アドマン(元)のブログ「広告会社~バーチャルとリアルの狭間で」

名古屋の広告会社に働いていた元アドマンのブログ。広告とインターネットに携わる男が、時代の転換期で日々感じること、気づくこと、体験したこと、また、読んだ本や見た映画の感想などを思いのままに書き綴ります。

自社が何のために存在するのか。常に問い質すことこそ、理念経営の真髄。

株式会社エフシーエス社長、藤本繁夫氏が書いた「オーナー社長のための理念経営 4つの戦略」を読んだ。



かつて、労働集約型で典型的な下請け企業だった著者自身の会社。
短納期、低価格、そしてお客様からの際限ない要求…利益が上がらない構造にあった状況から、どうしたら脱することができるか。

その課題に藤本氏が真っ正面から取り組んだ結果、わかったことは、組織内の「ダブルスタンダード」の横行。

役員や中間管理職からは、ルールをきっちり遵守しており何ら問題ない、の報告。しかし実態は、現場だけが知っている「裏ルール」の蔓延だったそうだ。
この悪しき習慣が、お客様とのトラブルを引き起こし、仕事の効率を低下させ、結果的に利益率の低下を招いていた…

どこにもある話と片付けてしまえばそれまでだ。
より監視を厳しくし裏ルールが蔓延らないようルールを徹底させる、当然ではあるが、しかしそれでは根本的な問題解決には繋がらない。

そんな状況で、藤本氏が選択した起死回生の策が、「理念経営」への転換である。

結果から言うと、社員数が減少したものの、翌年には早くも売り上げは126%UPし、会社再建に成功したという。

苦境にあり、理念経営を取りれようとする企業は少なくない。
しかしながら、大半は長続きせず、いつの間にか以前のマネジメントに戻ってしまうのが現実のようだ。

成功と失敗を分かつものは?成功に導く、本当に大切なことは?

理念経営は、取り組むだけで答えがすぐ出るものではない。事業は人が行うものだから、業務を遂行する人に、理念が浸透する(させる)ことが何より重要なのである。

本書で藤本氏は、理念経営を成功に導くための4つの戦略を紹介している。

中でも中核的な戦略が、「経営計画書」の作成と、徹底的な社員間での共有。

経営計画書は、ビジョンから具体的な行動計画など、経営に必要な事項を網羅した、いわばバイブルとも言える存在だ。
中でも藤本氏が強調するのが、ビジョンにおける社会貢献の視点。

大切なのは、自分たちの会社が何のために存在するのか。どのような世の中の課題を解決できるのか。そこを考え直すだけでも、結果は違ってくる。業務に追われているととかく忘れがちなことであるが、それだからこそ社会性を持った理念の共有が重要になるのだ。

個人的に本書で心残りだったのは、経営計画書の記述の掘り下げ。もう少し具体的に記して欲しかったが、そのあたりは自作に期待したい。

理念経営。
そんなきれいごとで会社の業績は回復するのか?

その答えはイエスでもありノーでもあるだろう。
最終的には、経営者の価値観、それに尽きると思う。愚直に継続的に社員の幸せを心底求めれば、顧客が見放さない。

企業の価値とは、顧客が認めてはじめて価値となるのだから。

お客様をつなぎ社内をつなぐ。大西改革の要はスタイリスト。

三越伊勢丹ホールディングス社長、大西洋氏が書いた『三越伊勢丹ブランド力の神髄 創造と破壊はすべて「現場」から始まる』を読んだ。



大西社長の尊敬に値するところ、それは何より企業の顔として積極的にマスコミなど表舞台に登場しているところだろう。

なにはともあれ三越伊勢丹という老舗の企業体に変革をもたらすという、強い意志の表れであると評価したい。

さて三越伊勢丹にいちばん欠けているもの、それは取りも直さず「現場力」と大西社長はいう。

ご承知のところかと思うが、以前より伊勢丹では、「売場」ではなく「買場」と位置づけ、現場主義を貫いてきた。それが三越との統合を経て、いつの間にか顧客視点を忘れ、大西氏が社長に就任した時には売上は悲惨な状況に陥っていた。そこで指名されたのが大西氏であり、与えられた命題はずばり「改革」である。

本書によれば、大西氏の強みは現場での体験が圧倒的に豊富なこと。

その現場体験を活かし、大西氏が改革の中心に据えたのが、スタイリスト(販売員)の待遇改善だ。

これまでの百貨店でいうと、脚光を浴びるのは得てしてバイヤーで、スタイリストの存在は冷遇されていたような気がしないでもない。

しかしながら顧客との接点はスタイリストが担うわけで、大西氏の考え方は至極当然な考え方といってもいいだろう。

こうしたスタイリストの待遇改善を手始めに、大西改革はすべて現場最優先。
そしてその改革は、未来すら的確に見据えている気がする。

そんな中で唯一大西氏の迷いを感じたのは、ネットについて語った箇所。

すでに大きな売上は作っているものの、いまだリアルな店頭とのカニバリを気にしているところは、少し時代錯誤ではないか、ネットの位置づけはもっと先に行っているのに、と残念に思った次第。

GMSが大きな転換点を迎えている今、百貨店の存在は再び脚光を浴びつつあると感じている。
しかしそれがかつての場所貸し的な意識に支えられるものであれば、再び凋落の道を歩むのは必然だ。

どこまで自己を否定し百貨店そのものの存在意義から見直すことができるか・・・

本書を読む限り大西改革のスタートは快調のようだ。あとは今後どこまで創造と破壊が進められるかであるが、いずれにせよ、大西改革の今後に期待したい。

あなたの会社の「らしさ」は明確か。

株式会社フリーセル社長、木村裕紀氏が書いた「ブランドファースト」を読んだ。



フリーセルは、Webマーケティングを皮切りに現在は企業ブランディングに注力する会社。本書はその根幹となる考え方、自社が実践する手法についてまとめられた、木村氏はじめての著書となる。

本書で展開されるメッセージはシンプルだ。
ブランドとは企業の「らしさ」である、と木村氏。

「らしさ」とは独自性であり、他社との違いだ。「らしさ」を見直して、適切なコーポレートメッセージに変えて、社員間で共有、さらに顧客、見込み客へ発信していく。その結果として、売上、利益が付いてくるというのが木村氏の主張。

ともすると売上、利益を求めるあまり、売ることがすべてに優先され、売上のためなら手段を選ばず、企業のらしさなど一切関係なしという企業も時折見受ける。

そこまで行かないとしても、広告とホームページがまったく別に企業に見えてしまうケースなどは、まさに「らしさ」が明確になっておらず、表現がぶれてしまう、ブランディングをなおざりにした悪い見本と木村氏は指摘する。

本書において私が注目したのは、ブランディングの考え方をボウリングのピンに見立ててわかりやすく解説している点。

センターピンがCI(コーポレートアイデンティティ)=らしさ。このピンの後ろにインナーブランディングとアウターブランディングの2本のピンが並ぶ。そしてその後ろに…

「らしさ」が明確になれば企業ブランディングは雪崩式に円滑に進む。あくまで出発点は「らしさ」というわけだ。

中小企業にとっては厳しい状況が続く昨今であり、目の前の売上が優先されることは間違いないが、肝心なのは、あくまで売上はお客様次第だということ。

かのコトラーの名言に『今日の売上と引き換えに明日の顧客を失うことがよくある』というものがあるが、今こそ「らしさ」を見直して地に足のついた持続的成長を考えてみる、そんなタイミングなのではないだろうか。

めざすのは、月曜の朝がいちばん楽しい会社。

株式会社イマジナ社長関野吉記氏の書いた「想いをブランディングする経営」を読んだ。

イマジナは、企業ブランディングを通して「月曜の朝がいちばん楽しい会社」を作っていこうと考えている会社だ。



私自身の長い会社勤めの経験で、はたして月曜日が楽しいと思えることがあっただろうか。
振り返ってみても、おそらく数えるほどしかないだろう。

月曜日の朝がいちばん楽しい会社。本書には企業ブランディングに取り組む、10社の中小企業の具体的な事例が登場する。そのいずれもが、確かにこんな会社なら働く社員も月曜日の朝が楽しくなるのだろうな、と思わせる何かを持っている。

それが何であるか。著者の関野氏によれば、それはずばり「経営者の想い」である。

想いとは、自社の事業により今より幸せな世の中にしたいとか、一緒に働く社員を幸せにしたいとか、さまざまあるが、共通するのは、自分自身が主語でないことだ。

一流を目指すなら、まず一流の考え方を持たなければならない。もちろん人も企業もである。私自身、あらためて学ばせてもらった。

さて本書の著者である関野氏が代表を務める株式会社イマジナは、先の「月曜日の朝がいちばん楽しい会社」をキャッチフレーズに、企業価値を高めるさまざまなサービスを提供している。そして、その中心となるのが、もう一人の代表、奥山由実子氏が推進する、企業カルチャーを中心に会社の想いをブランディングする「カルチャーブランディングプロジェクト」だ。

カルチャーブランディングとは耳慣れない言葉であるが、企業文化こそ「月曜日の朝がいちばん楽しい会社」をつくるための重要なエッセンスであり、企業文化を社内外に浸透させることで、差別化されたブランド認知を生み出し、エンゲージメントを創造し、企業価値を高める。そんな企業ブランディング構築のアプローチ方法だ。

ひと言にブランディングと言うが、その実態、取り組み方は千差万別で永遠に答えのないものだ。しかもその成果は目に見えるものではない。

それだけに「月曜の朝がいちばん楽しい会社」は考え方として非常にわかりやすのではないだろうか。

重要なのは、こうありたいと強く想うことだ。そしてその想いを愚直に形にしていくこと。短期に答えを求めるのではなく長期に渡って根気よく取り組むことも大切である。

株式会社イマジナが提唱する、想いをブランディングする経営。本書自体がイマジナのブランディングの重要な役割を果たしており、本書を読んで私自身もぜひ直接話を聞いてみたいと思った次第。

企業ブランディングに取り組むも、なかなか上手くいかない。そんな悩みを抱えているのであれば、ぜひ一読をおすすめしたい。

挫折も未来の成功につながる点。大切なのは「信じること」

ジョンソンエンドジョンソン、シェル石油など、数々の外資系企業の日本法人で社長を務めた新将命氏が書いた「信じる力」を読んだ。



つい先日も『「生きた戦略」の条件』が出版され読んだばかり。

その記憶も冷めやらずのホットな状況で読んだ新刊は、経営者として自ら体験した、夢を現実に変える成功法則を書いたものだ。

テーマはタイトルそのままに「信じる力」。

新氏は32歳の時に「45歳までに社長になる」という目標を立てたそうだ。そして実際に45歳でジョンソンエンドジョンソンの社長になった。

本書はその経験をもとに、自分の目標の達成に「信じる力」がどのように働いたか、それを振り返って考えたことがきっかけになっているそうだ。

新氏は、目標達成のために次の5つの信じる力が必要であると言っている。

すなわち
・自分を信じる力
・人を信じる力
・運を信じる力
・夢を信じる力
・未来を信じる力

中でも私が心を打たれたのが、未来を信じる力について書いた第5章。「どん底にいるとき、未来を信じることができるか?」

この章に登場するのは、スティーブ・ジョブズががんを患った後、スタンフォード大学の卒業式で行われたスピーチ。

大学を中退し、カリグラフィの講座に熱中したことがその後のマッキントッシュの開発につながった経験から、今自分がやっていることは必ず将来につながると語った伝説のスピーチである。

ジョブズはこう語る。

「だから大切なことは、いま自分がしていること、つまり一つの点が、なんらかの形で将来の点とつながっていくのだと、信じることです。それが勘だろうが、運命だろうが、人生だろうが、カルマだろうがなんでもかまわない、なにかを信じるべきなのです」

人は追い詰められた時、ほとんどの人は自身の不運さを嘆くだろう。けれどその苦しい時こそ将来につながっているのだ。だからこそ、投げやりになるのではなく自分を信じて、たとえ小さくてもできることをコツコツ積み上げること。

新氏が大切にし実践し結果につなげてきた「信じる力」。先が見えにくい世の中だからこそ、スキルを磨く前に、いま一度見直しておきたい基本能力なのかもしれない。

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