで、そんな思いに至った。

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土から耕し、根っこから変えていく。

アートディレクター森本千絵さんの書いた「アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話」を読んだ。



森本さんといえば、オンワード組曲などブランドのアートディレクションで広告業界では知らない人はいない存在。そして企業の広告担当者から見れば、一度はお願いしたい、ある意味憧れの存在でもある。

ミスターチルドレンのアルバムジャケットの一連のアートワークを手がけた人といえば、あーあの人と手を打つ人も多いのではないか。

彼女のアートディレクションの特徴は、誰にも作れない独特の世界観にある。目にした時、どこか懐かしい、心の襞をそっと撫でられるような、かつて味わったことのないような感覚に包まれる。

その作風や感覚、一体どんな育ち方、考え方をすれば出来上がるのか?

かねてより気になっていたそのもやもやが、本書を読んで一気に晴れた。

彼女の才能は、天賦のものはもちろん、祖父からの幼少期の影響も大きいが、本書から伝わる私の印象は「努力の人」。

プロフェッショナルになるための条件としてよく言われる10,000時間の法則というものがあるが、彼女はまさに1日24時間を仕事のために捧げている、ここまでやれば、あとは一流になるしかない(笑)のだと納得させられる。

本書で明らかにされているのは、彼女のクリエイティブに対する方法論。

しかしそれは決して手順や段取りというものではなく、心の有り様や意識の持ち方、従ってコミュニケーションそのものに対する価値観といったほうが適当かもしれない。

たとえば彼女、大切なことはいつも色や歌に変えて伝える。その方が人の心に伝わるのだそうだ。

特にスタッフとの共通言語は「音楽」で作るとのこと。

たとえばキャンペーンを考えるときは、まずその「感じ」を音楽に置き換え、イメージに合った曲を選び1枚のCDにするのだそうだ。そしてそれを繰り返し聴き表現を固めていく。

逆に、本の装丁や写真集などでは作家に好きな音楽をCDに焼いてもらい、それを聴きながらイメージを作っていくと。

なるほど、出来上がった仕事を見ると、確かに鮮やかな色が目に焼きつき、そしてどこからか音楽が聞こえてくるようだ。

さて本書で彼女のいう〝だいじな話〟、最も心に刺さったのは第4章、本物の追求の中の、『土の中に未来がある』という言葉。

土をいかに耕して、どれだけしっかり根っこを広げて張れるか。

広告とは商品の魅力を伝える大切な手段であるが、もっと大切なのは、その商品を作る会社の姿勢そのものであり、関わる人たちのこだわりであると。ある意味広告の限界を誰より知っている人。そこまで徹底するからこそ、彼女の仕事が人の心を動かすことができるのではないか。

当たり前のことだが、本書を読んでも彼女のようなアートディレクターになれるわけではないし、地方のアドマンには、応用できることも少ないだろう。

けれどもあえて一読をおすすめしたい。なぜなら自身と一流との違いを知ることで、自分の至らなさが実感としてわかるからだ。賢明な人は学ぶことを知るだろう、それは決して無駄ではない。

それにしても森本千絵、凄い人である。


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