アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

究極の企業戦略は「親切」。牛たんねぎしの理念経営とは。

株式会社ねぎしフードサービス社長、根岸榮治氏が書いた『日本でいちばん「親切な会社」をつくる~牛たんねぎしの働く仲間の幸せを考える経営』を読んだ。



1981年の創業から34年、現在は東京を中心に34店舗を展開、年商は54億円。

確かに順調な成長ではあるが、年数から考えれば決して急成長というような状況ではないだろう。

しかし穏やかともいえるその成長スピードが、逆に人を大切にするという企業文化を育む時間的猶予を与えたとも言える。

根岸社長が長年追い求めてきた経営の基本は、人財共有、理念共有。あくまで働く人が主役、そして人と人の心のふれあいをベースにした考え方。

今でこそそんな理念経営の典型とも言える根岸社長であるが、その原点は今と真逆の狩猟型経営だったとは意外や意外だ。

それが180度変わったのは、ある時に起こった社員の総離脱。行き過ぎた出店ペースに社員が着いていけなくなったのだ。しかも彼らが移ったのはあろうことか眼と鼻の先のライバル店。加えてそれ以前には店員が店の金銭をかすめ取るという不正も相次いだらしい。

その時の苦い体験が根岸社長に「100年続く企業をつくり、その経営者になる」と決意させたのだ。

ここから牛たんの専門店に辿りつき、数々の独自の取り組みにより、今日までの成長を牽引してきた根岸社長。

その過程は本書に詳しいが、本書で紹介されている取り組みをいくつかピックアップしてみる。

・同一地域で同一業態での「農耕型経営」
・全店長が参画して「経営指南書」を策定
・店長同士が支え合う仕組み
・「お客様アンケート」の徹底活用
・外国人アルバイトも同賃金
・「焼士認定制度」の実施 etc

いかがだろうか。
人が育つとはどういうことか? 社員の喜びとは?ひとつひとつ根岸社長なりに紐解いて、社員とともに作り上げていった。

マグレガーのX理論・Y理論という有名な考え方がある。人は管理しなければさぼるものと考えるか。人は信頼すれば自ら自発的に働くか。根岸社長の考え方は後者だ。

人は信じて心から接すれば、社員もお客さまも必ず好意を返してくれる。
きれいごとかもしれない。しかし、きれいごとも徹底すれば、大きな成果につながる。その好例が根岸社長の「親切」をベースにした究極の経営戦略ではなかろうか。

飲食業にかぎらず、人が居つかなくて困っている、そんな経営者、経営幹部におススメしたい1冊である。

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仕事ができる人は、言葉ができる人。

電通のコピーライター、渡邉洋介氏が書いた『「そのひと言」の見つけ方』を読んだ。

「そのひと言」の見つけ方

今、コピーライターブームが来ている。

私がそう感じる理由は、コピーライターの書く書籍がこのところ立て続けに出版されていること。
しかもそのうち何冊かはベストセラーになっている。

それでは、なぜそれほどまでにコピーライターの書く本が売れるのか?

思うに、ほとんどのビジネスにおいて商品やサービスがコモディティ化していく中で、他者との違いを際立たせるために「言葉の力」が求められているからだと思う。

本書はまさにそんな流れを決定づけるような1冊。「言葉の力」を磨く実践的手法(=コツ)を紹介する本だ。

電通の現役コピーライターである渡邉氏は、自らの豊富な経験から、書くコツ、選ぶコツ、練るコツ、粘るコツと、シチュエーション別にそれぞれ10のコツ、計40の「そのひと言」を創るコツを紹介している。

思いついた言葉をぜんぶ書きだす、100個書いて1個だけ選ぶを繰り返す、など、ほとんどが王道とも言えるような、コピーライターが実践している方法であるが、それだけに魅力的なひと言を生む確率が高いと言えるのではないだろうか。

そんな中で、意外と気付いていないコツが、書くのでなく「見つける」。

渡邉氏に言わせれば、「何かよいコピーを書こう」ではなく「何かよいものが見つけられないかな?何かよい事実を発見できないかな?」という感じだそうだ。

さらに渡邉氏はこう続ける。

コピーライターの仕事をひと言でいうと、「みんなが思っていること」を、みんなとは違う言葉で書く人。

みんなが思っていないことを書いたら、誰にもわかってもらえない。でも、みんなが思っていることを、みんなと違う言葉で書けたら「あ、こういうふうに言ってほしかった!」となる。それを書ける人がコピーライター。

そのみんなが思っていることを自分が制作して書くのではなく、事実として見つける。そして見つけたらその先がコピーライターの仕事で、みんなが使わない言葉、手垢のついてない表現で、ちょっと新鮮な文章を考えるのです。…(以上、本書から引用)

その昔、コピーライターは企業の想いを分かりやすい言葉に変換する翻訳家。そんな風に教えられたことがあったが、それに近い感覚だと思う。

キャッチフレーズならわずか10文字でも成立する。まさに、たかがコピー、されどコピーである。

コピーを自由に操れるようになれば、ビジネスがうまくいく確率が高まることは間違いない。もし今、顧客とのコミュニケーションで悩んでいるのであれば、ぜひ一読をおススメする。



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コミュニケーション力を左右するのは「情」と「理」のバランス。

元「ザ・ボディショップ」「スターバックス」日本法人のCEO、岩田松雄氏の書いた『「情」と「理」話し方の法則』を読んだ。

情と理の法則

今ビジネスマンにとって、最も重要な能力がコミュニケーション力、というのはほとんどの人にとって異論のないところだろう。

しかしながら、コミュニケーションスキルとして「伝える」術をきちんと理解している人は、思った以上に少ないのではないか。
ほとんどのケースが「伝える」という一方通行で終わってしまい、「伝わる」という双方向になっていない。
伝えたい思いが強ければ強いほど伝わらないという悪循環に陥るというわけだ。

それではどのようにすれば、「伝える」を「伝わる」に変換できるのか?

岩田氏は、コミュニケーション力を次の2つの要素に分けて話を展開する。

「情」=話す人の人間性。

「理」=相手へのわかりやすい伝え方。

理詰めでも、情に訴えるだけでもコミュニケーションは上手くいかないと岩田氏はいう。

本書では、そんなコミュニケーションにおける「人を動かす」話し方、「強い信頼関係をつくる」話し方を26の法則として実践的にまとめている。

私が特に注目したのは、実践法則の24.「何」をやるのかではなく、「なぜ」やるのか。

「なぜ」やるのかは、自分自身のミッションと照らし合わせることが重要、そうすればおのずとやるべき理由が見えてくるのだ。自分が心から信じているからこそ、相手に伝わるのである。それがコミュニケーションの本質だと岩田氏はいう。

会社におけるわかりやすい喩えとして、岩田氏が持ちだしたのがドラッカーの本に出てくる、初期キリスト教会の言葉、

「本質において一致、行動において自由、すべてにおいて信頼」

本質、つまりミッションをきちんと共有していれば、細かなルールなどつくらず、実際の行動は自由。みんな自由で考えてやれば大丈夫。ただし、その大前提として、互いに信頼しあうことが必要であると。

まさに岩田氏がザ・ボディショップ、スターバックスで実践してきた考え方ではないか。

実際、話し方のテクニックをどれだけ学んでもなかなかコミュニケーション上手になれない。なぜならそこには「ミッション」がないからだ。

ゆえにコミュニケーション力を高めるためには、自身の「ミッション」をあらためて考えてみるといい。

ミッションとコミュニケーション、それほど密接な関係があると、あらためて知らされた気がしている。

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「きれいごと」が企業を成長させる。

社会保険労務士にして株式会社シェアードバリューコーポレーション代表、小林秀司氏が書いた『人本経営~「きれいごと」を徹底すれば会社は伸びる』を読んだ。



ベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者、坂本光司氏に師事し、ともに世の中に必要とされる会社を紹介してきた。本書はそんな小林氏の活動の集大成とも言える1冊である。

今、時代は大きな転換点にあり、お金儲け以外の新たな企業の価値観が世の中から求め始められていると小林氏。

そんな世の中の変化を捉えた本書のテーマが、「業績軸」資本主義から「幸せ軸」人本主義への転換である。

「幸せ軸」人本主義とは、利益の最大化ではなく、社員の幸福の最大化を目指す考え方。

しかし、こういう話が出てくると決まって現れるのが、幸せ軸などという「きれいごと」で経営は出来っこないという否定論だ。

そうかもしれない。いや過去はそれが正しかったのかもしれない。

しかしここのところその価値観が音を立てて崩れてきているような気がしている。

ゼンショーのすき家、居酒屋ワタミの労務問題はその象徴といえるのではないだろうか。

お金儲けに熱心で社員をこき使うような企業は世の中から共感を得られるわけがない。そんな当たり前のことが当たり前に理解されるようになってきたのだ。

さて本書では、規模も小さい、知名度もない、けれどそんな中で確実に社員や社会から共感を得て成長を続けている会社がたくさん紹介されている。

ひとつひとつ読んで行くと世の中にこんな会社があったのかとあらためて時代の変化を感じる次第だ。

きれいごとだからこそ、社員や顧客の共感を呼ぶ。そういう時代になったのである。

全ての会社員はデザイナーであれ。

カルチャーコンビニエンスクラブ社長、増田宗明氏の新著「知的資本論~すべての企業がデザイナー集団になる未来」を読んだ。

知的資本論

常々思っているのだが、この増田社長、類い稀なコンセプターである。

コンセプターといえば、私の中では古くは濱野宏、谷口正和、広く海外に求めればスティーブ・ジョブスがいる…
増田氏は彼らに匹敵する俯瞰力と構想力の持ち主だ。

そんな増田氏の新著でのテーマは「すべての会社員は、企画マンになれ、デザイナーになれ。」

なぜなら、そうしなければ生き残れない時代がやってくるから。それが本書の主旨である。

これまで企業を成り立たせる基盤となっていたのは財務資本だった。

だったと過去形であるのは、消費社会が大きく変容しているからだ。

増田氏は、これからの企業はこの消費社会の変容を受けて企業の基盤を変えざるを得ないという。

そして、これから必要となる基盤が、タイトルにもなった知的資本なのだ。

知的資本がどれだけ社内に蓄積され、発揮させられるか、それこそがこれからの企業の推進力を左右する時代になる。

当然ながら、企業活動の本質はクリエイトだという増田氏。

であれば、そのクリエイトの源泉は人の企画力であり、その総和が企業の知的資本となるのだろう。

本書は序、起、承、転、結、終の6章構成であるが、冒頭の序章は、武雄市市長、樋渡啓祐氏との対談が組まれている。
この対談は既成概念に囚われない柔軟な思考の応酬で実に刺激的であり、カルチャーコンビニエンスクラブとのコラボによる武雄市図書館の誕生は、この二人の存在がなかったら決して実現することがなかったとあらためて思い知らされる。

増田氏はデザインを広義な意味で捉えており、企画力、構想力とほぼイコールだ。

管理という甘えの元でぬくぬくと定年まで勤め上げる時代は終わった。

これからは責任を伴う自由を手に入れて、自らの企画力、提案力で生き抜いて行く時代がやってくる。

それを厳しいと見るか楽しいと見るか、あなたの価値観が試されるのだ。


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