アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

BtoB企業は価値観転換が必要なとき。「BtoBウェブマーケティングの教科書」

株式会社ウィット代表取締役、渥美英紀氏が書いた「BtoBウェブマーケティングの教科書」を読んだ。

BtoBウェブマーケティングの教科書

渥美氏にとっては、7年前に書いた「ウェブ営業力」に次ぐBtoBウェブマーケティングについて書いた本だ。
ウェブの世界で7年といえば、使用前使用後というくらい、技術革新において雲泥の差がある年月。
したがって、技術的にはほぼ一新されていると言ってもよいだろう。

しかしながら、法人営業という意味では、考え方に大きな違いはない。
ポイントはウェブとリアルの活用比率。いうまでもなく、7年前とくらべればウェブの技術が進化し、見込み客の顕在化という意味では相当のことがウェブ上で可能となっている。かつては推測の域を出なかった「見込み客」がかなり明確に見えるようになってきている。

問題なのは、そのことを理解せずウェブ制作に取り掛かると、見た目のきれいなだけの「使えないウェブサイト」が出来上がってしまう。広告系のデザイナーが受注する「使えないウェブサイト」となり、嘆いても後の祭りだ。
特にBtoBの場合は、見込み客を集客し、見える化し、育成し、営業マンに引き渡すという明確な目的がある。なので問い合わせ窓口の作り方はもちろん、当然、適切なKPIの設定も重要になってくる。

またBtoBサイトがBtoCサイトと明らかに違うのは、コンテンツの作り方とBtoB特有のライティングの重要度だ。

それ以上に忘れてはいけないのは、BtoBサイトは究極の「営業支援ツール」ということ。
様々な理由から飛び込み営業が効かなくなった今、疲弊する彼らにとっては救世主になる存在であることは間違いない。したがってBtoBウェブマーケティングで成果を上げるためには、経営者の価値観の転換が必要不可欠だ。

以上、本書は教科書と謳うだけあって、そのあたりが実に整理されて記述されていて、まさにBtoBウェブマーケティングの水先案内人といった存在の1冊。

インターネットの世界は日進月歩。マーケティングオートメーションの導入もすでに大手から中堅・中小でも手の届くところにきている。BtoB企業にとってはさらに重要度を上げてウェブマーケティングに取り組む絶好のチャンスであり、そのためにはウェブサイトのリニューアルは必須だ。

私自身、前職がBtoB企業の企画・広報ということもあり、BtoBウェブマーケティングは私自身が長年取り組んできたテーマ。本書であらためて考え方を整理できた。

知らないければ取り残されるばかり。知っていれば一気に存在価値を高められる。その理由と方法論を知ることができる格好の1冊である。

お金を掛けなくても作れる「小さな会社のはじめてのブランドの教科書」

TERRANOS代表、高橋克典氏が書いた「小さな会社のはじめてのブランドの教科書」を読んだ。

小さな会社のはじめてのブランドの教科書

小さな、そしてはじめてとあるから、間違いなくブランディング入門書。

高橋氏の社会人キャリアはハナエモリに入社したことからはじまる。その後もシャルル・ジョルダンやカッシーナ・イクスシーなど数々の外資系一流ブランドでブランディングや経営に携わってきた。ゆえに中小企業といっても、そのベースに日本の中小企業のような泥臭さはなく、考え方に少し隔たりがあるのではないだろうか?と最初は思った。

しかし、そんな心配は杞憂だった。内容は社員数名の日本の中小企業でもいますぐ実践できる、非常にわかりやすいものになっている。

本書は、
第1章:小さな会社こそブランドが必要な理由
第2章:小さな会社にとってのブランドとは何か?
第3章:これだけ!に絞るブランディング
第4章:小さな会社がお金をかけずにブランドをつくる方法
第5章:地方にいても、お客に足を運ばせる
第6章:今の人材で戦う、競争しないブランド戦略
第7章:お金をかけなくてもブランドはつくれる
第8章:小さな会社がブランディングを実行する方法
以上で構成されている。

特に興味を持って読んだのが、第5章「地方にいても、お客に足を運ばせる」。「ブランドは営業力不足を補う」というブランドの効用について書いている。

フランスやイタリアの中小企業への出張経験が豊富な高橋氏。マーケティングをまったくしないというフランスの磁器メーカーがどうやって売上を上げ続けているのか。その理由は、この会社へわざわざ足を運ばせる確固たる理由があるからだという。
その会社は南フランスの片田舎にあり、これだという観光名所もないのだが、そこには小さなレストランが点在し、訪れる企業の人たちに楽しみを提供している。もちろん工場でのモノづくりに直接触れることで会社への愛着が増すことの効果は計り知れないが、この地にあるメーカーと町が一体となって、訪れたくなる場所を作り上げている姿勢が共感を呼ぶのではないだろうか。
ちなみにこの会社は、値引きは誇りある職人の給料を減らすことになるからと一切せず、それどころか毎年物価の上昇分だけ価格を上げるという確固たる考え方を維持しているとのこと。

サービス残業への監視が厳格になり、営業にこれ以上の無理を強いることが難しい今だからこそ、自社のブランディングについて真剣に考える必要がある。マーケティングにお金を使わなくてもできることはたくさんある。という考え方は中小企業こそ今一度考え実行してみるべきだ。このフランスの企業の例は、経営者にとっては非常に参考にできる話だと思う。

世界中を仕入れで歩き、世界中の企業をみてきた高橋氏が語る日本企業の魅力と、魅力があるのに発信しきれていない日本企業のジレンマ。そんな会社へのブランディングの処方箋ともいえる本書。

入門書として非常にわかりやすく書かれており、共感出来る点が多々あった。小さな会社の社長にこそ、ぜひ手に取ってもらいたい1冊である。

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UXが劇的に進化する時代に、これまでのビジネスモデルは生き残れるか。

年末年始、時間が見つけて何冊か本を読んだ。そんな中で、これは良い本に出会ったと実感できた1冊が本書、ジーオス代表取締役、松島聡氏が書いた「UXの時代〜IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか」。

IoTの時代

皆さんは、Uber、Airbnbをご存知だろうか。
その手の横文字は苦手という方も、おそらく名前くらいは聞いたことがあるだろう。

Uberは配車サービス、欧米での普及とは裏腹に、日本では法規制があり本格的な普及には程遠いが、Airbnbはじわじわと日本社会に浸透し、すでに国内でも巨大な売上を創るビジネスになっている。

こうしたビジネスモデルはシェアリングビジネスと呼ばれるが、そのベースに存在するのが、かつてない斬新な「UX」であり、それを支える技術が「IoT」なのである。

まさに旬のキーワード「シェアリング」と「IoT」、そして「UX」について本書は書かれている。

UXとはUser Experience、ひと言でいえば「ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験」。
Web業界などでは、これまでも語られることの多かったUXであるが、本書で書かれているUXとの決定的な違いは、そこにビジネスモデルが存在するか否か。

これまでのビジネスモデルは、いわゆる垂直統合型。
上流から下流まで関連事業を支配する一貫体制のビジネスモデルだ。
スケールメリットや効率の追求から生まれた合理的なビジネスモデルである。
しかし同時に、実現するためには規模の経済が前提となり、シュリンクしていく現代においては、企業グループとしての体躯の大きさが致命的な欠点ともなり得る、諸刃の剣だ。

そして、まさにその欠点を突くように生まれてきたのが新しい水平協働型のビジネスモデル。
水平協働型とは、サービスの提供者と受益者という一方的な関係ではなく、提供者が受益者となり、受益者が提供者にもなるという、いわば主体自体が存在しないビジネスモデル。
Airbnb、Uberなどはまさにその代表例となる。

Airbnb、Uberのコア事業はUXを実現するプラットフォームを提供することで、ホテルやクルマ、さらにサービスを提供する人も一切自社に抱えないという、コスト面での強みがある。
旧来のビジネスにおいていちばんコストがかかるのは人件費だったことを考えると、どうみても旧来のビジネスモデルでは太刀打ちできないような気がしてならない。

さて。重要なのはここから何を読み取るか、それに尽きるのではないだろうか。
詳しくは本書に委ねるとして、前述のとおり、この水平協働型のビジネスモデルを可能にしているのは、テクノロジー、とりわけIoTの技術の進化である。あらゆるモノがインターネットに接続された状態で、なおかつAIがリアルタイムで分析を行う。その状況は、Airbnb、Uberでわかるとおり、すべての既存ビジネスを一変させるほどのとてつもないパワーを秘めているのだ。

この先、どんなUXビジネスモデルが生まれてくるのか、わくわくするのと同時に、ビジネスの当事者としてはどんな脅威にさらされるのか常に監視の目を向けていなければならないリスクがさらにが高まっている。

進化を指を咥えて見ているのか、それとも進化の当事者になるか。新たな挑戦は容易なことではないが、少なくとも当事者になる覚悟を持てなければ、この先のビジネスは非常に厳しくなることだけは間違いないだろう。

迷える経営者にとって、福音となる1冊となるか、それとも終わりを告げる1冊となるか。
読んで自身のビジネスモデルと照らし合わせてみるのも、それだけで価値があるのではないか、そんな想いを抱いた1冊である。

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「noma(ノーマ)はなぜ世界一のレストランなのか?」ドキュメンタリー映画「ノーマ東京」を観て。

デンマークのコペンハーゲンにあり、世界のベストレストラン50で2010年から堂々3年連続一位に輝いたレストラン「noma(ノーマ)」。ちなみに、nomaとはデンマーク語で「nordisk」(北欧の)と「mad」(料理)を組み合わせた造語のようだ。

そのノーマが本店を休店して、スタッフ総出で東京のマンダリンホテル東京に期間限定出店した際のドキュメンタリー映画「ノーマ東京〜世界一のレストランが日本にやってきた」を観た。

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何が凄いかと言って、一にも二にも、天才シェフと謳われるオーナーシェフ、レネ・レゼビのこだわり。
時間がないからとか、食材の調達が難しいからとか、そんな言い訳(わかっているのでスタッフも言い訳をしないが)は一切通用しない。あるのは、ただただその料理が独創的であるかどうか。独創性という意味においては、本店での人気レシピすら一切認めない。とにかく今までに体験したことのない、初めての味を徹底的にスタッフに要求する。そのために常に追い込まれているスタッフが悩む様子は胸が痛むが、それはそれで見ごたえが(笑)

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イチロー然り、天才とは99%の努力と1%のひらめきと言われるが、まさにそれを地でいく。
ある分野でいちばんになるには、その分野でいちばん時間を費やしたかどうか、世界ナンバーワンの称号は、当たり前のことが当たり前に行われた結果であるとあらためて痛感した。

この映画の中でもっとも印象に残った言葉。
「我々が求めるのは、“完璧な完成”ではなく、“完璧な未完成”だ。(少し表現は違ったかもしれない)」
この“完璧な未完成”という言葉に、レネ・レゼビ、ノーマのすべてが凝縮されているのではないだろうか。

もうひとつ強く印象に残ったのは、ノーマのコンセプトそのものであるが、日本の出店においては、すべて日本食材を使うということ。
そのためにレネとスタッフは日本全国を実際に歩き、自身の目で確かめ、自身の下で味わって食材を決めていること。一本一本味が違う桂皮(ニッキ)の木をちぎって噛んで確かめて様子は象徴的だった。日本人シェフにはいささか失礼にあたるが、日本人以上に日本の食材にこだわっていることがなにより驚きである。
いささか余談ではあるが、築地のシーンでは案内役としてかの山本益博さん、小野次郎さんも登場する。その前に観た「築地ワンダーランド」でも両者が登場したのは偶然ではないだろう。世界にもその名が響いている証と推測する。

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築地ワンダーランドと同様、この「ノーマ東京」も外国人監督。
外国人が取ると、なぜこうも日本が魅力的にスタイリッシュに映るのか?そのあたりにまだ気づいていない地域創生のヒントもあるのではないか、そんな風にも感じた次第。

「ノーマ」を観ていない私がいうのも何であるが、とにもかくにも「ノーマ東京」、なかなか見ごたえのあるドキュメンタリー映画だった。

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役割を終えた「マクドナルド型モデル」、絶頂を迎える「ディズニー型モデル」。そして「その先」へ。

オラガ総研株式会社代表、牧野知弘氏が書いた「2040年全ビジネスモデル消滅」の読後録。

2040年全ビジネスモデル消滅

この手の、タイトルで驚かせてページを開かせようとするテクニックには正直、辟易とするところがあるが、実際に読んでみると切り口は斬新、かつよく理解できるもので、筆者の分析はなかなかだった。


内容を簡単にいえば、
「マクドナルド型ビジネスモデル」と「ディズニーランド型ビジネスモデル」の対比。
片や質より量の代表、マクドナルド。片や量より質の代表、ディズニーランド。
前者のマクドナルド型ビジネスモデルは役割を終え、後者のディズニーランド型ビジネスモデルは相変わらず隆盛を極めている、さてその理由は?というところだ。
さらに、筆者には三井不動産に勤めていたという経歴もあり、不動産的観点からの分析も本書に厚みを持たせている。


さて。マクドナルドが日本でオープンしたのが1971年、ディズニーランドが日本にオープンしたのが1983年。
牧野氏はこの1971年を起点として、四半世紀(25年)を周期とする世の中の価値観(牧野氏は価値軸と言っています)の変化に照らし合わせて、マクドナルドの低迷とディズニーランドの隆盛を検証している。


牧野氏の分析はこうだ。

1971年から1996年=「量的充足」の時代。
マクドナルドが日本に上陸して存在時代が珍しかった時代を経て、日本全国くまなくマクドナルドが気軽に手にできるようになった時代。ちょうど日本の高度成長期からブバル崩壊までと言っても良いだろう。

1996年から2021年=「質的充足」の時代。
「安さ」が当たり前となったマクドナルドが長い低迷の時代に入っていったのに対して、ディズニーランドは物を売らず夢を売るわけで、ますますその存在を確かなものにしていく。

そして次は、いよいよ2021年からの四半世紀が始まるというわけである。

それでは、2021年からの四半世紀はどんな時代になるのか?

筆者は「ディズニーの夢がいよいよ解ける時」と予測する。

特に不動産は、高度成長期に郊外へ出て行った住宅が廃墟と化し、また都会のタワーマンションも価値が暴落し、一部の資産価値を持つ物件をのぞけば、二極化が顕著になり、2040年に向かっていく。
その頃には暴落した住居の空き家率化が30%を超え、人手不足を解消するために迎え入れた外国人がその空き家に棲みつきスラム化する恐れが多分にあると。

こうなると庶民が手に入れたマクドナルド型ビジネスモデルの住宅やマンションはほとんど価値がなくなり、こうして2040年くらいまでには、すべてのビジネスモデルが崩壊するというのが著者の論調である。

実際のところ、どうだろうか。2040年まで、あと23年。このところの技術革新のスピードを考えると、ビジネスモデルという概念自体がなくなっている、それくらいの変化はあって当然なのではないだろうか。

いずれにせよ、質的充足に対応できる企業は今まで以上に数は少なくなる。新たな時代の価値観にアジャストしてビジネスを成り立たせるのは容易ではない。

すべての企業で、これまで以上のイノベーション体質への転換がなにより求められている、本書を読んで、そんな思いがより強くなった。

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