アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

がんばり病が会社を潰す。

同志社大学政策学部教授、太田肇氏が書いた「がんばると迷惑な人」を読んだ。



がんばりが価値を生む時代から、がんばることが価値を生まないばかりか、逆に価値を損ないかねない時代へ。

1990年代を大きな境目だったと太田氏は言う。

そのことに気づかなかった多くの日本企業が、いわゆる〝失われた20年〟の張本人と言っても過言ではない。

なぜがんばるとダメなのか?
その結果何が起きているのか?
私たちは、働き方をどのように変えれば良いのか?

それが本書のテーマである。

がんばり病。なかでもやっかいなのは、トップががんばり病に冒されているケースだ。
人事評価や命令系統を伝って組織の上から下へ広がっていくと太田氏は警鐘を鳴らす。

それでは、なぜがんばり病がやっかいな上に逆効果になるのかであるが、それはIT革命に負うところが大きい。IT化により単純業務が置き換えられたにもかかわらず、多くの人の働き方は昔のまま。イノベーションを生むための“考える”ことに重きを置かなければ、新たな成長は見出せない。さらに問題なのは、経営者が年配者の場合、ITがなんたるか、まったくわからないときている。
それでは、がんばれがんばれと叱咤激励するしか手がないのだろう。

皮肉な話であるが、今の時代、頑張らない方が経営はうまく行くのだ。

すでにこのことに気づいた経営者は新たな舵取りを始めているが、気づいていない経営者は社員を追い込み悪循環に陥っている。

それでは、二極化が加速する時代に個人はどうあるべきか。
筆者は想像の達人に学べという。
いわゆるクリエイターと言われる人の働き方は、がんばることが前提ではなく結果がすべてだ。

自らの仕事をクリエイティブの視点で見直してみる、なかなか難しそうだが、長い目で見ればそれがいちばんの近道かもしれない。
この先、大企業であっても雇用が保証される時代ではないのだから。、

個人も企業も、時間を切り売りする時代に。

フロンティア・マネジメント代表取締役、松岡真宏氏が書いた「時間資本主義の到来」を読んだ。



副題にあるように、自分自身の時間価値をどこまで高められるかがテーマだ。

そもそもなぜ今、時間価値が注目されるのか。

それに対して松岡氏は、2つのポイントを挙げている。

ひとつ目のポイントは、私たちを取り巻く環境変化。

特に大きいのが、いつでもどこでもネットとオールウェイズオンの状態を創り出したスマホの急速な普及だ。これによりすきま時間を有効に使うことができるようになった。

二つ目は、私たち自身の変化。

長期トレンドである高齢化と都市化が要因だそうだ。

この2点をポイントとして、本書で松岡氏は本格的な時間資本主義の到来を、さまざまな事例とともに解き明かしている。

そんな中、思わず身を乗り出しそうになったこんな話も。

それは、クリエイティブな人たちがいま、軽井沢に集まっているというもの。

アメリカのシリコンバレーのように、類は友を呼ぶではないがクリエイティブな人のそばにいることがクリエイティブなビジネスには何かと都合が良いということらしい。特に時間価値という点では移動が必要ないことも大きい。

そういえば少し前に、マイクロソフトのビル・ゲイツが密かに軽井沢に別荘を建てているという噂がネットを騒がせていた。まさか時間価値を考えてというわけでもあるまいが(笑)

いまあらためて世の中を見渡してみると、すきま時間を上手にマーケティングしてビジネスを伸ばしている企業群がある。ソーシャルゲームを展開する企業だ。

地下鉄に乗ると夢中にスマホに向かっている人たちを見かけるが、そのほとんどの人たちが短い時間を利用してスマホゲームに興じている。

松岡氏は本書でこの現象を、

「すきま時間×スマホ=時空ビジネス」

として、時間資本主義の到来を告げる象徴例として取り上げている。

モデュール発想ともいうべき短時間を活かしたビジネスが今後あらゆる分野でますます注目されることは間違いない。
それだけではなく、私たちの働き方も当然変わってくる。
今から備えておいたほうが良いだろう、それほど時間価値は重要な時代のキーワードになりそうな予感がしている。

中小企業にも使えるドラッカー理論。

差別化戦略コンサルタントの藤屋伸二氏が書いた「ドラッカーの黒字戦略」を読んだ。



藤屋伸二、通称「日本一わかりやすくドラッカーを伝える男」。

この藤尾氏、ドラッカーを大学院の修士論文に取り上げて以来、ドラッカー理論の完全攻略に取り組み、著書は200回以上、読みこんだそうだ。


ドラッカー本は中小企業には扱いにくい。
一般的にそう言われることが多いようだが、実際、私自身もそんな思いを抱いていた。

そんな中、本書で藤尾氏は、中小企業でのドラッカー理論の活用に取り組んだ。

テーマはドラッカー理論による黒字化戦略。

利益は目的ではなく結果であるとするドラッカーの考え方、その点で直接的に黒字にこだわる点が新鮮。同様のドラッカー本とは明確に一線を画している。

さてその黒字戦略の内容であるが、藤屋氏は次の4つに分けて展開している。

(1)すぐ黒字、 (2)より黒字、 (3)さらに黒字、 (4)ず~っと黒字

そして、それぞれの目指すところで、個別のポイントをていねいに解説と至れり尽くせり。

藤屋氏いわく、「経常利益率5%以下は赤字経営と思え」。

私の感覚では、5%を超える経常利益率は価格競争に巻き込まれていては実現は難しい。

藤尾氏は事業の再定義と言っているが、まさに顧客視点でのビジネスモデルそのものの再設計が問われているのだと思う。

考えてみれば、社員を幸せにするためにも、高い顧客満足を実現するためにも黒字化は必須だ。そういう意味では、ともすると理想に偏りがちなドラッカー理論に現実味を与えた、貴重な1冊と言えるかもしれない。

「ここらで本当の広告コピーの話をします」を読んで

元博報堂、現在は独立して自身の会社を構えるコピーライター、クリエイティブディレクターの小霜和也氏が書いた「ここらで広告コピーの本当の話をします。」を読んだ。



クリエイティブディレクターとして日常的に多くの若手コピーライターのコピーをチェックしている小霜氏。

さらには、自身が講師となり広告学校も運営している。

そんな立場にある小霜氏だからこそわかる、彼らが抱える問題点と、その問題を克服してコピーライターとして独り立ちするために必要な広告クリエイティブの方法論を記したのが本書だ。

あるいは、言葉を変えれば、愛情こめて若手クリエイティターのために開いたコピー講座の講義録といった感じかもしれない。

内容的には小霜氏の豊富な経験が活かされたかなり実践的なものになっている。

さて本書の講義は、5部に分かれて展開される。

第1章:そもそも広告コピーって何?
第2章:コピーを考える。
第3章:そもそも広告って何?
第4章:コピーを書く姿勢
第5章:コピーライター人生とは

以上。

内容のほとんどが、コピーライターがコピーを書く上での基本中の基本。しかし、それでありながら、意外と忘れがちなこと。

たとえば、そのうちのひとつが、
「商品の広告コピーは成立するが、カテゴリーの広告コピーは成立しない。」

A飲料水のコピーを課題に若手コピーライターに実際にコピーを書かせてみた結果、経験の少ないコピーライターがやりがちなことは、“水”というカテゴリーのコピーは書くが、“A飲料水”のコピーにはなっていないということ。

カテゴリーでコピーを書いてしまうと、見た目はそれっぽいが実は中身のないものにしかならないことが多い。ゆえに広告コピーとしては成立していないというわけだ。

コピーライターを始めたばかりの人、コピーライターを目指す人にとってはかなり耳の痛い話ではないか。

私自身の経験に置き換えてみても、常に抱えていた課題であったと、今さらながら思う。

本書で全編に渡って展開される、コピーライター小霜氏の広告クリエイティブに対する考え方。

それは、言葉を使ってモノとヒトとの新しい関係を創り、商品や企業の価値を上げるということ。

素人が陥りがちな罠でもあるが、クリエイティブとは決して、突飛なアイデアを考えるということではない。

特に現代のようなほとんどの商品がコモディティ化している時だからこそ、あくまでモノとヒトの新しい関係をクリエイトするということを忘れてはならない。

たかがコピー、されどコピー。

本書を読んで、久しぶりにコピーを書きたくなった。

やがて産廃が宝の山に。共感を呼ぶブランドはこう創る。

石坂産業株式会社、代表取締役の石坂典子氏が書いた「絶体絶命でも世界一愛される会社に変える!~2代目女性社長の号泣戦記」を読んだ。



今、大企業をはじめ、政府首脳、中南米・カリブ10カ国の大使など、見学に訪れる人が後を絶たないという産廃会社、石坂産業。その2代目社長が本書の著者、石坂典子氏である。

今でこそ、産業廃棄物処理という職業が社会的に認知されるようになったが、石坂氏が社長を実父から引き継いだ12年前は、地元ではダイオキシン騒ぎの真っ最中で「石坂は出ていけ!」のオンパレードという、まさに逆風吹き荒れる中での継承だった。

社長就任後、どん底から脱出したいという一心で取った方策についていけず、社員の4割が去ったという時期もあったらしい。

それでもめげず、今日まで努力を続けてこれたのは、ひとえに「永続企業」になるという強い想い。ぶれない心が、関わる人々の心を動かし、今では日本を代表する産廃処理の会社としてゆるぎない地位を築いたのだ。

本書を読んであらためて感心するのは、この12年に起こった出来事は、どれも社運を左右するような難題ばかり。よくもまぁ、克服できたものだ。

しかも、その難題を前にうろたえるわけではなく、また取った手段は奇をてらうわけでもなく、あくまで王道を行くものだった。以下にその取り組みをざっと紹介してみよう。

【12年間の取り組み】

・15億円の焼却炉を廃炉に。燃やさない産廃会社をめざす。
・ISO3統合を1年で取得。
・巡回指導を徹底し巡回指導報告書を12年間欠かさず。
・「新・里山資本主義」の導入。工場周辺の里山を宝の山に。
・地域の人が集まる夏祭りを主催。
・「価格評価」から「価値評価」の企業風土へ。

いかがだろうか。

その中でも石坂社長が大切にしているのが、地域との関わりかた。

「新・里山資本主義」の取り組みに見られるように、工場の敷地面積の8割を事業と関係ない環境保全やコミュニケーションスペースとして地域に開放している。しかも管理のために専任の人間を何人も抱えているという。

経営だけを考えれば、それはコストであり、利益確保のためにはまったく意味をなさないと言っても良い。しかしながら、石坂社長にとっては、それこそ経営の根幹をなすものであり、そのかかわりが、地域の共感を呼び、業界のレベルを上げ、最終的に自分たちの利益として還ってくると頑なに信じている。

儲けることを目的とした企業が多い中で、あえて儲けない道を選択した石坂氏。いや選択したという言葉は不適切かもしれない、なぜならその選択こそ、石坂氏の人生観であり、仕事観であるからだ。

石坂氏を動かすのは、強い想い。その想いが社員を動かし、顧客を動かし、やがて世の中を動かすことになる。
こんな企業なら、諸手を挙げて応援したくなる、そう考えるのは私だけだろうか。


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